六話「最低男さん」
目の前にいる彼女は自分の顔に巻かれてる布を防ぐかのように手に持っているクサイを構えている。
「お前にも……不幸分けてやるよ」
私はそのまま剣を交差する二つのクサイの上から彼女の顔の布を目掛けて上に振るう。彼女の巻かれた布は破かれた。浅く振ったので顔に傷はない。ただし問題は一つあった。
「お前は……ユキさんか?」
そこにいたのは元ダークホースのパーティーでメイドとしてユリさんの妹として私と共に魔王を打ち破ったユキさんだった。
「はぁ?私、あなたのこと知らないですし、私の顔を見たからには絶対に殺すか殺されるかしないとダメですからね?あっ、私、そこにいるランバースよりも優しくないので自害なんてことはしませんよ。ぷぷっ」
ユキさんが知らなくても私は知っている。君がくのいちではなく、ダメなメイドを略して”ダメイド”であることを。もし戻せるのならこの手で彼女を我に目覚めさせたい。
「お頭!!」
「おや、お前さんの相手は俺ですぜぇ?」
周りにいたくのいちは彼女の心配をしているようだが、それを遮るアルファ。それは桃姫さんのところも同じようだ。そんなことはどうでもいい。目の前にある彼女を傷つけないためにどうすればいいのだろうか。
「そうだ。ひとまずこれはいらない」
私は手に持っていた黄金の剣を置く。これを持ってると少なからず彼女を傷つけてしまいそうだ。
「貴様!!私を愚弄する気か?武器を持たないからって私は容赦しないぞ?」
「お好きにどうぞ。だが、一つ聞いてもいいかな?」
「何だ?」
私は息を大きく吸って吐いてから言う。
「その服の裏って下着履いてますか?」
「この外道が!!男として最低よ、お頭お気に……」
近くにいたくのいちが私にそう言いながらクサイを構えていたようだった。しかしそのクサイを使って彼女たちの峰打ちを狙って行動を止める者がいた。その者は私を守るかのように背を向いてクサイを構えながら言う。
「相変わらずですね、最低男さん」
「おかえり、ダメイドのユキさん」
私は地面に落とした黄金の剣を持って彼女と背中合わせをして残りのくのいちを襲う。また一人また一人と地面に倒れ伏せていった。