剣の魔王
「『魔王覚醒』」
バッシューウ
黒い靄に一瞬視界が遮られる。
〔魔王序列4位 『剣の魔王』ヘラド・セラフ のトリガーが全解除されました。〕
「…剣の魔王か、」
「ナッ!ナンダガオゴッタ‼︎」
足元まで迫った靄に戸惑っているな
「オイオマエ、ナニォシダ!」
「我は何も、ただ」
「魔剣解放『ギルー
靄の中心が妖しく光輝く
「ナッ!」
「貴様は魔王を本気にさせただけだ。」
「『ギルッシャグマ』」
ドドドドドッ
靄を断ち切り、蒼く全てを飲みほさんとばかりの炎がこちらに迫る。
「『盾』」
「ギャァアァ!」
「何だコイツ、よっわ」
黒焦げになりもはや面影すら残さないゴブリンキングを石幢は退屈げに見下げる。
「ないわー魔王覚醒までして鎧とか目とかめちゃくちゃカッコよくなったのに霧払っただけで死亡とかないわー。」
「鎧はともかく夜間に瞳の色が変わったと言っても見えんぞ。」
「えぇ〜異世界冒険、初見せ場だったのによ〜」
「お前が楽しんでどうする、明日は元の世界に帰れるまで転移魔法を試すと寝る前に言っていただろう」
「でもよ〜これ味わってみたらどうせ帰れるんだし一年ぐらいこっちで楽しんでもーよくないか?」
「まだ確実に帰れると決まったわけでもないし、フルダイブのゲームならほぼ同じ感覚が味わえるだろう。」
「そうだけどよ〜何つうかアレはリアルじゃないッて感じがするわけよ。」
「ゴネても無駄だ。縛り付けてでも転移魔法には一緒に来て貰うからな。」
「あれ?怒ってる。」
「…もう寝る。」
バタン
「ありゃ〜そういえば龍坂殺す気満々で出てきたのに何にもできてねぇどころか俺のせいで盛大に土煙被ってんじゃん。」
なんか防御魔法ぽいのは使ってたけど、持続時間が持たなかったか〜
「名残惜しいが明日ゴネたら殺されそうだし大人しくするか、」
「ああ!魔王化のせいで全く眠くねー暇だー。」
キーイ
「…うるさい。」
「あっすまん。」
バタン
「…(怖っおぇ)」
「仕方ない散歩でもするか、なんか魔王化したら剣の呪い?も聞こえなくなったしな。今めっちゃスッキリしてるわ〜」
ガサガサ
「あの〜」
ギロリ
石幢の目が獲物を見つけた獣のように変わる
シュタッ
「おい女!」
「ヒッ、ハッハイッ(殺される⁉︎)」
「俺の鎧のデザインどう?」
「⁉︎」
石幢の機嫌が悪かったのはずっと剣の殺セ殺セ殺セーが頭ん中に流れていたからです。