主人公死す
「死の贈呈」彼女(自称オーク)がそう唱えると辺り一面に黒い霧が立ち込め、更に彼女周辺の霧が骸骨の形を型取りこちらに向かって歩き出した
骸骨はその邪悪な顔にぴったりの大振りの鎌を両手に抱えている。
「あれはヤバイ!」ただでさえHPが全快でない状況魔法を上手く使いこなせない俺があれをくらえばー
「おい神柱、召喚主である俺を守れ!」
咄嗟に召喚した神柱に助けを求める。
「断る」
だが、少し高い位置から見下ろす(浮遊する)神柱は無情にも断った。どうやら俺が使った召喚魔法は召喚したものに命令できるものではないらしい。
「積んだ。」
まさかここでリタイアだとはな、案外難しいものだな異世界、いやは厨二病初心者の俺ができるようなものじゃなかった…そういうことだろう。
潔く龍坂は己の死を悟った。いや悟らざるおえなかった。
今の自分は銃口を額に向けられた無力な一般人に等しい。超人的な回避率を誇る某漫画の女子高校生ならまだしも龍坂の運動神経は普通より少しいい程度。
龍坂は諦め、走馬灯のようにこの短い異世界冒険を振り返っていると、唐突に背中のバッグの紐がちぎれ地面に落ちた。
バサリと紙の束が落ちる音に目を向ける。
「あっ」
落ちた拍子にバッグから零れ出た黒歴史ノートに手を伸ばそうとーー足がピクリとも動かないことに気づく。
「…道理で、妙に速度の遅い魔法だと思ったら相手の行動を阻害してからじわじわと精神的に追い詰めて殺す黒魔法か、俺の最後にしては地味な魔法だな」
だが遅いと言っても骸骨との距離はもう一メートルもない…
「趣味、悪いわ…」その言葉を最後に俺の胴と脚は骸骨の持っていた鎌によって切断された。
終わりじゃありません