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NIGHT NEON(ナイトネオン)  作者: THE黒
10/15

EPISODE:9[触れられぬ願い(前編)]

数十年前、かつてファーニーズアンダーシティと呼ばれたは活気に溢れており、その地域の住民たちにとって憩いの場であり、あるいはファッションの聖地であり、はたまた家族が休日を過ごす行楽地でもあった。しかし今そこにあるのは賑やかな地下街でも幽霊が彷徨う廃地下街でもない…鋼の拳で秩序と平和を守るヒーローを育て、輩出する為の拠点である地下階含め計百六階を誇る巨大な鉄塔が築かれている。


その塔の地下3階、第十四会議室には人影が映っている。一人はステーキを頬張りながら自立させたタブレットの画面を眺める男は陰陽庁大臣・マガツであった。


「やぁ…調子はどうだい、新人ルーキー君?」


頬張っていたものを呑み込んで口元を手元のナプキンで拭うと、覗いていたタブレットを手に持ち画面をスライドさせる。

向かいには気配こそ感じるがライトに照らされた場所以外殆ど暗闇の空間であった為人の形をした影にしか見えなかった


「分かっているとは思うが、君は今の所実働部隊に所属しているわけでなくあくまで「候補生」だ…地上うえで活躍できる程のパワーをは使いこなせていない。…しかし今度こそしっかりとお勤めを果たしてくれるのであれば異動の話も聞いてあげよう。」


そう言うとタブレットを向かいの席の前に滑り込ませた。画面に映っていた映像にはネオンが破壊したジャスティスブルの霊媒骨格であった。


「君の先輩にあたる「英勇都衛軍」のおかげでこの街は犯罪発生率は0%となっている…が、残念ながらその数値の中には少数は含まれていない…完全平和を成し遂げるには完全なる「0」の証明が必要なのさ、分かるだろ?」


マガツはポケットから何かを掴み、それを前の人影に見せるように掌を開ける…そこには水色のカラーリングを施された手榴弾型変身装置「憑依装弾ヨロイボム」であった。


「名誉挽回の為に、気張ってしてきなさい…以上だ。」


マガツはニスで塗ったかのような崩さない笑顔で会議室の部屋のドアに手をかけようとしたが、直前に動きを止める。


「ああそうだ、「骨格それ」を壊した奴は君たちと同じく骨格を持っている可能性があるから、怪しい隊員がいたら報告頼むよ…例えば――――



 今は無い筈の黒の骨格スーツを所持している…とかね。」


マガツは後ろに向けて持っていた装弾ボムを指で弾くと、ライトが照らされている虚空から現れた右手がそれを見事キャッチした。マガツは満足そうにその部屋から去る時、


「では健全な結果を頼むよ…「キックエース」。」



その言葉と同時にドアは再び閉まっていった。



何かを成す為の第一歩というのは、人によって異なるものであるが代表的なものといえば「カタチから入る」というもの。目に見える事から順々に変えていこうというのがこの言葉の真意であるが、今まさにモヅク探偵事務所でネオンはその言葉を信じて動いていた。



「漆黒戦士、ブラックマン!!」

(……)


ネオンがヒーロー名とポーズを模索して2、3時間経過しているが、一向に終わる気配がなくヨヅクはパソコン作業をしながらもネオンの様子を殺気溢れた眼で見守っていた。その眼の下には色濃く隈ができていた。


「うーん、イマイチかな? 暗黒の…いや純黒の…」

「…」


ブツブツとネオンの呟きが聞こえる中、額から青筋浮かばせたヨヅクはその場で立ち上がり、ネオンの真前へ歩み寄り、


「ん? どうしたんですくぇば!!?」


ネオンの脳天に流星の如き鉄拳を見舞わされた。


「ちょ、何故に鉄拳制裁…というかなんで触れるんですか?!」

「霊媒骨格に似た特性を持つ繊維でつくられた手袋だ…霊体(おまえら)にゲンコツを喰らわせる程度ならできる。」


ヨヅクが身に着けていた黒い手袋には電子回路のようなラインが施されていおり、ラインは七色に変化しながら輝いていた。


「もう一発(コレ)を喰らいたくないのなら、黙ってそこに座ってろ。」


ちぇっと言いつつもネオンはソファに寄りかかるように座る。


「俺は子守りする為にココに居させてるわけじゃねぇ…お前は重要参考人だから狙われないようにしてるってだけだ。」

「それは、分かってますけど…」

「…なら静かになったついでに一つ質問に答えろ。何故骨格を使って戦えた?」


霊媒骨格は霊体専用のパワードスーツであり、実体に触れることを可能にする。ネオンが数日前、奇跡的に憑依した骨格は本体ではなくあくまで両腕部のみであったが、見事白星を獲った…しかしその時以来ヨヅクは疑問にもっていたらしい。


