魔王降臨
20**年に発売された最新型VRMMORPG『インフィ二ティー』それは従来のゲームを逸脱する圧倒的クオリティを物語っており第二の世界とも呼べる美しさとリアルに多くの人々が歓喜し爆発的な人気を誇った。
さらにこのゲームの目玉である異種族転生には翼を持つ鳥人族、悪魔族、天使族など多彩で翼を動かして飛ぶ感覚にはゲーマー達も度肝を抜いた。
最大500万人のユーザーを誇る世界最大規模のゲームであったが数多の廃人プレイヤー中でも飛び抜けて強く魔王と呼ばれる存在がいた。
インフィ二ティーには悪魔族や妖魔族など負の属性を持つ種族などもあり魔王という職業もあったのだが運営の嫌がらせと言われるまでに職業の難易度が高く魔王の職業を手に入れたものは100人も居なかった。故に魔王の職業を手に入れたものは多くの上級プレイヤーから尊敬され嫉妬され注目を浴びていた。
魔王という職業は手に入れるだけで全体のステータスが2倍になるというかなりのバランスブレイカーであったため彼らは嫉妬からくる悪質なPKに日々襲われていたが倍ほどにある魔王をパーティーごときで倒せる訳でもなく魔王になればゲーム終わりとまで言われていた。
だがある日、古参の魔王が新人プレイヤーの悪魔族にキルされた。ステータスには天と地ほどの差があり確率で殆どの攻撃が入らない状態での勝利をもたらした謎の悪魔族に他の魔王は恐怖し運営に悪質なハッカーではないかと訴えたが運営はシステム上問題なかったと取り合わなかった。
そしてその一ヶ月後最強の魔王が降臨した。
「クククッ貴様がチーターの魔王『ディアル』だな。今日こそ貴様の最強の座を貰い受ける。」
陽の光の差さない冷気を帯びた地下世界『インフィ二ティー』の最下層にある古びた城の玉座に黄金に輝く装備を身に包んだ男が高々と剣を向ける。
「……。」
「最強の座を貰い受ける?課金の魔王マエンごとき下種が無礼だぞ!」
玉座の王は答えない。答えたのは傍にいる眉をヒクつかせる悪魔族、眼鏡をかけた真面目そうな男であった。
「課金?そうかッ貴様の王は財力に乏しいらしいということかッハハハハハハ!」
「廃人風情が何をッ⁉︎」
眼鏡悪魔が玉座から降りようとした所を王は片手で伏せる
「我が名は序列3位『暴殺者』ディアル」
「随分と短気じゃないかディアル、まあいい金の使い方を知らない貧乏人がゲームで少し強くなったから 王 気取りとは、ククッ最強の座のついでに財力の力を教えてやろう」
「序列4位『圧砕』マエン」
「「魔王戦開始」」
「降してやろう『詠唱短縮』『奈落』」
玉座が崩れ無数の腕が亡者の叫びと共にディアルに襲い掛かる
「『砕氷となれアイスブレイク』」
それをディアルは魔法で凍らせ踏みつけ、そのままマエンの後ろを取る。
「上位プレイヤーのHPを一撃で削り切る高位魔法『奈落』本来であれば長い詠唱を必要とするが課金アイテムで瞬時に発動させたか、」
「初手は挨拶がわりだぞ!『詠唱短縮』『ブラックホール』」
マエンは振り向きざまに魔法をくり出すが、
「死は等しく訪れる『ゴットイーター』」
マエンが放った極小のブラックホールをディアルは召喚魔法の高位霊獣をぶつけて相殺した。
「クッならば『幸運バフ』『ギガントー
「遅いっ『神王斬』」
「ガハッ⁉︎」
マエンが詠唱するよりも早くディアルが距離を詰め剣術スキルを放った。
インフィ二ティーではレベル制でありながらスキルは熟練度で上がるため魔法職であっても筋力が低いと言う弱点さえ除けば経験を積むことで高威力の技を繰り出す剣士になれるという自由制がある、だが、上位の武器で一番軽いナイフでさえかなりの筋力値を必要とするため魔法職の一般プレイヤーはまず鍛えない。鍛えても強い武器を装備出来なければ意味がないからである。それは魔王のステータス2倍を加えても例外ではなく大した武器は装備出来ず良くて中位の小刀クラスであろう。
