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NIGHT NEON(ナイトネオン)  作者: THE黒
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EPISODE:5[かつてない新たな英雄譚②]

―――18時30分頃。夕陽が西の地の境界へと沈みアストロンベイは夜の都市に姿を変えた。

しかし、つい先ほどまでに平和だったこの都市では今まさに「悪の組織」と同じように凶行に及ぶ、もしくは及ぼうとする者たちがいた…。


アストロンベイ南部に位置する「C区」では高層ビルが建てられており、銀行や保険会社も多く存在している。そんな「C区」の大通りにて一台のトラックが車線を無視しながら暴走していた。荷物台の中にはガスマスクをつけた男たちが銃を持って後ろで追っているパトカーに射撃を仕掛けている。


『止まれェ、止まるんだっそこのトラック!』


射撃を全て受けつつもパトカーの中にいる警察は何とか防弾ガラスで守られていたが、眼の前の暴走するトラックを追っていた。


「ならばテメェらからあしを止めな、ポリ公共ッ!!」


荷台にいた一人のガスマスクの男がグレネードランチャーに砲弾を装填した後にすぐさまパトカー目掛けて打ち込んだ。放たれた砲弾から白い煙幕があふれ出てきたと同時にパトカーだけではなくその場にいたトラックより後ろにいた人間の視界を奪った。


「うあっ煙幕で何も…」


と運転手が急いで煙幕から脱しようとするが、気づいた時にはもう遅かった。逆方向から走っていたバスお互いの車体が触れ合いパトカーの方がパトカーは大破された。その様子を見て、トラックの助手席で偉ぶった態度をとるリーダーらしき人物が窓を開けてニヤリと笑う。


「さぁ、今日から俺達新たなる悪の軍団・「スモーキィ強盗団」の悪名高き伝説の始まりだぜぇ!! 恐れるモノなんざ何もねぇ! なぜなら…」


助手席の男は窓の外から顔を出して、吸っていた葉巻を道に投げ捨てていった。


~~~


同時刻、場所は変わってアストロンベイで工業地帯となっている「Y区」…とある廃墟の一室。息が詰まりそうなほどに外からの光が遮断されているその空間は一組の男女が向き合っていた。もっとも…女性の方は椅子と一緒にテープで口や手足がグルグル巻きに拘束されている状態という余りにも異様な光景であった。


「ああ、やっと…やっとの思いでお客様一名様ご案内できました。」


男の方は眼が虚ろ…というよりも腐り果てた眼の色をしており、精神的に病んでいるのが見て取れた。


「……………ッッ!!!」


女性は先程から逃げようと体を動かしてテープを外そうとしている。だが余りにも厳重に縛られていたため上体をピクリと動かすこともできなかった。


「最近はそうそう拉致つかまえられないんですよねぇ…でもそのおかげで練習の成果を出せそうですよ…。」


男の足元には大きな布袋が置いてあり、袋の中には何かが詰め込まれていた。中身は見えなかったが群がる蠅と強い異臭によって女性は中身を想像することをやめようとしたが、袋の小さな穴から血みどろの「猫の手」が見えてしまい女性は声にならない程の恐怖をおぼえた。


「………ッッッ! ……ッッ!!」

「何か喋りたそうだけど、残念ながらそれは施術が終わってからお願いしますね…私、「パッションサービス」の芸術は「沈黙」から始まり、「苦痛」で創作し「快楽」でフィナーレを迎える…そして俗世の言う芸術の境界線を超えて貴方を私の最高の技術で更なる美へと…ああっ想像しただけで、恍・惚♡」


男は頬が紅潮しながら、涎を垂らし、息を荒くしている…明らかに常人に理解しかねる程の絶頂状態の一歩手前の様子であった。


「ああ失礼いたしました、あまりにも恍惚な妄想をしておりました…。では、そろそろ「切り」ますので…」


表情を瞬時に変えた男はそう言うと、もう一つの椅子に置いてある蓄音機の針をレコードの上に置く。ジャズ系のBGMが部屋で満たされてゆく。蓄音機が置いてある椅子の近くのゴルフバックから何かを取り出す…だが、バックから取り出された物は血肉によって光沢が鈍く輝き、それながらも刃先が1ミリも欠けてない綺麗な直線を特徴的な巨大な鋏であった。


「…ッ!ッッッッッッッッッ!!!!!」

「それでは…お切り願います、素材おきゃく様。 特に今夜はどうかごゆるりとお楽しみくださいませ、なぜなら…」