「何でって…別に誰でも操作できるわけじゃないんですか?」

「確かに骨格に憑依することは容易なことかもしれない…だが、憑依すれば戦えるというわけではない…霊体が骨格に馴染むのは基本的に時間がかかるもんだ…」


ヨヅクは冷蔵庫の中身を物色して自分の名前が書かれたマンゴープリンを手に取る。だが誰かが1度テープで開けていたらしく眉をひそめたヨヅク。


「お前ら亡霊の筋肉とも言える「霊力」は不安定なもので、骨格本来の力を引き出すにはそれなりの鍛錬が要する。肉体をを既に失っている亡霊ならば当然…」


恐る恐る蓋をあけると中には一回スプーンで掬った後がついており、裏には「ごめんなさい byノドカ」とサインペンで書かれていた。


「うーん、そうは言ってもあの時ガムシャラだったから…意識したことなんて…」

(火事場の馬鹿力…とは言うが、ゴズが憑依した骨格スーツはかなりの大型だ、一発目からあの破壊力ってのは…)


静まったヨヅクに対してネオンはふとソファから立ち上がる。


「たとえあの時、奇跡でゴズさんを倒したとしてもそれでもかまいませんよ…僕がしっかりと戦える可能性が1%でもあれば僕は僕の仲間と故郷を取り戻したい!」


決心ともいえる言葉を聞くとヨヅクはフっと立ち上がる。そのときのネオンの眼は真剣そのものであったが…


「…そうか。一つ、忠告してやる。」


再び自分の席に戻り、軽い口調で言った。


「ヨモツマチの奴等を助ける事は一旦忘れろ、仲間として奴らに関わろうとするのもだ。」

「…………え?」


先程自分が固めた決意を叩き崩すかのよに冷たい一言をネオンは理解できなかった。


「な、何でですか?」

「…籠っているお前は知らないかもだが、最近陰陽庁で本格的に偵察部隊がうろついている…。

 骨格も手足にしか憑依できず、ましてや戦闘経験や技術もないお前が今行っても兄貴の二の舞になるだけだ。」


ヨヅクのそんな言葉に対して、ネオンは言い返すことができなかった。事実、あの時自分の敵役である筈のアシュラホワイトに救われていなければ今頃こうしてこの世に居留めることはなかったのだ。その場面はネオンは今でも映像となって鮮明に記憶されている。


「もう一つ、理由がある…ゴズみたいな願望を抱いているのは地下街の奴らの中に他にいるって事だ。」

「なっ、そんな事ッ…!!」

「…お前もゴズが最期に言ったことを覚えているだろ? 他にも肉体目当ての奴らがいるって…」


明確に記憶に刻まれているせいか、心が張り裂けそうになってしまう現実に耐え切れなくなってしまうネオン。



「…ッッッ!!!!」

「今自分の置かれてる状況をいい加減把握しろ…下手にド派手なヒーローごっこしようとしてんじゃねー…って」


マンゴープリンを食べ終わり、ソファの方へ顔を向けるもそこに少年幽霊の姿は消えていた。即座にヨヅクは自席のデスクに置いてある黒電話の受話器を取り、ダイヤルを回した。


「…ベンケイ、未熟者バカが出かけた。 連れ戻しに行ってこい。」。


受話器を置き、深呼吸をした男の表情は鬼のような形相となっておりコメカミがピクピクと躍動している。


「全くどこまで身勝手なんだ亡霊ってのは…ッッ!!」


煮えたぎった憤りを圧縮したような声が事務所に小さく響いたが、ヨヅクは一旦深く深呼吸を行った。自分の中にある激情を抑えようと必死に息を吐くと、


『ただいまでーす。』


その声の主がマドカであると分かると元通りのむすっとした表情に戻り、出入り口のドアが開くと同時にファイルを置いた場所の近くにあるマンゴープリンの容器が絶妙なタイミングとコントロールによって見事に…ビちゃっという音と共にマドカの顔へ食べかけのマンゴープリン(税込172円)が飛び散った。


