ユーリサファイヤと魔王達 1
「はあーはあーはあー」
私ことユーリサファイヤは訳あってあのゴブリンもどきが多数存在する森の中で刃折れの剣を引きずりながら彷徨っています。自慢の金髪は自分の血とここに来るまで切ってきた魔物の血で赤く染まってしまった。
「まさかゴブリンもどきの中にキングがいるなんて、」
私は3日前に魔香水を気化させてゴブリンもどきの大群を仲間内で殺し合わせる計画を王座の間にて立て(本来は会議室で決めるのだが)少数の魔道士達とゴブリンもどきがいるスター小国に向かっていたのだか出発したのだか我々がたどり着いた時には何故かゴブリンもどき達は混乱状態になっていて群れの統率などないかのように暴れ回っていた。
「王女様これはどういうことでしょうか?」
王宮クラスの魔道士が尋ねた。
「どうもこうも私達より先に誰かが魔香水を撒いた、のかしら?」
「ですが魔香水独特の甘い香りがしません。それに奴らはどちらかというと幻術を見せられているような感じがします。」
「これほど大規模な幻術を貴方達は一瞬でも展開できまして?」
「いえ、我々の力ではどう頑張ってもこれの十分の一程度が限界でしょう。それも強力な魔道具を使用してです。」
「そう、…まあ良いわこの事は城に帰ってから研究好きの魔道士達にでも調べさせて、群れのボスを討伐するわよ。」
「ハッ。」
通常、魔物は群れを作らないより多くの獲物を見つけより強くなるためには仲間などじゃまなだけだからだ。だが稀に他の個体よりも知能が高くスキル『統率者』を持つものが現れる。そうなると非常に厄介だその個体は群れを作りボスとなる。群れは時間が経てば経つほど数を増やし続けさらに群れの魔物が手に入れた経験値の一部はボスに入り放っておけば人類では太刀打ちできないものになってしまう。
だからといってボスを倒したとしても群れの魔物が消滅するわけではないが最低でも半数は上手く獲物を仕留められず冬を越えることなく餓死する。
その為、勇者の次に強い私が今回の作戦に任命されたのだ。お父様は最後まで自分がいくと駄々をこねていらっしゃったそうですがお母様が張り手を食らわせると大人しくなって、王家に伝わる聖剣の使用許可を出して頂いた。
「しかしよろしいのですか?我々が申したかった命令はゴブリンもどきの群れを混乱させ群れとしての機能を下げることです。」
「お父様は「隙あればボスを討伐せよ」と言っていたわ。でなきゃ聖剣なんて貸してくださるわけないでしょう?」
この混乱のおかげでボスは容易に発見出来るでしょう。ならばそこ聖剣を叩き込んでそれでお終いですわ。
「いえ王様がお貸し頂いたのは単に過保護だからなのではー」
ドンッ
突如、巨大な影が頭上を越え真後ろに着地する。
「「「⁉︎」」」
「…オデノ、ムレォニコンナゴトシタノバアマエカ」
「なっ(デカすぎるこんな大きさもうゴブリンじゃない!)」
ユーリが振り返ると2メートルは越える醜悪ズラの魔物が立っていた。
「ゴロズ。」
巨大なゴブリンは根本を振り上げ真っ直ぐ私に振り下ろしてきた。
「ハアーッ!」
とっさに聖剣で防ぐも力の差がありすぎてこのままでは潰されてしまう。
「聖剣の加護の力を上回るなんてまさかこのゴブリンスキルを使っているというの‼︎」
「カゴ?スキル?ナンダゾレオデハタダナグッデルダケダ」
「くぅこのままじゃ本当にッ」
「姫様ッ『ファイヤーボム』」
「『アースランス』」「『ライトボール』」
魔道士達からの援護のおかげで一瞬ゴブリンの力が緩む。
「ハアー!『カウンタースラッシュ』」
一気に根本を押し返しそのまま胴体を切り裂く必殺を放つ
「ムダ」
パリーン
「えっ」
聖剣はゴブリンの巨体に弾かれ折れてしまった。
「嘘?」
聖剣が折れてしまったとはいえ敵の前で大きな隙を作ってしまった。それが命取りになってしまったのだろうか。
「姫様‼︎」
ドンッ
魔道士達の中で一番若い子に突き飛ばされた。
グシャ
そして突き飛ばした魔道士はゴブリンの根本をまともにくらい肉片になってしまった。
ピタッ
彼の血が頬を染めた。
「…イヤーーー‼︎」
今まで殆ど話たことなどなかったが死んだ。短い旅の途中に笑いあった仲間が死んだ。自分のせいで死んだ。怖いごめんなさい怖いごめんなさい怖いごめんなさい怖いごめんなさい怖いごめんなさい怖い怖い怖い怖いごめんなさいごめんなさー
「リューさん!」
「分かっておる!『転移』」
ユーリサファイヤは突如発生した魔法陣に吸い込まれ消えた。
「ちょっと座標固定はっ!」
「バカかッそんなもん悠長にしてたらゴブリンに姫様がやられちまうじゃろうが!」
「この老害がもし姫様がドラゴンの巣のど真ん中に転移させられてたら後でぶっ殺してやる。」
「儂を舐めんな転移ぐらい座標固定なしでも安全地帯に転移させるぐらいはできるわっ」
「ウオォォー」
「あぶっ」
「『アイスウォール』」
女性魔道士に向けゴブリンが突撃してきたが老魔道士がそれを防ぐ。
グガガ!
ここで初めて薄い氷の壁に激突したゴブリン?が苦悶の声を漏らす
「フホホホ、お主腕が鈍ったんじゃないか?しかし火属性の攻撃は全くといっていいほど効かなかったのに氷属性の低級魔法程度で足止めできるとはーオークか?」
「『ライトニング』。オークがゴブリン率いるわけないでしょうが!それと私氷属性の魔法使えないんだけど!」
「スキル『細氷の嵐』。氷属性の魔法が使えなくてもスキルで補うのが常識だろう」
氷属性の嵐がゴブリン?を襲う。
「その手があったわね。じゃあ特大のいくわよっスキル『絶対零度』」
「バカもの!『転移』×2」
シュン
二人が転移で消えるのとほぼ同時に老魔道士が放ったスキルを破ったゴブリン?を絶対零度マイナス273度が襲う。
「ゴガゴゴゴッ」
体の芯から凍りつき、生物が生息できない温度にさしものゴブリン?といえど絶命する。
「『転移♡』」 …はずだった。
凍りついたゴブリン?に桃色のローブを羽織った背の低い….恐らく少女だと思われる者が触れる。
「あら〜♡随分といい体つきしてるじゃない〜ちょっと借りようかなっ?まあ返せないだけどね〜♡」
ピタッ
「スキル『乗っ取り悪魔』」
すると少女の体はゴブリン?に吸い込まれ凍りついていた体が熱を帯び氷が溶けた。
バギッバキバキ!
パリーン
「うん♡筋肉ムキムキっで任務も無事成功させれそうね♡」
「しかし〜デビちゃんも短気よねー。逃げたホムンクルス一人のために私ほどの高位悪魔を使わせるなんて、後でたっぷり甘えちゃおっ♡デュフフフ」
一応過去編です。