四話「この剣がたとえ折れたとしても」
私は黄金の剣を持ってアルセイドに向かって大きく振るう。
「邪魔だ」
「あら、私たちの大事な預かり物を汚さないでくれるかしら?」
目の前に桃姫さんの翼が見えた。どうやら、彼女の翼でアルセイドの攻撃を防いでいるようだ。
「どりゃー!!」
私はアルセイドの胸を目掛けて剣を刺す。しかし彼のくちばしで止められてしまう。
「ふっふっふっ。この剣を折ってもいいか?」
アルセイドは噛みながらからかうかのような声で私に聞いてくる。
「この剣がたとえ折れても俺は仲間たちのためにお前をこの身で倒す。それにこの場にある刃は一つじゃねえよ。そうだろ、アルファ。黒い人たち」
私の後ろから剣を持ったアルファを中心にクサイを抱えた黒い布を巻いた人たちはアルセイドを襲う。
「ぐっ」
剣とクサイがアルセイドの体に刺さった。その拍子に落ちた黄金の剣を持っていた私の体はよろめいた。そして柔らかい物に体が倒れ込んだ。
「はわわわわー!!」
その声に驚き、前を見ると赤面しながら静かな涙を一筋こぼしている桃姫さんがいた。彼女の胸に私は支えられたのだ。
「ふかこ……ごめんなさい」
不可抗力、と言おうと思ったが私たちの元パーティーであるダークホースの時に似たようなことがあったのを思い出して心細くなってしまった。彼女は私の言葉を聞くなり、そっぽを向いている。ひとまず彼女はそのままにしておこう。
「本当にいいのか、アルセイド」
「あぁ、俺の役目は終わりだ。持ってけ」
アルセイドはアルファに自分のくちばしに挟んだ伝説の花を彼に渡そうとしていた。だが、私は不意に気になったことを聞く。
「アルセイドはこれからどうする気だ?」
「役目を終えた者はただ死ぬのを待つ。役目はもうないからお前らがこの洞窟を出ればこの洞窟と共に死ぬことになるだろう」
下を見ながら物思いにふけながらアルセイドは言う。そんなアルセイドに言う。
「役目を上書きすれば死なねぇんだろ?なら、何かあれば俺たちを助けに来い。それが今の役目だ」
それを聞いたアルセイドは笑い声を出していた。そして私に言う。
「それが出来るのならそうしたいねぇ。どうなるかはお前たちが洞窟に出てからだろうよ。さぁ、行け。ここで話してる今でも苦しんでるだろうよ。それを求めている奴らは」
「おう。役目という名の約束、忘れるなよ。アルセイド」
私はそう言って洞窟の入り口へ戻る。アルファたちも後ろを付いてくる。この伝説の薬草を彼女たちに届けるために。