デコピンッ
〔ーメッセージー)
リズミカルな曲が脳に流れる
〔「終わった?」〕
「ッ!…石幢か、」
通信系の魔法により上空にいる石幢の声が隣にいるような声量で聞こえた。
「終わったが、その分だと奴が俺を襲って来ると知っていた口ぶりだな、」
〔「違えって僕がぼうっとしてたらあいつが突っ走ってさー」〕
「?。まぁいい取り敢えず降りてきたらどうだ。見たところ『魔王化』が解けているという事は翼ではなく魔法で飛んでいるのだろう、長時間飛ぶと魔力がカラになるぞ。」
この位置からだと辛うじて魔王の時のド派手な服装ではなく、黒い学生服のような物になっていることと、翼がないことしか確認出来ないが、魔王化が解けた事には違いない。
問題は、何故魔王化を解き魔力量の少ない石幢が魔法で飛んでいることだが…
風を切る音と共に石幢が、モリギーの穴の所に降り立つ
ゴギッ(骨が折れる音)
「おッと!」
バランスが悪い場所に降り立ち石幢はその上で足踏みをする
「ギャア!肩ガァァァ」
モリギーの丁度両肩の位置に着地した石幢の驚き声とモリギーの悲鳴が木霊する。
「オッヒョーウ、オッヒョーウ…酷い酷すぎる、」
奇妙な呼吸音は変わらず、俺の願いをなんでも聞くという条件の代わりに肩を再生させたモリギーは壁に身を寄せて震えていた。
「なんかごめんな〜」
今日は機嫌が良いのかニタニタしながら謝っている。
「…ホンットやめて下さいよね、…ハア…ハア」
「だってさディアル」
「貴方のことですよ!」
「………。」
本当に今日はどうしたのだろうか、今までに見たことのないほどの笑顔だ。
「なあ石幢、」
「どうした?」
屈託のない表情で振り返る
「…仮面」
「カメン、何だそれ?」
その瞬間俺は、モリギーを掴みマリを片手に持ち直し一気に石幢から距離を取る。
「オイオイ、どうしたんだよディアル」
突然の俺の奇行に奴は戸惑いを装いこちらに近づこうとする。
「それ以上近づくな、偽物」
「偽物?どういうことだ」
「とぼけても無駄だ、お前がそうでないことは付き合いの長い俺が一番わかっている。」
言うのが早いか抱き抱えたモリギーを離し俺はソロモンを開く
「ええとディアルさん、私にはヘラド様は本物に見えるのですがー」
モリギーは不思議そうな顔をして俺と石幢の両方を見る。
邪神ではないが、ステータスで確認した所ハイエルフというマリに迫る観察眼を持った種族だがこの違和感に気づくことはできなかったようだ。
俺自身の『ステータス』魔法ですら、ヘラド何とか石幢と出たのだ。気づけたのが奇跡といっても過言ではない。
「ラ○ダー」「えっ」
「石幢は、仮面ラ○ダーが大好きなんだ。」
そう、たった一つのこの情報を掴んでいたことが
「なっ!なんですとー」
「故に、仮面と言ったらラ○ダーと返えさないのはヘラドいや石幢ではない(それよりコイツ仮面ラ○ダー知っているのか)」
最近、メールのやり取りも減り半年に一回程度しか会わないことが多かったが、石幢が某朝のヒーローもの番組、仮面ラ○ダーの春、夏、冬全ての映画に行っていることは映画館の真隣に住んでいることもあって確認済みなのである。
扇子やら変身アイテムらを特典として貰ったのか毎回リュックに下げてあるので違う映画を観たという線はない。
俺の家が映画館の真隣にあることは引っ越し先を知らない石幢にとって盲点だっただろう。
「う〜るさいよ〜」
過去の思い出に浸っていると、背中をポカポカと叩かれる。
「起きたのか、マリ」
「うーむ?ここどこですか〜」
まだ寝ていろと、口を挟もうとしたが一度起きてから30分ぐらいしか経ってないのに、目をパチクリとして、完全に目が覚めたようである。
「ここは、石ッ!ソロモン『ファイヤウォール』」
諦めて、現状を大まかに伝えようとした所、濃密な魔力が石幢に集中するのを感じとった。
ボッ
炎の壁が剣を振りかぶった石幢(偽)の足元から発生する。
「ちょっ何やってんですか、あの人が何をしたんですか!」
あの人、顔は見えたはずだが石幢に見えなかったのか?
…つまり、マリならアイツが何なのか分かるかもしれないな
「マリ、このモリギーとか言うハイエルフには見抜けなかったがお前ならどうだ。アイツはお前の目にどう写る?」
「どうって…」
マリはファイヤウォールの余波で発生した熱風に目を細め中心にいる石幢(偽)を見つめる。
「…剣の中の人?」
マリのツノの先が淡く光だす。
「…(始まったか、)」
「デコピン?」
光は強さを上げ
「ディアルさん、ヘラドさんのおでこにデコピンしてください。それで元に戻るそうです。」
ピコッンと、音を立てた。
「そうか、『幻影魔法』対象石幢」
キャラ被りに対応したのか、考えるそぶりをとるとツノが発光する仕様になった。おそらく能力が一部変化したか、ある程度は制御可能なやつなのだろう。
「うわっ何だこの煙、纏わりついて取れねぇ!」
だが問題は、この能力をどこまで信用するかである。
マリは戻ると言った、ならば石幢は今操られていることになる。しかしデコピンほどで解けるインフィニティー感覚では"安い"と言わざるおえない魔法、又はスキルかそれに準ずるものをかけても仕方ないだけではないだろうか?
キーは、『剣の中の人』にあるのだろうがそれがどういった意味を放つのか見当がつかない。
「少し揺れるぞ」「はいっしがみついたので大丈夫です。」
「『全能力アップ』」
まぁ取り敢えず…少し、強めにするか
ドッン
立っていた地面がエグれ音速に迫る速さで、慣性の法則(摩擦なし)をまともに受けた力を石幢のデコにピンする。
バッキーン
HP5842/6000
「痛ってええええ!」
今回は、石幢豆知識
某朝のヒーローもの番組
仮面ラ○ダーが大好き。特に剣を使うキャラが好き
バイトをしたことがある
成績は常に上位だが、出席率が良くない
体育は好き、けれど体育祭は嫌い
龍坂とはインフィニティーをプレイした時期が違うため、ゲーム内で会ったことはない
魔法、スキル無しの純粋な剣術のみで戦う大会込みイベントで優勝経験があり、その時の優勝賞品がダンジョンコアであった。
その後その当時ハマっていた小説の街並みを再現したダンジョンを創る