~~~


同時刻、ファーニーズアンダーシティ・下水処理施設跡地。解体工事を行わなかった為、流石に水は流れていなかったが完全には取り壊されていなかった。そこには不気味なローブを身に纏う集団がいた。周りには蝋燭がこれでもかというぐらい建てられており赤い塗料で魔法陣がそこら中に描かれている。


「我等の「ナラク」教団の奉る主は醜き現世に降誕できない…ならば我々が穢れ無き肉体を神に捧げる為ッ、これより「器合わせ」の儀を執り行う!」


百足のような入れ墨を顔に刻み込まれた初老の男性はそう叫ぶと、共鳴するかのように「ナラク」教団の信者たちは高らかに叫ぶ。叫び声は施設内で反響して鼓膜に雑音として響いてゆく。


「純潔たるその肉体を以て、初めて神の器になり代わることができる…今こそ柱となるこの若き魂を捧げん!!」


リーダーの差したその指先の方向には、大学生のグループらしき5人の男女が地面に巨大な魔法陣が描かれている場所に立たされていた。近くには包丁や拳銃を持った信者が満面の笑顔で自分達の持っているものを5人に向けている。男女は恐怖に怯えて嗚咽を漏らしている者もいた。


「神父様、お願いです!!私の娘に!」

「何故私の息子を人柱に選んだのですか?!」


どうやら怯えている大学生の内の数名は信者たちの子息らしく、魔法陣にいる子供に近づこうとするも別の信者たちによって動きを抑えられている。


「…残念ながら君たちは集会での参加が乏しい…信仰心を捧げられないのであれば別のもので代用してもらわないと…。」

「そ、そんな…」


神父と呼ばれている百足の刺青の男は魔方陣に近づき分厚い書物を手にした。


「儀式を行い、我らが主の降誕をその眼と心にとくと刻むがいい…儀式を止められる人間はいない…」


~~~


…その他、港で友好関係を築いていたグループとの全面戦争を始めた指定暴力団、外部から高速道路で侵入して迷惑行為を繰り返す凶悪暴走族…アストロンベイの各所に「悪に魅せられた者」たちは皆それぞれの意志、野望を抱き行動に移していた。だが彼らには奇妙な共通点があった。それは全員ある一時から揃って行動を始めたということ…もう一つは揃って「悪に魅せられた者」たちはこう口にした、



「もうこのアストロンベイに「ヒ ーロ 」はいないッッ!!!」と――――。


~~~


時は数分経って今現在となり、アストロンベイ・某所―――記者会見場。

そこには多数の記者たちがある男の一言一句に釘付けとなっていた。不気味な営業スマイルと左目を隠すように着けている眼帯が特徴的であり、異常に良い体格さを持つこのマガツと自称する男であった。


「…ということはマガツさん、政府が確認した所によれば四日前の月日の朝6時過ぎ…つまりあの最後の戦いの直後に、エヴァーダークは何者かに殺害されたと…そう貴方は仰ったのですね?」


記者の一人がペンで先程記入していた手帳をペンで指しながら確認をとった。マガツはそれに反応して一度頷き耳に装着しているヘッドセットマイクの位置を微調整する。


「会見会場にお越しの方々、並びにテレビの前でご視聴なさっている皆さま…今私が口から発した言葉を即時に理解出来なかった人々も大勢いらっしゃると思います。しかしこれは目を背きたい現実であると同時に逃れられない事実でもあるのです、かと言うこの私も皆さまと同様に…「エヴァーダーク」の死は最も巨大な悲劇であると感じております…。」


