五話「再新結成、アルファプラス」
私たちは里の方へ行くと、そこはどことなく静かな場所だった。
「どうやら、相手さんたち、引いてくれたようですね」
目の前を行くランバースさんにそう言われて緊張していた体をほぐす。あまりにも静かだと平和だと思ってしまうが、壁に貼られた例の金色の紙切れにクサイを刺されている光景を見ているとそう思えなくなってしまう。
「これから、どうします?」とピンク色の羽をふわりふわりと動かして聞く桜姫さん。
「吉田健三。お前はダークホースのリーダーだ。だが、お前には今の仲間はいない。ただお前は英雄であることに変わりはない。誰が忘れようと俺らのパーティーはそれを心と頭の中に残してある。そこで提案なんだが、俺のパーティーに一時的に加入してくれないか?抜ける時は俺に声をかければよい。ただ一つ条件としてお前がここに来た三人の仲間が共にいることを前提にだ」
私はアルファの言葉を聞き、もちろん手を組みたいと思った。しかし一つだけ気になったことを聞いてみる。
「その提案にありがたく乗りたい。ただお前たちにとってのメリットは何だ?」
「メリット?そんなもん、一つしかない。お前らのパーティーが復活し終えてこの世界を元に戻せるならそれこそお前らよりもたくましい英雄だろう?ふはははは」
はいはい、聞いた私がアホでした、と心の中で思いながら彼に手を差し伸べる。
「一時的によろしく」
「ようこそ、アルファ……いや、名を変えて”アルファプラス”へ。あっ、ランバースさんも……ランバースさん!?」
アルファが言ったその先には苦しむように地面にもがき、両手には血を浸したランバースさんの姿があった。
「こんなことになるのは分かってらっしゃるのに、あんな禁忌を犯すとは……」とユリさんは言う。
その瞬間、後ろから複数人の足音がすると思えば声が掛かる。
「ふっ。無様な奴だな。そのまま野垂れ死んでこいつらの見せ物になってしまえばいいのに」
あの黒いくのいち集団だ。その前にあの女がたち、私たちを嘲笑うかのように言う。私は腰にあった黄金の剣を手に持つ。それを見た彼女は私を笑いながら言う。
「不幸を呼んだお前が彼女を苦しめたようなものだな」
私は黄金の剣の鞘を持つ手に力を込める。
「人が苦しんでるのを言葉にして顔を隠してまで嘲笑う外道なお前とは違う。だからこそその顔を見せて貰う償いをしてもらうから覚悟しろよ?」
「戯けが」
私は地面を蹴って彼女の方へ走る。
「やれやれですわね、アルファ。彼に助け舟をしてあげましょ」と桜姫さん。
「あぁ。ユリ、彼女の手当てを頼む」
「了解」
アルファと桜姫さんは私を襲い込む黒いくのいちの連中を防いで私と彼女の道を開ける。私は全力で彼女に走る。そんな彼女の顔が今、どんな顔を知らない。だが、この剣でその顔を示すことが出来るのなら私は彼女にこの剣を振るう。それだけの思いが私の足を動かすスピードを速くさせるのだった。