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NIGHT NEON(ナイトネオン)  作者: THE黒
4/14

EPISODE:3[遺したもの]

―17年前だった。黒い雨雲によって満たされ月光さえも見えない夜空に舞っていた一番星ヒーローと出会ったのは―


巨大都市「アストロンベイ」…つい四日程前まで正義と悪の戦いが繰り広げられていたこの街にもようやく平和が戻った。「黒の英雄」エヴァーダークの奮闘によって、エヴァーダークの勝利によって幕を閉じた最終決戦以降の都市の治安は驚くほどに良化していた。どうやらエヴァーダークの底力を見せつけられた犯罪者、及び潜在犯たちは怖気づいてしまったらしく中には今まで警察から逃走していた強盗団が全員首を揃って自首をしたという噂も立つ程である。ただ…四日前の「最後の戦い」からエヴァーダークの姿を見る者はいなかった。勿論アストロンベイの平和には変わらないが、元々正体不明のヒーローであったため、戦いが終わった後でもエヴァーダークについて雑誌や新聞の記事が黙ることはなかった。只確かなことは真実を知らない市民たちが貴重な平和を味わっていたという事…もう一つは逆に真実を知るネオンだけはヨモツマチの廃アパート内で悲しみに打ちひしがれていた事であった。


「…兄さん、何でクオン兄さんが…」


地面に座っているネオンには哀愁のオーラが漂っており、彼の脳内は常に四日前に起きた悪夢が繰返再生されていた。肉体を持たない霊体は当然血も涙も流すことはないが、それでも悲しみや苦しみが消えるわけはない。「」は暫くの間打ち解けることはできない。兄の消失を直面してしまったネオンの抱く「心み」は何物も比較することができない多大な損傷だった。


「僕は…これからどうすればっ…」


憧れ(ヒーロー)が打ち砕かれたあの日、眼によって脳裏に刻まれていたのはゴミ山の中で串刺しとなっている兄と異様なマークを身につけた白い鎧武者の姿だった。その後ネオンは慌てて地下水路に隠れて窮地から逃れた。だが兄が謎の鎧武者の手によってこの世から消失した瞬間は直視できなくとも確認できる程にクオンが斬られた時の音は下水路の中にも響いたのだった。その後ネオンは悲しみによって胸が引き裂かれそうになりながらも無事にヨモツマチへ戻ってきたネオンであったが、今現在はクオンと共に過ごした日々の思い出をその眼前に映していた。


『クオン…どうしても俺、クオンみたいなスーパーヒーローになりたいんだ!!』


『俺みたいな…? やめとけ、お前じゃあ俺みたいにはなれない…というよりもなるべきじゃない…。』


『でっでも…!!』


『俺を手本にするなよネオン…「他人(人)」みたいになりたいなんて実現しない夢さ…お前にしかなれないモンになればいい。』


『…』


出会った当初の兄との会話を心の中で振り返るネオン。するとネオンは長時間続いていた座る体勢を解き、アパート内を巡回した。地下の食品売り場、玩具売り場、衣装服階、最後にヨモツマチ全体を見渡せる屋上広場…例え生前の記憶がなくとも、例え血がつながっているか分からなくとも彼ら兄弟が積み重ねた日々はネオンにとって大切な時間であった。


(…僕の今やるべき事って何なんだ?)


そうふと思いながらも屋上階から階段で降りてゆくと、屋上階とその下の階の中間に位置する階段の踊り場で足が止まる。ネオンたちが棲みついているこの廃デパートは屋上・地下を含め8階建てとなっており、1階から地下を除いてそれぞれの階に通ずる階段には等間隔でトイレ付きの踊り場がある。ちなみに3階と4階の間に位置する踊り場のトイレのみ男女用があり、それ以外は男性用か女性用のどちらか1つである。


(そういえば、クオンは暇な時にトイレに籠ってたな。たしか…いつもここだった。)


下の階ではなく眼の前の女子トイレへと入っていった。


「正直あんまり気が進まないんだけど…」


人が長年使っていない廃デパートである為、男子も女子もないわけであるがやはり少々罪悪感は感じてしまう。女子トイレに入ったはいいが、中の様子は他の男性用と変わらない一般的なものであった。


「とりあえず今は兄さんに関して色々知る必要があるな…」


ここに籠ってばかりではいられないと思ったネオンはトイレの中を調べ始めた。すると奥の個別トイレの方を見ている時ドアに何か紙のようなものがテープで留められていた。


「これって…」


留められていたものは2つあり、一つ目はインスタントカメラで撮ったと思われる写真であった。写真の裏側には目的地へのルート付きの手書き地図と時刻が書かれていた。2つ目の封筒の中には手紙が入っていた。その内容は明確でシンプルでこう書かれていた。