その時のマガツの表情は口角を下げ眉間の皺を寄せ悲しい表情を見せたが…


「分かりました、ありがとうございます。」


進行役の女性が質問を切るとマガツは元の笑顔へ戻した。コロッと変わる表情がよりマガツの笑顔に不気味さを感じたが、

相変わらずに会見は進行していった。


「続いてご質問がある方はいらっしゃらないでしょうか?」

「…はい。」


と記者の一団の中で一人だけ挙手をして、そのまま起立する。


「どうぞ…」

「『ベイノートペーパーズ』のセオと申します。マガツ大臣、先程「陰陽庁」はエヴァーダークの様なヒーローを育成又は研究する機関であると仰っていましたが…何故、彼が戦っていた20年もの間「陰陽庁」は新たなヒーローを輩出しなかったのですか?この20年間、アストロンベイを守ったのは陰陽庁あなたたちが育てた「黒の英雄」だ。 だが、仮にも今回のような事が起きた時を想定して、次なる対策を練らなかったのですか? エヴァーダークが「悪の組織」と戦っている間、陰陽庁は一体何をしていたのですか?」


この質問を投げかけた時は、他の記者の質問とは違って答える側のマガツも数秒固まったが、何事もなかったかのように笑顔で答えた。


「…確かに「陰陽庁」はこの20年間動けない状態でありました。私同様名前を公表できませんが、アストロンベイの平和を守る為とはいえエヴァーダークとして活動していた隊員にかけてしまった甚大な負担は私たちでは到底想像できるものではなかったでしょう。しかしご理解頂きたい…!!彼が悪の組織と戦っている間にも、私たちは秘密裏に新たなる希望となるヒーロー候補生を集いました。しかし過酷な訓練と手術に耐えられる者は一人もいませんでした!!」


