一話「塞がれた瘡蓋《かさぶた》」
黄金の剣を構えて相対する。両手に持ち構える二つのクサイ。それだけではなく、投げてくる輩もいる。どんなに投げたとしてもクサイの数は減ることは無い。腰にあるあのポーチの中からクサイは量産してくるのだろうか。それを確かめるほどの余裕は私にはなかった。それは周りにいる仲間たちにも同じことだった。ただ私に出来ることは自分の身を自分で守ることぐらいだった。
「そなたども、そこをどけっ」
背後から声がかかる。クサイに何かの札が付いているのが私たちより前の方に投げられるのが分かった。その声に従い、私たちは後ろを下がった。
「退散!!」
前の方から大きな声が聞こえると同時に周りには煙が阻む。
「ちっ、煙幕か。皆の者、敵を逃がすな」
「無理です、隊長。これじゃあ、何もかも見れません」
「ちっ、今回もまたしてもやられたな」
煙は次第に落ち着いて来た。そして周りは晴れたが、今度は黒い布に巻かれた輩に囲まれる。それも先程の女とは違い、男のようだ。
「おいおい、黒い布の仲間を救うつもりがこれじゃあ敵じゃないか」とアルファ。
「仲間になった覚えなどない」と黒い布を身につけた男が言う。
「ふーん、ユキさんやランバースさんが死んでもいいのかな?」
「何を言う。お前ら、反乱者によって殺害されたという情報が届いている。お前達のそばに二人がいないことがその証明だ」
「二人がいないから俺らが殺した……だって?笑わせるなよ。俺はこの世界もお前らみたいな勝手に決めつけてしまうような輩が後になって俺に懇願してくるのが今になって嫌になってんだよ。大切な仲間を傷つけるぐらいなら最初からいらねえよ!!」
私の言い放ったセリフが洞窟の中で鳴り響く。
「おいおい、大きな声出すなよ。頭がキーンとしただろ?」と言いながらアルファは頭を横にして片足あげて飛び跳ねている。
「ふむ。そこまで言うならいいだろう。だが、お前たちをこのまま見逃す気はない。だからお前らの後を付いていく。何かあればその時は分かるよなぁ?」
クサイを構えている男は我々にそう声を上げて言う。彼らの目力はハンパない。今にも殺されそうだ。
「なら、俺たちのここでの目的は何か知っているか?」
「例の薬を取る気だろう?」
「なら、良い。もし俺たちの後ろを襲ってもしてみろ?俺の横にいる吉田建造物がドミノ崩しするぞ?」
「おい、アルファ!!俺は建物か何かか?」
彼は私を見て小声で「それほど偉大な勇者だったということで……なっ?」と言ってくる。
「けっ。いいだろう。黒の忍びと恐れる我ら”黒影の豹忍軍”と手を組んでやる。忍び込む豹にせいぜい噛まれるなよ?」
目の前でその男とアルファが手を取り合って握手をする。どうやら、さらにめんどくさいことに巻き込まれていきそうだ。