【何かあったら、道通りに行け。4回ノックを忘れるな!! モヅク】


~~~


同日17時47分、夕暮れ時のアストロンベイ・「トレックスストリート」裏通り―――。

数日前にクオンと最後に会話した場所であるこの通りをネオンは壁沿いにできた影の道を先程見つけた写真に書かれた地図を見て歩いている。


(この時間に出歩くのって久しぶりだけど…夕方になっても表の方は人多いな…でもいつもの賑やかさとは何か違うような?)


「トレックスストリート」はアストロンベイの中でも有名な夜の歓楽街とされているが、衛生面上ではあまり評価が芳しくない場所である。通る人間は店の従業員かその店の客かに限られており、少なくとも家族連れや学生がくるような場所ではない。しかし裏通りから聞こえたのは人々の賑やかな声だけではなく――


何か大きな集団が動いているような異様に揃った足音であった。


(…にしても「モヅク」って何者なんだろう? 兄さんにもこの人について言われてないしな。)


廃デパートの手紙に書かれた「モヅク」という人物の名前について思い出そうとしながらも歩むことを忘れないネオンは地図に書かれたルート通りに移動した。暫く歩くと目的地周辺に着いたネオンは周りを見渡すと、気づかない内にシャッター街に入っており眼の前のボロボロの事務所らしき建物が写真に写っている建物と一致していた。


「ここだな…。」


モヅクはそのまま2階へ続く階段を上って一本道となっている通路の奥には年季の入った古びたステンドグラス窓付きのドアに「ヤオムラ探偵事務所」の看板が釘で打ち込まれていた。…何とも頼りなさそうな雰囲気ではあるがここで立ち止まってはいられないと思ったネオンは手紙の指示通りドアを「4回」ノックした。


「はーい、少々お待ちください…。」


ドアの奥から聞こえたのは女性の声で十数秒待つとドアは開かれ、中から最初に現れたのは20代らしき女性の姿だった。間食の最中であった為か口元にチョコクリームが付いていた。だが一般的な女性と異なることは頭には暗視スコープに似た機械を着けてはいたがレンズ部分は取り外されていた。見た目からはシャッター街や歓楽街おもての方ではない感じであった。


「あ、あの…ぼ、僕はクオンの…エヴァーダークの…」

「あれ? …誰もいない?」


(………えっ?)


…どうやら眼の前にいる女性は霊体ネオンが見えないらしく、階段の方で人がいないかを確認してそのまま事務所の中へ戻りドアを閉めてしまった。


(あれ?…もしかして見えていないのかな?)


そう思ったネオンオロオロしながらも、改めて霊体を利用して中の様子を見ようドアに近づいた時だった…


バゴンッッッッッ!!!!!!


ドアと一緒に何かが自分を突き抜けて吹っ飛んできたのは。


(あれ…今のって一体…というか見間違いでないのであれば…)


一瞬のことで固まってしまっていたネオンであったが、表情が固まったまま振り向くと先程目にした女性が倒れ込んでいた。


「うぅ…何するんですか?」


(ほら、やっぱり!!!)


女性は腹の上を擦りながらもネオンのいる探偵事務所の方向に目線を変える。


マドカ、テメェ…何回言えば分かるんだ? 三回以降ノックされたら霊視鏡れいしきょうのレンズ付けろって言っただろうが…次やったら冷蔵庫の菓子押収するゾ、マジで…」


と事務所の方から現れたのは先程の女性とは正反対の無精ひげを生やした失礼ながらシャッター街や繁華街に似合った風貌の白いYシャツの男であった…。


「ん…?誰だお前は?」


そういって普通の人には見えない筈の霊体ネオンの方へ顔を向けた。これこそがネオンが生きた人間と触れ合う最初の(ファースト)出会い(コンタクト)であり、クオンを知る謎の男「夜ノヤノムラ与月ヨヅク」との出会いであった。



Episode3:[遺したもの]END

次回、Episode4:[かつてない新たな英雄譚①]へ続く。

[作者にて]

どうも、作者のTHE黒です。第3話は如何でしたでしょうか…今回はなんと3話だけではなく第四話の方も書き終わっているので本日中に投稿したいと思っています。いやぁ中々大変でございましたぁ…2話連続というのは。しかし近いうちに主人公と敵との戦いを始める予定なので、できる限り戦わない回は早く投稿したいと思っております。…何故かって? そりゃやはりヒーローを題材にしてるんですから、バトル回が盛り上がるでしょ? 無論ですが、戦闘回以外でもしっかりと見て欲しいというのが小説家としては嬉しい限りです。しかし、皆さまの期待する展開を一刻も早く見せたいとも思っております。ですから、これからの本作「ナイトネオン」を読んで頂きたいと思っておりますのでよろしくお願いします。Twitterの方でも感想・要望どんどんお聞きしたいです。それでは近いうちに…


あ、ちなみに次の回でも[ピックアップヒーロー図鑑]は無しなので、そこら辺もご了承ください…(´;ω;`)今度こそ、それでは近いうちに…

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