「手術、というのは…?」

「エヴァーダークの持つ圧倒的な力量パワーは鍛錬のみで手にいれたものではございません、そもそも…」


~~~

一方同じ頃、場所は戻って「ヤオムラ探偵事務所」では…ネオンを含める3人ともその様子をテレビ越しで眼にしている。


「あの老いぼれ、有ること無いこと交えてふざけた事抜かしやがって…」

そう苛ついた様子でテレビの放送について口を開いたのはパイプ椅子に座っていた男、ヨヅクこと本名・夜ノ村与月であった。


「霊に関しては、全く一向に情報公開しませんね」

「そりゃそうだ、霊体がどうのこうのって話は、言っても混乱を招くだけだからな…」

「しかも何でこのタイミングで…陰陽庁の存在を公の場で明かしたのでしょうかね?」

「さあな…だがこの街最大の抑止力であるエヴァーダークの死が報道されたんだ、少なくともアストロンベイ中の悪人たちが近い内に動くぞ…いやっもしかしたら、今動き始めているのかもしれない。」


マドカとヨヅクがそんなやり取りを行っている間で静かに中継を見ていたネオンの視線はやや冷気を帯びており、それと同時に恐怖の感情も混ざっている複雑なものであった。


(一体、何がどうなっているんだ?)


『―――以上の事が原因で陰陽庁でのヒーロー育成計画は一向に進む余地がありませんでした…』


マガツは先程のセオの質問に答えると、再びシャッターを閉じる音とフラッシュの嵐が巻き起こる中、

彼の視線が装着しているマイクの方にむけられた。装着しているヘッドセットマイクから極小で聞き取ることはできないが音声が聞こえる。どうやら無線インカム機能も付いているらしい。


『大変失礼いたしました…たった今、部下から緊急の連絡が入りまして…』

『会見中に…ですか?』

『度々申し上げますが失礼であることは承知しております、しかし今回の会見にも関係したことですので…』


記者の一団はマガツのその意味深な発言によって激しくざわついた。しかし当の本人はそれに関せずその場にいた部下らしきスーツの男から書類を渡された後、マガツはとんでもない事を口にした。


『…えー皆様、今しがた入ってきた情報ではございますが、現在アストロンベイでは数か所にて暴動や騒動が起きております。恐らくこの会見を見たことによって刺激された者たちによる案件ではないかと…』


『騒動が起こる事は予測できたのではないのですか?!!』

『予想される被害はどのくらいなのでしょうか?!)

『今後のアストロンベイの治安について何か対応策は?』


マスコミ関係者たちのざわつきが当然一瞬にして一気に最高潮となり、質問も次々とマガツに投げられていく。そんな様子を見かねてマガツは自分の前に置いてある台に手を突いて深く息を吸った。


『静粛にお願いします、マスコミ関係者の方々…ご心配なく。「陰陽庁」はこの時の為にある準備をしておりました…先程私が申し上げた通り、エヴァーダークと同じように超常的な身体能力を与えることはほぼほぼ不可能となってしまいました。…しかし20年間の研究の末に陰陽庁われわれはもう一つの可能性を創り上げ、それをカタチにしたのデスッッッ!!!』


力が入った状態となり、握り締めた拳を挙げるとと突然マガツの後側の幕が突然開き始めた。


『…それでは、改めて今回の記者会見の3つの主要内容についてご説明させて頂きます。一つ目は、陰陽庁に関しての詳細とエヴァ―ダークの死亡…2つ目は―――――――』


幕の向こう側に配置されていたのは5つのテレビモニターであった。モニターに映っていたものはその場に居たマスコミ関係者もテレビで見ている視聴者も、そして事務所にいたネオンたちも驚愕の内容であった。


車道に遠慮なく横転しているトラックとその近くで倒れている一味、


全壊状態の鋏を握りしめながらビルの壁にめり込んでいる男、


暗い地下施設の中で天井からワイヤーのようなもので吊るされているローブの集団…


そう、映り込んでいた者たちはこのアストロンベイで凶行に奔った者たちばかりであったが、

目にした人間たちが驚いたのはその点ではなかった。殆どの見た者の視線を集めていたものにヨヅクは

動揺した様子であった。


「っ! 馬鹿な…あれは――――っっ!!! 」


『――――エヴァーダークの意志を受け継ぎ、アストロンベイの未来永劫を守るヒーローによって結成された軍隊・「英勇都衛軍えいゆうとえいぐん」最強の戦士達…彼ら、『退魔たいま戦隊・エクソファイブ』の詳細についてです。』



勇ましくも、神々しい…5人の「霊媒骨格パワードスーツ」を身に纏った戦士ヒーロー達の姿だった。



その「5人」の中にはエヴァ―ダークを殺した張本人・アシュラホワイトが含まれており、港で抗争中だった複数の暴力団員を蹴散らしている様子も映っていた。


Episode5[かつてない新たな英雄譚②]END

次回、Episode6[実験ヒーローショー]へ続く。

[作者にて]

どうも作者のTHE黒です。ナイトネオン第五話読んでいただき、誠にありがとうございます。

…すいません、まだ戦闘シーンではありませんでしたね(泣)。いや次からは本格的な戦闘が始まるわけですが、あまり一話分を長くするのは控えたいと思ったので今回は直前で切らせていただきました。ご期待した皆様あともう少しお待ちください(笑)。あっ言っておきますがヤルヤル詐欺ではないのでそこら辺はご安心を…ってもうこのやり取りが怪しくなるから止めておきます。それと私THE黒はpixivの方で「戦力GUYZ」として活動したいと思いますのでそちらではエヴァ―ダークを始め登場するヒーローたちのイラストも公開したいと思っておりますのでよろしくお願いします。それでは本格的なネオンたちと陰陽庁の戦いが始まる第6話をお楽しみに!それではまた近い内に…

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