七話「眠り姫にお薬を」
全力で走った私はついに彼女たちの縛っていた柱に着く。
「……ったく。遅いわよ、最低男さん。ほら、どいて。姉ちゃん、やるよ」
「うん。ごめんね、吉田さん。少し離れてね。あっ……ちゃんと手に入れたんだぁ。あんがとぅ」
私は彼女たちに言われて離れる。相変わらずランバースさんは寝ているようだ。彼女たちのそばにいたはずの刀を持った人たちはどこかに行ったのだろうか?
彼女たちは「ふん!!」と言うなり、彼女たちに縛り上げていた紐は解けてしまった。
「えっ?」
「何、ぼぉーっとしてるのよ。それだから……あぁ、分かった。寝ている私たちに体をいじりたかったのね、残念でしたね。最低男さん」
「ちげーわ!!」
「ユキの相手しなくていいからその薬草下さい。ランバースさんに飲ませるので」
ユリさんに言われて例の薬草を渡す。彼女は近くにあった滝水で軽くそれを洗うと、薬草を自分の持ってたちっちゃいザルに入れ、それに合う棒で塗り潰している。そのザルにまた滝水を入れてそのまま彼女の口に入れようとしているが、彼女の口は開かない。
「開きなさいよ、ランバースさん。じゃなきゃ、腹パンするわよ?」と言いながらユリさんは彼女の腹を一回力強く殴った。
「いや、してますよ!!」
殴られた彼女は咳き込んで口が開く。その拍子にユリさんはそのザルを口に突っ込んで飲ませる。しかし彼女の口から一筋もそこから垂れる水はなかった。
「よし、飲み終えましたね。眠り姫」
「ここは天国……いや、地獄だわ」と目を覚ましたランバースさんは言う。
「いいえ、眠り姫。ここはまだその狭間です」
「そうか。なら、私はまだやり残したことがあるから戻ってきたのね。というわけでランバース、只今をもって現世に復活よ!!」
どうやら、ランバースさんは復活したようだ。後ろに何かの気配を感じた。
「寝ている間……どうもありがとうございました」
私が振り返るとそこにはもう大きな刀を持って横たわる男のおでこにクサイが立っていた。いや、刺さっていた。彼女を見て分かった。彼女が投げたのだ。
「さて、反撃開始よ!!」
「おう!!」
ランバースさんの言葉に反応して返事をした。未だに減らない赤い布を巻いた人たち。それに立ち向かう黒い布たち。そして私達もまた争うのだ。