七話「禁忌解除の薬草」
私たちの周りにはもう敵であるくのいちは立っていなかった。だが、ユキさんだけは私の近くで立っていた。
「あの……その……」
彼女は困ったような悲しそうな複雑な表情をしていた。私はそんな彼女の頭に軽く手を乗せる。
「あまり気にするな」
「それならよかった……です」
彼女は私の体に雪崩るように倒れてきた。私の胸に彼女の柔らかく温かいモノが触れている。そんな彼女を優しく包むように両手で抱きしめる。
「私の妹にそういう変なことしないでもらえます?異性の体同士を擦り付けて感じさせるなんて」
近くでランバースさんの手当をしていたであろうユリさんがこちらを怪しげな視線で見ながら言う。
「ただのハグですよ、ユリさん」
「そうですか。へぇ」
「ゆりりんは常に妹思いだからね。まっ、さっきのユキさんに当てたあなたの言葉を耳にして今の行動にあるから彼女の言うことも一理あるんだけどね?」
桃姫さんにそう言われて何だか恥ずかしくなってくる。しかし彼女はそのまま話を進めて行く。
「そんなことは置いといて……そこのランバースさんは大丈夫なのかしら?」
「ダメね」
「即答かよ……ってかダメって何だよ?」
「許してもないあなたが私にツッコミ?……まぁ、いいわ。許してあげるわ。んで、彼女はこのままだと私の手当では無理だわ。ユキだってそんな感じだし」
私が支えている彼女を指で指し示しながら彼女は続けて言う。
「そこであるモノを手に入れないと行けないの。昔、お母さんから聞いた噂でしか聞いたことのない秘宝薬草最高位……禁忌解除の薬草……”アクセリア”。別名”三途の川を抗う薬草”とも言われているわ」
「なるほど。つまり死と生の境に行けば見つかるのか。よし、吉田、お前が行け。リーダー命令だ」
「誰が行くか、ボケルファ!!」
「ボケルファ……プフ……ボケルファ……」と桃姫さんはツボってしまったようだ。
「大丈夫よ。そんなことしなくても。ランバースさんはその在り処を見つけていたみたいだわ。これがその地図とその薬草の絵らしいわ。彼女の懐に入ってたらしいわ」
「ほう。他に何か入ってるか見ておかなくては……」
急に力強い手で私の手は捻られる。涙が出てしまいそうになるほどに。
「何をなさってるんですか?私も女だからそんなことされるのは命を殺すほど嫌いなんですが……」
「あっ……ランバースさんが女だったの忘れてた」
「もしユキが今のあなたを見てたら”最低男”と連呼していたでしょうにねぇ」
いや、ユキさんが言わなくてもみんなの思い伝わっておりますから。その冷やかな三人の視線だけで十分に味わってますから、と思いながら彼女が見せてくれた地図と絵を持つ。
「彼女とユキのことは任せました。必ずこの身を替えてでも取りに行って来ます」
そう言って地図を見てから足を一歩踏み出そうとした時に後から声がかかる。
「お前、一人でそんなことさせるとでも?言っただろ?一時的に力を貸してやるって」とアルファ。
「えぇ、男二人に任すのも何なので私も同行しますけどね」と桃姫さん。
私は後ろを振り返って言う。
「御二方、ありがとうございます。お願いします」
「あぁ」
「えぇ」
こうして私たちはその薬草巡りの旅が始まるのだった。