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NIGHT NEON(ナイトネオン)  作者: THE黒
9/15

EPISODE:8[コントラスト・コンタクト]

夜の暗雲へと続く「光の柱」がか細くなり消えかかる頃、与月たちは柱の元である倉庫にたどり着いた。マドカが身につけていた霊視鏡からも反応している。


「2つの霊力反応の確認できました、ネオン君のも含めて…」

「ここか、とりあえず「何か」が起きたのだけは明白だな。」


廃倉庫に入ろうとドアノブに手に取ろうとした時、透明な薄い膜に覆われていることに気がつく。その膜が結械装置によるバリアであると瞬時に悟ったヨヅクはドアを勢い良く開けた…。正直に言ってこの時ヨヅクは最悪の事態を想像してしまった…しかし夜ノ村与月の眼に写ったものは中心部からの大きな衝撃によって巻散った砂埃と、倉庫の壁にできた大きな凹み…そして


「おい、こりゃあ一体…」


黒い鎧を右腕に装着して仁王立ちしている少年幽霊と、右半身が吹き飛んだ牛の霊媒骨格が立ち往生している構図であった―――。


「はぁ…はぁ…」


立ちつくしてしまっていたネオンだったが、すぐにその場に座り込んだ。と同時に牛の霊媒骨格は再び元の装弾ボム状態に変換され、変身していたゴズ本人の姿が露わになった。彼自身にも相当のダメージが残っているらしく露わになった彼からは険しい表情が見てとれた。


「クソッマジかよ、骨格スーツが…」


霊媒骨格が大破された事を悔しむゴズ。息切れが治まったネオンはようやく後ろにいるヨヅクに気がついた。


「ヨ、ヨヅク…さん…ッ」

「ネオン、…もしかしてお前が骨格それで?」

「え? …え、ええ。」


ネオンが先程の巨大な霊媒骨格を破壊したことにいくつかの疑問を抱いたヨヅクだったが、それ以上に自分達が開発していた黒い霊媒骨格の威力を見て驚いた。ただ今すべき事を悟ったヨヅクは表情を変えずにゴズに近づく。