「…ふぅ、「ただいま」より先に言うべき事はあるだろ?」


何事もなかったかのように一仕事終えた表情で座って再びファイルに手をかけるヨヅク。


「…ヨヅクさん、言いたいことあるのであれば私も人間なので口述でお願いします」

「で、外の状況は?」


それでも全く応じようとしないヨヅクに、マドカははぁとため息をつきハンカチで顔を拭く。

「変わらずパトロールしてます。ネオン君は?」


「家出した。だが今回はベンケイを派遣しておいた、直ぐに見つかるさ。」

「でも本当に大丈夫でしょうか? ネオン君、この頃色々と考え込んでたし…」

「大丈夫だっつってんだろ…それよりも例の客の案内は終わったか?」


「えっと…はい、もう「レストランの方」にいらっしゃいます。」

「分かった、何番テーブルだ?」


夜ノ村与月はかつて陰陽庁の元一員であり、今現在でも陰陽庁の人間に追われている身である。

その為日が昇っている時間に人気のある所には極力足を伸ばすことはなく、人に顔を見られる事も避けている。この探偵事務所は一般的なソレとは異なり、事務所のある建物の裏に位置するカフェから依頼するというシステムとなっている。


「14番テーブルです。」

「分かった、繋げ。」


ちなみに裏のカフェ「CROZ(クロウズ)」もモヅク探偵事務所の一部であり、それぞれのテーブル席には

有線の黒電話が常備されている。


「はい、こちらモヅク探偵事務所…ご用件は?」


***


依頼人は30代後半から40代前半の女性数名で、全員少年サッカークラブに所属する子供を持つ親だった。

巨大都市であるアストロンベイには複数の小学校が点在しており、塾やスポーツクラブも多い。しかし

今月に入り、奇妙な事が起こり始めているらしい。


「大きな爪痕?」

『はい、この数週間だけで三件も被害にあっていて…』


母親たちの話をまとめると、事の始めは今月の三日…住宅街エリア「B」区で複数の少年サッカークラブが日替制で交替しながら使っている練習場として使っていたグラウンドに突如巨大な爪痕が残っていた事から始まった。誰かの悪戯なのかと思われたが、アストロンベイにあるサッカー場が何者かに破壊されていた事が発覚。警察にこの事について伝えることもできたが目撃者も存在していなかったこと…また近日中に近くのサッカースタジアムでサッカー大会が開催されるため、大事にすることもできなかった。そこでこの探偵事務所に依頼してきたということである。


「悪戯…にしても大掛かり過ぎますね…」

『まるでクレーン車で抉り取ったかのようになってて…』

『公園の周りには一般宅がなく犯行時の発見者が見当たらなくてこちらももう手の施しようが…』


母親たちの様子を見てヨヅクはふと問いかけた。


「…監視カメラは?」


女性らは一瞬お互いの眼を見合いこくんと頷くと、重い口を開けた。



『それが…公園の管理人さんは公開できないと仰っていて…』


~~~


昼のアストロンベイ・「B区」西部に位置するグリンドット公園、その並木の影で少年は後悔の念に駆られていた。


(まさか最初ハナからつまづくなんて…)


ネオンは鎧の傷に誓ったあの日から未だ一か月も経っていなかったが。一気に自分の戦う目的を見失ってしまう状況に少し嫌気がさしつつ苦悩していた。


(僕は一体どうすれば…)

「もしかして、ネオン…?」


ネオンが頭を抱えている時、目の前に同じ亡霊の気配を感じた。下に向いていた顔を上げるとそこには…


「…ツバサ?」


目の前に居たのはヨモツマチで見知った頬に傷のあるパーカーで短パンを履いた少年の姿があった。



集団に馴染めない者がのけ者にされるように、ネオンもかつてヨモツマチに来て間もない頃は

誰からも相手にされることはなかった。そんな中初めて接してくれたのが同世代の亡霊であるツバサだった。同世代といっても姿形がそうであるというだけで人間だったときも同じ世代であるかは不明だったが、ぎこちなくも、クオンを除いても自分に優しく接し、時にはサッカーボールで遊ぶ仲であった。



「ここにいたのは知ってたが…」

「俺もまさかネオンとまた会えるとは思わなかったよ」


ネオンたちがいるグリンドット公園は、以前からツバサが外にでかけると立ち寄る場所であった。

いつもその場所で子供たちが遊んでいる姿を微笑みながら見守っているツバサのことをネオンは覚えている。



「な、何か…大変な事になっちゃったね…」

「ああ、本当そう思うよ…突然住処が消えるし、兄貴は…どっか行っちまうしさ…」

「…」


ツバサは少し黙り込み、悲しい表情をした…今までヨモツマチで一緒にいた者がいなくなったのだ…

悲しくないことはないだろう…しかも自分たちの居場所も失ったとなると尚更だと思う。ネオンはクオンが死んでしまったことはできるだけ避けるように口を添えた。


「あっそういえばお前はどこに居たんだよ…陰陽庁に捕まってないんだろ?」

「えっと…それは」


ツバサが応えかけようとしたとき、ネオンはその気配に気がついた。


「おい貴様そこで何やってる!?」

(…!!)


ネオンたちが座っている場から数十メートル離れた場所からかけられた声の方へ視線をたどると。

見覚えのある白い霊媒骨格を身につけたヒーロー部隊「白の部隊ヒロイック・ホワイト」であった。


「あいつらは「白の部隊ヒロイック・ホワイト」…仕方ない、ツバサ逃げるぞ!」

「あっ…ちょっと!」


まずいと思ったネオンはツバサの右手を掴み、逃走をはかった。


「こちらソルジャー23! 不審な行動をする霊体を発見! 直ちに確保に移る。」


それを発見した白の部隊ヒロイック・ホワイトも後を追っていった。


「…」


その様子に驚く公園内の人々であったが、その中に一人は外灯にもたれ掛かる影が一つあった。否、誤解を生まない為に訂正するのであれば、影を持たない1人の霊が隠れるようにそこにいた。


