八話「赤に抗う黒」
他の黒い布の人たちも解いてあげた。私が彼女たちを救って少しばかり戦況は変わったようだ。それでも私たちに迫ってくる赤い奴らなのは変わらない。目の前にいる敵たちをひたすら斬る。ただそれだけの行為である。
「貴様、黒い方になぜ手を貸す」
目の前にいる敵がそう聞いてくる。
「君らと最初に接触したからか?それともかわいい女でもいたからか?」
そんなもん、一つしかない。
「仲間がいたからだ!!」
私はそう吐いてその男を斬った。赤の布に染みる赤い血。赤が赤に重なる時、それはより黒くなる。その血飛沫と共に広がる倒れゆく人たち。
そんな中、馬に乗った赤い布の人が駆けてきた。手に持っているのはやはりクサイである。それを指の隙間に八本付けては馬が駆ける度に放り投げる。
「赤影の騎忍団の団長トンカチが攻めてきたぞー!!」
周りからそんな声がした。
私は黄金の剣を太陽の光で煌めかせた。そして一歩踏み出す。
「赤の野郎ども、俺はお前らの頭を殺した。恨め、呪え、そして抗え!!」
大声で言う。馬は私の方へ全速力で走ってくる。飛んできたクサイを全て剣で弾く。
「俺は死んでねぇよ?」
トンカチは私に向かってそう聞いてくる。こいつさえ倒してしまえば。私は馬に駆け寄り、いいタイミングを見計らって右腕を首に巻き付けた形を取りつつ、馬の背中を狙うかのように飛ぶ。そして馬が接近したところで右腕を右に大きく振るう。トンカチと馬の首はその場で目を見開いたまま下に落ちた。だが、馬の体は止まることもなく、歩みを止めないまま血飛沫を散らかしながら走り回っては次第に倒れ込んだ。ちなみに私は進行してくる馬の体から右側に逸れていたので無事だった。
「皆の者、よく聞けー!!この戦は終わったんだ。赤でも黒でもねぇ。この俺の勝ちだ。武器を置け!!」
私の声に反応したかのように金属音が鳴る。アルファたちも武器を落としてるようだ。
「犠牲はもういらねぇ。お前らはこの里を守れる忍びの集団となれ。里の影の軍団となれ。そしてその一時的リーダーとしてカナヅチさん、あんたに任す。これが嫌な者が赤でいるなら、目の前のトンカチをミンチにする。逆に黒ならカナヅチを俺が殺す」
「こちらは異議ねぇよ、旦那」とカナヅチさんは言う。
「汚ねぇよ、やり方が。だが、里の人を守ることがメインだった黒と里の秩序を守る我々が組むならこの里は安全だろう。吉田と言ったな。俺らがその首を跳ねるまで死ぬなよ?」
赤い布を巻いた一人の男に言われる。
「あぁ、待っている」
その男に対して私はそう言い放つと、アルファに向って聞く。
「これでいいよな?アルファ」
「あぁ、勝手なことしてくれたがな。これで一件落着なら文句の『も』の字もねぇな」
こうして赤と黒との争いは幕を下ろしたのだ。それぞれの思いを丸くまとまった二つの殻は一つの実を守る種のような存在としてこの二つは里の影になる未来を祈って。