「まぁお前については色々謎めいてはいるが…その前に優先すべき事案がある…久しぶりだな…ゴズ…」

「ああそうか、そうだな・・お前はそっち側だったよな夜ノ村与月…」

「質問に答えろ、濁した返答は認めないからな。」


~~~


数十分の尋問はネオンたちからしてみると意外に早く感じた。エヴァーダークの20年間の戦いの真実とクオンの死について問い詰めていた。


「成程。つまりアストロンベイに現れた悪の組織は架空の存在で、今までの戦いは…黒の「シックスシリーズ」の戦闘データを収集するための実験計画の「偽りの英雄譚ヒロイズム・プラン」の一部だったと…」

「ああそうだ…俺達亡霊隊員が怪人役を演じていたのさ、劣化版骨格を使ってな…」


ゴズの言う劣化版骨格が内蔵された装弾を手にしていたヨヅクはそれに視線を移した。


(嘘…にしては納得できる節が多々あるな…あの日以降に悪の組織が出現している。)


半信半疑であったが、とりあえず質問を続けようとするヨヅク。


「…ならば20年前から疑問に思っているが、お前ら亡霊たちは何故陰陽庁の味方につく? お前らは」

「ケッ、理由は人それぞれだがな…まぁ大体の奴が―――


肉体カラダ」目当てだな…」


ゴズのその一言に一瞬静寂に包まれヨヅクの後ろにいたマドカは顔を赤らめ、


「か、カラダ目当てって…グヘッッ!!!」


ヨヅクの投げた劣化版骨格を内蔵した装弾がマドカのおでこに目掛けて打ち込まれ、奇声を発してマドカは倒れた。その様子にネオンも少し動揺していたが、ゴズがゴソゴソと手の中に隠していることに気がついた。


肉体カラダ…ってまさか」

「ああそうだ、人間と同じ「生きた体」を与えてやるってことだよ!!」


ゴズの手に隠れていたものが直ぐに分かった。壊れかけた骨格が再び起動し始め、ボロボロの状態となった巨大な牛型霊媒骨格ヒーロー「ジャスティブル」の姿を現した。


「…ッ!! 」

「ッ危ない!」


ジャスティブルは破損していない左腕で大振りの一撃を打とうとしてた。しかし、ネオンが骨格を身に憑けた右腕でヨヅクの前に立ってゴズの攻撃を何とか防いだ。骨格同士がぶつかって生まれる衝撃によって生身の人間であるヨヅクもマドカも吹き飛びそうになるが、互いが衝撃の反動によって両者の体が弾かれた。


「ネオン君!!!」


マドカのネオンへの叫びが響くが、近づくことはできなかった。

ジャスティブルは弾かれた体を再び起こそうとしている。


(コイツ…ほぼ全壊状態だってのにまだ…!)


その時にヨヅクが見たジャスティブルの姿はヒーローというよりも一種の化け物のようだった。

ボロボロに破壊された骨格から見える霊体のゴズは悍ましい目つきでこちらを見ており、ゴズの体は少し

執念が滲んだかのように黒がかった色と化していた。


「っとうにウザってえなクソチビィ…だが」


パリンと何かが割れた音がしたかと思いきや、ネオンの右腕の骨格にヒビが発生し始めてこちらは跡形もなく崩壊してしまった。


(しまった!やはり限界か…!!)

「そっちの骨格は音を上げちまったようだなぁ!!」


ゴズは崩壊した右手の骨格の破片を見て嘲笑いと、先程攻撃しようとした左腕を見せびらかすように挙げる。

左腕は先程の衝撃に無傷で耐えられていた。


「クッ…!!」

(弱ったな、これは……完全に窮地だ!)


今までクールな装いをしていたヨヅクであったが、流石に内心焦り始めた時、


「お仲間と一緒に寝てな、ネ      スパッッッ       オ……ん………!!!」


白く、鋭いその凶刃は瞬く間にジャスティブル、いやゴズの体を縦方向で華麗に両断した。


「目標の排除…完了。」

「お、お前は…」



ゴズを斬り捨てたその凶刃の輝きは眼を覆ってしまう程に眩しく、少年の脳裏に刻まれた悪夢キズ

重く撫でた…煌く凶刃を背中の鞘に納め振り返るそれは――――



「白の「シックスシリーズ」…アシュラ、ホワイト。」



自らの悪夢を生み出した張本人かたきである純白のヒーロー、アシュラホワイトであった。



「…同時に連行対象者である夜ノ村与月を発見…迅速な指示を求む。」


インカム通しで指示を仰ぐアシュラホワイト。ネオンは眼の前の仇に怒りを覚えるもその場に立ち尽くしていた。

それはゴズと戦った時に比べるまでもなく超えた「恐怖」という感情であった。


「よう…アシュラホワイト…十数年ぶりの再会だな。」

「貴様らと語る舌など持ち合わせてはいないぞ、夜ノ村与月…」

「相も変わらず忠犬気取ってるようだな…」

「そういうお前は随分と野良犬らしくなってきたじゃないか。」

「へー言うようになったなぁ…ヒーローを三人も殺した奴が…」


そんな会話を交えていたヨヅクとアシュラホワイトにネオンはその場で未だ固まったままの状態になりながらも二人が知り合いであることに気がつく。


(三人………?)


「で、今回は「口減らし」に来たのか?!」

「ジャスティブルは幾多もの命令違反を行った…外部での霊媒骨格及び奔霊發器の無断使用、

 独断専行及び作戦放棄…そして機密情報漏洩未遂…無惨な末路はとっくのとうに決していた…」

「あっそ、じゃあソイツに聞きそびれた事を、一応お前に聞いておくよ…。」

「…」


アシュラホワイトの沈黙によって空気が鋭くなるが、ヨヅクは問いかけた。


「お前ら陰陽庁は一体何をしようとしてる?「偽りの英雄譚ヒロイズムプラン」は誰に何の証明をするための実験なんだ?」

「先程言った筈だ…語る舌は、無いと。」


アシュラホワイトがそう言うと、室内であるはずなのにヨヅクたちは突然の突風に襲われる。ヨヅクは咄嗟に閉ざしてしまった眼を開けるとジャスティブルの憑依装弾を拾い終えているのが見えた。


「はい…了解しました、直ちに撤退致します。…次に会わない事を祈っているんだな…。」


撤退命令を出されたアシュラホワイトはその場から去ろうした…その時、


「待て!! …ヨモツマチはっ、亡霊なかまたちはどうするつもりだ!!!」


漸く恐怖に怯えて動かなかった少年は問いただした…だが、


「…いずれ分かることだ、哀れな弱者しょうねんよ…。」


鋭く冷淡な答えを残して白い鎧武者は残影も無く消えていった。