~~~~~~


ネオンたちが「白の部隊」に追われている最中、ヨヅクとマドカはグリンドット公園から十数キロ離れた

サッカー場にいた。当然先ほどの母親たちの言っていた「練習場荒らし」の現場を調査するためである。

ヨヅクは陰陽庁に追われている身であるため、付け髭やサングラスなどをつけて外出している。


「さて、と…こりゃあまた随分力加減がバカな奴が暴れたんだな。」


その場の状況を見て二人が唖然としてしまうのも無理はない。そこはサッカー場と呼称できない程あまりにも酷く荒れていた。サッカー場描かれていた筈の白い(ライン)は地面が捲れてしまったせいでかき消されており、ゴールポストも強い衝撃を受けたのか所々が折れネットも破られていることがわかる。しかし何より目についたのはサッカー場の端から端まで続く切り傷だった。


「にしても妙ですよね…本当に霊体(おばけ)たちがコレをやったとすれば目的ってなんでしょうね?」


ヨヅクは地面の切り傷の断面をじっと見周っており、マドカは霊視鏡を使いながら霊力の痕跡がないかを調べている。


「分からんが、陰陽庁の命令でこうしたとするならばもっと上手く隠蔽するなりなんなりしてる筈…なのに

 やってることと言えば公園の管理人の口封じしか行っていない。ということは…」

「亡霊のだれかが今回のことを起こしてしまった…ということですか?」


ヨヅクは歪みのない綺麗な傷の断面をじっと見つめながら立ち上がる。


「ああ、可能性はある。それにあくまでも仮説ではあるが、傷の大きさからしておそらく犯人は霊媒骨格を使って間もないみたいだな。」


だがしかしヨヅクはこうも思っていた。


(一番の謎は何故被害を受けてるのがサッカーの練習場ばかりなんだ…?)


~~~~~


場所は戻ってネオンたちには危機的状況が続いていた。


(駄目だ! このままじゃ奴らに追いつかれる。 だけど戦っている暇なんてない…無闇に一人で戦おうとすれば)


白の部隊(ヒロイック・ホワイト)」との差は確実に短くなっていた。当然霊媒骨格を身に着けた隊員相手との力の差は言わずもがなであり、あと一歩半で追いついてしまう程であった。


「…ネオン君ッッ!」

(ツバサを人質にされてしまう! …一体どうすればッッ)


とその時、数十分前のヨヅクの会話をふと思い出した。



『骨格も手足にしか憑依できず―――』



ネオンはニッと笑い、服の袖から「憑依装弾ヨロイボム」を取り出した。


「…ツバサ、一応聞いておくけど…高いところは好き?」


ネオンは憑依装弾のピンを親指で抜き取ると、眩く発光し始めた。


「え…何てええええええ?」


次の瞬間、2人の周りに煙幕に覆われた。煙幕からは複数の緑色の光も中から漏れ出しており、

追っていた隊員たちも警戒して足を止めて少し下がる。煙幕が晴れると2人はそこにいなかった。


「なっっ…消えた!?」

「違う、上を見ろ!」


気づいていない隊員が上を向くと、黒い米粒が空中で舞っていた。ネオンはツバサを抱えながら

空高く跳んでいたのだ。ツバサがふと足元を見ると、彼の足が黒い霊媒骨格に憑依されていたことに気づく。


(正直自分でやっといて驚いてるけど…この跳躍ジャンプ力なら…!!)


そのまま飛びながら逃げてゆくネオン。


「馬鹿なっ、黒の霊媒骨格だとッ!?」

「こちらパトロール第4班、謎の骨格を所持した霊体が逃走!!」



まんまと逃げおおせることができたネオンとツバサであったが、一つだけ誤算があったとするならば…



「ぁああああああああぁァ!!」



骨格のパワーと踏み留まるタイミングと場所であった。少し離れた公園の池に凄まじい水飛沫が飛び散った。