その為、マエンは魔導師クラスであるディアルが剣を使えると予想出来ず腰にかけた剣は飾りだと思いその結果クリティカルダメージが補足される心臓を頭ごと両断されてしまった。
「…ハア…ハア…まさか貴様が剣術スキルを磨いていたとはな、驚いたぞ!だが魔法職の剣術スキルなど低威力が常識よ僅かにスタンさせる程度ではッ役にも立たないー」
〔マエンのHPがゼロになりました。魔王戦争の掟により魔王の座を剥奪します。〕
「…なんだとバカなッ!聖騎士クラスでもない貴様の一撃で我が死ぬものか!」
「普通は、そうなのだろう。が、ここは俺の城だ。聖騎士クラスでなくてもこれさえ有れば俺は限定の最強の剣士になれる。」
そう言うとディアルはマエンに刺さった剣を引き抜いた。
「それはッ創世記武具‼︎何故貴様ごとき新参者がそれを!一体どこデッ」
ピキピキパッリーン
「…時間切れだ。」
〔序列4位『圧砕の魔王』マエンの死亡により序列5位『剣の魔王』シセキ様の序列が上がります。又、勝者であるディアル様には元魔王マエン様の領土が新たに支配圏となりました。〕
「魔王様、おめでとうございます。」
「…ああ。」
「魔王様?もしやご気分が優れないのですか?」
「いやそんなことはない。それより玉座の修復、並びに新たに領土となった領域の管理を急いで行わなければならない。リアルでの時間は大丈夫かカルラ。」
「その事なのですが魔王様、今日は午後から大規模なメンテナンスがあります。その為全プレイヤーはログアウトすることになります故、本日は休養をとるべきではないでしょうか?」
「午後までは残り数分かー、よしならばメンテ明けまで我は落ちるぞ。」
「ハッ」
壊れた玉座に座る訳にもいかずログアウトするならと、ディアルは普段使わない寝室へと足を運んだ。
「ふう」
寝室に着いたディアルはそのままベットへ腰を下ろした。
「最強の魔王まであと少しか、しかしマエンのやつノコノコと馬鹿正直に呼び出されてくれるとは、魔王として情けない。」
今回、序列が下である魔王マエンが攻めて来たのはディアルがのちに戦うことになる序列が上の魔王に使うための課金アイテムを無償で手に入れるためにわざと焚きつけたのである。
「手に入ったのは呪い系のデバフと詠唱短縮が20個か、欲を言うなら自動回復バフが欲しかったがこればかりは買うしかないか。」
来たるべき、邪神戦に備えるためにもできるだけ出費は抑えたかったが仕方ないか、いや
「あっそう言えば経験値を受け取ってなかった。」
レベルが上がれば課金アイテムに頼る機会も減り出費を思ったより抑えられるかもしれない。そうと決まれば
「魔王戦で獲得した経験値を受け取る」
〔魔王戦で獲得した経験値を譲渡します。〕
さてこれでいくら上がるか
ピピッ〔レベルが急激に増加しますご注意下さい〕
んっ?どういうことだ自分より低いレベルのものを倒してそこまでレベルが上がると思んがバクか?
〔時刻は午後0時メンテナンスの時刻となりました。プレイヤーの皆さんは速やかにログアウトして下さい。〕
運営に問い合わせようとしてメニュー画面を開いた所を次のアナウンスで指を止める。
もうそんな時間か、大幅なレベルアップによる説明はいずれあちら側からあるであろうし俺もログアウトして続きは明日にでも考えるか。
ー大規模なメンテなど久しぶりだし夕方ぐらいまでは掛かるだろう。では久しぶりに街にでも出かけるか。
こっちをプロローグにしたほうがいい様な気がした。