~~~~~


それから一か月後、ヒーロー育成機関とされている「陰陽庁」並びにその陰陽庁によって結成されたヒーロー部隊・「英勇都衛隊」は「悪霊」たちの巣窟である廃地下街・ヨモツマチを制圧したとメディアで発表、と同時に地下街の全域改築を開始した。

やがてアストロンベイ各所には巨大なタワー状の建築物が複数建てられるようになった。陰陽庁大臣のマガツはアストロンベイ市民の圧倒的支持を受けるようになっていた。今や犯罪発生率0%と化したこの都市は巷ではこう呼称されるようになったという…「絶対平和都市」と――――


そんな中、数週間前まで地下街への出入口だった場所に夜ノ村与月は煎餅を齧り、さながら刑事ドラマのように遠くから監視していた。ちなみにマドカも霊視鏡を額に付けたまま同行していた。


「元地下街への出入口は当然封鎖…しかも骨格装備の霊体隊員ヒーロー様御一行も

スタンバイOKときた…虫一匹どころか霊一匹入れないな、さすがに。」

「他の街には他のテレビ局の局員の人で溢れ返ってました、今日なんか街頭インタビューだけで3回も足止めされちゃって…」

「お前、まさか―――」

「え? あっいや、当然足止めされたってのは呼び止められたってだけのことで番組には出てないと思いますよ…おそらく!!」


「陰陽庁」についてのマスコミの食らいつき方は異常であった。一ヵ月も経ったというのにも関わらず今現在もテレビやネットのトップメインニュースは「陰陽庁」や「英勇都衛隊」関連のものばかりなのである。当然、アストロンベイには多くのテレビ局員も大勢見かけられていた。


「…まあ良い、それで?」

「え?」

「アイツは…ネオンは未だに籠りっきりなのか?」


場所は変わり、モズク探偵事務所・物置部屋…埃まみれで段ボールの山しかない人が通るのも狭いこの部屋にネオンはいた。悲しい表情をしたネオンは体育座りでその場を離れようとはしなかった。少し震えている右手を見つめていると彼らの言葉が再生された…。


『いずれ分かることだ、哀れな弱者(しょうねん)よ…』

『テメェも兄貴同様ヒーローになんてなれねぇのさぁああ!!!!』


「…」


「まだここにいたか、ひきこもり。」


後ろから声をかけられ振り向くとそこにはドアに寄りかかるヨヅクが居た。


「ヨヅクさん…」


ヨヅクは相変わらずに煎餅を口にしており、クオンをすり抜けて物置部屋の中を物色し始める。

すると重々しくも最初にクオンは口を開けた。


「僕は兄さんを…いやエヴァーダークに憧れていたんです…いつか僕もあんな風に」

「人々に希望を与えられる存在になりたい…そう言いたいのか?」

ヒーローの背中を追ってて僕が始めに思った気持ちはまさしくそれだったと思います。」

「…」

「だけど、ゴズさんと戦って…仇であるアシュラホワイトに直接会って…初めて「命を懸ける恐怖」を感じちゃいました。

そんな恐怖に怯えてしまう僕が、今まで戦わずに傍観していた僕が兄さんみたいに戦えるのかなって…」


ネオンの言葉に一瞬動きを止めるが、再び段ボールの山をかき分けて何かを探し始める。


「…ネオン、この際だから一つ教えておく。」


「俺は「ヒーロー」という存在が嫌いだ。」

「…へ?」


予想外の一言を言われたネオンはポカンとした表情でヨヅクの後ろ姿に視線を向けた。


「まず正義感とか自分だけの使命とかそういうフワフワした動機で自分を犠牲にする奴が嫌いだ。

 損得勘定で動かずに勝算も何も欲さず考えずにボロボロになりながら讃えられるだけの奴も気は確かかと疑問に思う…」

「…あの、」

「お前の兄貴もそうだ…無視すれば良い筈の敵に真っ正面から戦って、結局自分がソイツらに利用されているとも知らないでバカ真面目に挑み続けてよぉ、更にだ…お前みたいに「僕も大きくなったらヒーローになるんだ!」みたいな戯言をほざき始める奴が現れる…ハッキリ言って仮にヒーローなんて「バカ量産機」だ…と言われても俺は反論せずに頷くな…」


