厨二病初心者の我は現代にいます。1
世界は時に無情である。
「お前〜なっなんなんヂュふか?」
今俺の前には見た目体重100キロオーバー身長200㎝はあろうデブがいる。
そのデブは、俺を舐めまわすように上から下へと視線を動かした後、粘っこい声で問いかけてきた。
(知らねえよ‼︎)
デブの問いかけに心の中で絶叫する。俺はただいたいけな少女が暴漢に襲われていたから助けようと、思わず飛び出しただけ。
シャドーボクシングと通信教育で鍛えた黄金の右腕を振るい、計画ではこのデブを瞬殺して少女に「ありがとう」(ニコッ)って感じで終わると思っていた。
なのにこのデブ…
「人間じゃないって反則だろ貴様‼︎」
そう僕の前にいるのはただの体重100キロオーバー身長200㎝のデブではなく――豚の姿で二足歩行の異形の怪物。俗にいうオークであった。
「あれあの人、肌の色おかしくね?」
突然のオーク?に混乱している龍坂をよそに石幢は壁の端から2人と1匹?を観察していた。
勉強だけは引きこもりにもかかわらず人並み以上にできる石幢は先程から様子を見て警察に連絡するべきか無視して帰るできか悩んでいたが肥満男の顔が豚なのを見てその考えが吹き飛んだ。
この時、警察に連絡すれば最悪の事態にはならなかったかもしれないだが今の彼にはできなかった。何故なら彼はあるゲームの廃人トッププレイヤー で、他人の不幸に微塵も興味がない異常者なのだから。
「まったく〜ぷるぷるばっかり震えて気持ち悪いデュフネ〜デュフはこれから急いでこの子を殺さないといけないから忙しいんデュフヨネ〜ミンチにさらたくなかったら早くそこに寝っ転がって大人しくミンチにされるのデュフ」
「「えっ」」
オーク?の目の前にいる龍坂は当然のことながらオーク?の言葉にはオーク?達からは見えない位置にいるはずの石幢も戸惑いを隠せなかった。
「脅しか、オークよ」
龍坂の下手な厨二病口調は健在だが明らかに先程までの覇気はない無理に強がって威勢を張っているようにしか見えなかった。
「それにオークよその発言だと我はどのみちミンチではないか‼︎」
この時龍坂の頭の中では目の前の男はオーク似のデブではなく本物のオークだと結論を出していた。
理由はなんか近づいたら牙が突き出ていた、血のニヨイがする息遣いのあいまにブヒッて聞こえるなど様々あるが黒歴史ノートに
「少女がデブに襲われていたらそのデブは100%オークである」と書かれていたからであろう。多分。
だがいきなりこのような状況に陥ってはさすがの龍坂も当初の目的など完全に忘れて極度の混乱状態パニックである。
どうすればどうすればどうすればいい‼︎このままではミンチにされてしまうぞ!
「どっどうすれば…ハッ」
だが厨二病の勉強資料としてアニメや漫画を読み漁っり黒歴史ノートの中身を暗記している龍坂はここで閃く。
「いや、落ち着いて考えれば」目の前にはオークそしてそれに襲われるいたいけな少女…
はっ
混乱状態に陥った龍坂に都合の良いとある可能性が舞い降りたそれはたった今、龍坂(主人公)は異世界とこの世との境目に迷い混んでしまいチート能力を手に入れ異世界無双とかしちゃったりするんじゃないかと‼︎
その時背中のバッグの中身が震えたような気がして頭の中に黒歴史ノートに書いてあるある魔法 が浮かんだ。
「くくくっならばオークよっ我が覇道の礎となり今ここで朽ち果てるがいい‼︎くらえ神の涙 」
"俺が通常魔法を放つような感覚で唱えた"
…うん?通常、魔法を放つ感覚…
胸の中で妙な引っ掛かりを覚えたが、何もかも全ては遅すぎたー
口下手な龍坂は、初対面の人や慣れない人と話すとき一人称が稀に変わる。