「はぁ…はぁ…」

「……」


ネオンたちは落ちた池からあがって近くの岸へとあがった。


(考える暇がなかったとはいえ止まる時を考えてなかった…とはいえ追ってきてはいないみたいだ…。)


周囲に人や隊員がいないことを察したネオンはハァとため息をして、ツバサのほうへ振り向くと

ツバサは既に立ち上がっており、背をこちらに向けていた。


「……」

「ごめんツバサッ!!、色々と聞きたいことがあるかもだけど…とりあえず安心できる場所に行こう。 そこでなら」


ネオンは疲労した様子であったが、息を安定させようとしつつ、ツバサの肩をガッと掴もうとした。その時…


「キックエース………変身。」


ツバサはボソッとそう言いながら、何かを外していた。その時の音は聞いたことのあるものであった。


「え?」


ネオンが視線を下に向け、てツバサの足元を見るとツバサの前にあたる足元にはピンらしきものが落ちていた。そう、そのピンというのは先ほど自分が抜いた憑依装弾のものと似ていた。


「ネオン、僕にはね…願いがあるんだ。」

「?…いきなり何のッ」

「初めて会った時、君が僕に言ってくれた事覚えてる? あの言葉があったから亡霊として…この世界で生きようと思えた。」


「だからこそ、僕は願った。」


ネオンの頭によぎった悪夢は現実となっていた。ツバサもネオンの方へ顔を向けると、その手には水色と緑のラインが入った憑依装弾ヨロイボムがあった。


「ツバサ…何で…何でお前が…」

「ネオン、君の兄さんが陰陽庁に消されたのは…分かってる、僕だってあいつ等を許せない…それでも!」




たちまちツバサの周囲が煙幕に覆われてゆく、その様子は二人の心の間に分厚い壁ができたようであった。


「君が僕の道を阻む大きな壁ならば…僕は、僕はやるしかないんだ…!!」


やがて煙から現れたのは優しき少年幽霊ではなく、青く輝く鎧を身に纏ったヒーローの姿であった。


EPISODE:9「触れられぬ願い(前編)」END

EPISODE:10「触れられぬ願い(後編)」へ続く・・・

[今回のピックアップヒーロー]

【No.4】「キックエース」

入隊候補生(青の部隊に所属予定) [身長]:175cm [体重]:183kg [パンチ力/キック力]8,0t/19t

前回のジャスティブルと大きく変わってスピードに特化したヒーロー。全体的になめらかなフォルムのボディが特徴で、太腿部分のジェットブースターで足技による攻撃力が大幅にアップしている! 長時間ではないが飛行することもできる! 強いぞ、すごいぞ、キックエース!!


[作者]

どうもお久しぶりでございます、作者のTHE黒です。今回この第9話を読んで頂きありがとうございます。次回は来年からになってしまいますが、できるだけ…そうできるだけ早く投稿したいと思いますのでよろしくお願いいたします。ここだけの話ですが、最近東京ビッグサイトで開催されたゲームマーケットに参加してきました。ボードゲームやTRPG、カードゲーム専門のイベントでしたが、ルールやプレイヤーの役割もサークルや会社それぞれにあって、シンプルなものから複雑で難しいモノまでいろいろ体験できて非常に楽しむことができたと思います。気分転換に色んなイベントに参加するのは楽しいと自分は思っているので、おもしろそうなイベントがあったりとか小説の感想・コメントがあれば、いつも通りTwitterの方でお待ちしております。さぁネオンは親友であったツバサとどう戦うのかをお楽しみにして下さい。それでは新年の時まで…

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