「そんな…そんな言い方って…」


自分の好きなヒーローについての事についてはともかく、尊敬する兄の事を誹謗するような内容に

少し怒りを覚えるネオンであったが、ヨヅクは気にせずに作業を続ける。


「だが哀しいことに…お前は、着々と「俺の嫌いなタイプクオン」の奴に似始めている。」

「…」

「俺は予言者じゃない…お前が近い内にエヴァーダークみたいな人々の希望となるか、はたまた誰にも気づかれずに野垂れ逝くかなんか知らん。お前の生末はお前の意志と言動でどうとでもなる…だが少なくとも前者の道に行ける資格はお前には…ある。保証は確立してはいないけどな…。」

「…」

「んじゃ俺は探し物が見つかったからまた出かけるわ…。」


意味深な台詞を残してヨヅクはお目当ての「せんべいお得パック」を見つけ、その場を後にした。

ネオンはその資格が分からずに少し首を傾げるが、あることに気がついた…。


「これって…?」


それは下階へと繋がる床下扉であった。ヨヅクが段ボールの山を移動させたことによって発見することができたのだ…ネオンは1階の様子を見たことが無く、扉の先へすり抜けた。そこは何かの研究開発室らしく、あらゆる機器が所狭しと置かれている。壁や天井には過去に起きたエヴァーダークの輝かしい功績を讃えた新聞や雑誌の記事であった。そして…ネオンの眼はある場所に止まった。


「これは…」


その黒い右腕はライトスタンドによる光によって反射していた。そう、この右腕とはジャスティブルとの戦いによって壊れてしまった霊媒骨格の一部であった。どうやら一通りの修理が終わったらしくネオンはその右腕を見つめていた。すると彼の視線はある一点に集中していた。その一点を見てネオンは少し考え込む様子を見せ、そしてハッとした表情を浮かべた。


「そうだ、僕はあの時、確かに誰かを救おうとした…。」


ヨヅクがジャスティブルに襲われそうになった時、ネオンは確かに彼を守ろうと自分の右腕で防御した。結果的に言えばアシュラホワイトに救われていなければ自分達は嬲り殺されていたのかもしれない。しかし…あの時少年は考える間もなく行動した。理屈ではなく、ましてや利益ではなくただ体がそう動いたことの意味を、ネオンは初めてかみしめる事ができたのだ。


(兄さん、僕はなれるのかな? 「ヒーロー」に…誰かを護れる存在に…いや例え「ヒーロー」なんて呼ばれなくとも 僕の手で兄さんの意志を継ぎたい…いや継ごうと思う!!

今の所、戦うべき「悪の組織」も打ち砕くべき「怪人たちの野望」もハッキリ言って いないけど…だけどもし来るべき時が来た時は…僕が果たすべき事を果たしたいと思うよ。

だからクオン兄さん…その日になるまで見守ってて 僕が兄さんに追いつくその日まで…!)


今はこの世に存在しない兄に捧げるかのように決心をすると、それに反応したのか…黒い右腕の骨格の手首の部分に刻まれた「十字の傷」が非情に強く輝いていた。


Episode:8[コントラスト・コンタクト]END

次回、Episode9[触れられぬ願い]に続く。

[作者にて]

どうも作者のTHE黒です。第8話「コントラスト・コンタクト」…読んでいただき誠にありがとうございます。中々おしゃれな副題と思いませんか?…すいません、色の対比が全く異なる「白」と「黒」の戦士が初めて接触(コンタクト)する回なので名前の響き的にもいい感じに仕上げました…重ね重ね本題から脱線してしまいすんませんした(笑)。さて憎たらしいかませい…かませ牛ゴズことジャスティブルとのチュートリアルを終え、幽霊少年ネオンの物語は展開していきます。というか前回の「9月に投稿します」宣言しといてお前ギリギリやなと思ったでしょ読者の皆さん、本人も思ってます(笑)。いやぁギリギリで生きててすんません!! 俺このコーナーで謝ってばっかやな(笑)とか思いながらもこれからも本作「NIGHTNEON」は投稿させて頂きます。もし余裕があるのであれば新作も書こうと思っておりますのでお楽しみに。引き続きヒーロー系・メカ系のイラストに自信のある方、よろしければpixivでもTwitterでもご連絡をお待ちしております!それではまた近いうちに…

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