スター小国
スター小国の高度1500m
朝焼けに照らされ下を見ながら呆然としているユーリサファイアを龍坂は苦い顔をしながら襟を掴みぶら下げていた。
「失敗するとは思っていたがまさかこんな事態になるとはな。念のためソロモンをいつでも起動できるようにしておいてよかった。」
「成功するとは思っていなかったのかよ…」
現在、龍坂達は飛翔魔法により上空で静止していた。
「それよりお前それどうすんの?」
魔王化の副産物として翼の生えた石幢は龍坂の飛翔魔法を必要とせず、翼で飛んでいる。
「適当な所で降ろす。」
「じゃあこの戦乙女は、」
上を見上げて指をさした先に、
戦乙女の名は伊達じゃないのか灰色の翼を生やしたゴミが俺より少し高くを飛んでいた。その顔は黒い靄に包まれながらもわかるドヤ顔である。
「殺す。」
感情を消した顔で言う。
「ガガッザダャ(フッ雑魚が)」
「誰が雑魚だと?堕天使もどき」
「ダァグバラシャ(誰が堕天使だ!私は気高き戦乙女だ!)」
「戦乙女(笑笑)。」
「ジャダラシャイ!(絶対に殺してやる!)」
「受けてたとう!」
戦乙女から距離を取りソロモンを片手に戦闘態勢を整える。そして槍を召喚し今まさにこちらをいざ殺さんとする戦乙女に向け最大火力の魔法を放たんとー
「やめんか!お前たち」
風のような速さで間に入った石幢が鬼のような形相で叫ぶ
「何故止めるのだ石幢!」
「セギドウザマナゼ!」
「うるせえ、…龍坂落ち着けどうせ今日中には帰れるんだ。後、戦乙女!聖水を下賜してやるからそれ使って元に戻れさっさからぎゃあぎゃあうるさいわっ!」
「…分かった。」「ワダリシッタ」
先程の熱は最早冷め龍坂はソロモンを懐にしまい、戦乙女は石幢から受け取った聖水を大事そうに飲み、一瞬の輝きに包まれた後黒い靄が晴れ召喚時の姿に戻っていた。
「禊完了。」
「あわわわ、あれって神殿の人達が崇めている御神体の一つじゃないの。いいのあんな簡単に使ってしまって!」
何やら状況を飲み込めずただ呆然としていたこの少女の目に聖水が映ったようだ。自国のもの恐らく神官の職に就く者達が崇める御神体とやらを全て飲み干したことがよほど驚きらしい。
「少しは落ち着いたか?少女よ」
怯えさせては元も子もないので女性は苦手だか精一杯の作り笑顔で優しく語りかける。
「えっ?あ、はいっすいません私魔法が使えない者で今まで空を飛んだことがなかったから物凄く驚いてしまいました。」
「そうですか、それは驚かしてしまって申し訳ない」
「いえっ私がついてきたのが悪いんです!」
「寛大なお心遣い、感謝します。」
「敬語…⁉︎もしかして私が王女だと知ってるんですか‼︎」
「えっ王女」「マジかよ」「マジですか」
三人が同時に発する。
「…気づいてなかったんですのね。」
「いやっ俺は気づいていたぞ!いやーさすがは王女様だ。」
顔を赤くして声を震わせている王女を石幢が慌ててフォローする。
「そうです主様は気づいておられました。私は気づいておりませんでしたが、気になさいませ!」
「うん?ゴミ屑が石幢以外に敬語だと…あぁ確か」
インフィ二ティーの世界では神の血を色濃く受け継ぐ王女は戦乙女が本来使えるべき存在であるという設定があった。その設定に引っ張られているのか若干戦乙女の口調がおかしい。
「本当に本当にそうですの?」
少し泣いているのだろうか、淡い期待を募らせ顔を上げた王女の瞳は濡れている。
「…まあ怪しいとは思っていた。」
「やっぱり!」
途端に弾けるような笑顔になる王女
「…おい石幢どうするんだ。これはチュートリアルというやつではないか?(小声)」
「俺っに聞かれてもな〜まっ取りあえず降りようぜ。」
「そうだな。(いざとなったら催眠魔法を使おう)」
スター小国
「『ソロモンよ、ウィンドボム』」
群がる魔物達に向けインフィ二ティーの中位全体魔法を放った。
ギャガッガッ!グキャッギャ ジジャシャ‼︎ バァラッラッ ダラジャッジャ?
「廃城に魔物が住み着いたのか?」
数千を超える魔物が見渡す限り町の中に蠢いている。
「うわーやべ。」「汚らしい。」
「ここわっ!」
石幢達も敵と認識したのか正体不明の魔物どもが襲いかかる。
グガー!
「おっと『大地断絶』」
魔剣で軽くあしらい続けざまにスキルを使う。
「『聖槍召喚』はーあっ!」
戦乙女は、俺を貫こうとした時のランスを召喚し、魔物に応戦する
「『スラッシュ』チッ数が多いんだよ」
「『ソロモンフレイム』『ソロモンフレイムカッター』」
顔はゴブリン胴体はワイバーンに似た魔物達は四方八方から現れ飛翔魔法を使おうにも隙がない。
「くらいやがれっ『烈火斬鬼』」
ズバズバズババー
グギャャャ!
「魔王スキルの烈火斬鬼か、懐かしな。」
「懐かしがってんじゃねーよ。」
「魔王スキルかー俺も使ってみるか?」
「おうおう使え使え、いっちょどデカイのぶっ放せ。」
「では遠慮なく、いや容赦なく使わせてもらおう。」
パタッ
ソロモンをしまい両手を広げ
「バッお前それは」
「『終焉の幕開け』」
半径100メートル全ての生命のHPを強制的に0にする最高位の魔王スキル。これを発動した時点で絶対の死が訪れる…はずだった。
現れたのはどこか見覚えのある魔方陣ドラゴンの時よりも複雑な模様をしており黄金に輝いていた。
「こんな時に!失敗かよ」
「…ソロモンをしまったのがまずかったか?」
「あぁもうっなんか出てくるぞ」
魔物の相手で手一杯な石幢はもうよしてくれと言う。
シュオンッ
やがて輝きは鳴りを潜め、砂煙に包まれた魔方陣の中央に人らしき影がぼんやりと写る、
ギャッギャッ
召喚された何かを敵だと思ったのか魔物が一匹襲いかかった
「不快だ、課金アイテム『ゴールドラッシュ』」
グガッ
突如魔物が四散する
「なんだ?」
「…貴様まさか、」
ソロモン使用時の魔法成功率100%