出会い
「本当、恋愛とかくだらない」
私、木崎 空。高校2年生。
極度の男嫌いだ。
「あんたそれ口癖なの?(笑)」
隣で笑いながら話しているのは私の幼稚園からの幼馴染、田中 夢。
私が極度の男嫌いになった理由は、今から4年前の出来事だった。
あの日は、雪が降る本当に寒い日だった。
学校で熱を出した私は早退をすることになり、頭がクラクラする中なんとか家までたどり着いたのを今でも覚えている。
ガチャッ
見覚えのない男の靴があったのだ。
「これ、お父さんのじゃない」
なぜか胸騒ぎがした。
リビングに入っても誰もおらず、どんどん鼓動がはやくなっていく。
1番奥の部屋のドアがほんのかすかに開いていた。
私はその隙間から、自分の母親と見知らぬ男が性行為をしているところを目撃してしまったのだ。
その瞬間、私は熱があるのにも関わらず気がつけば自宅よりはるか遠くへ走っていた。
一緒に住んでいた父の元も離れ、今は1人暮らしをしている。
その日から私は男はあたりまえ、恋愛さえも怖くなってしまったのだ。
このことを知っているのは、幼馴染の夢だけ。
「空〜!!帰ろ!」
「うん!」
いつも通りの夢との帰り道。
「「ドンッ」」
だれかがぶつかってきたのだ。私はその衝撃で思いっきり尻もちをついた。
「いったぁ…」
「空!!大丈夫!?」
「え?あぁ、うん。私は全然。」
「ちょっと!謝るくらいしなさいよ!」
夢がぶつかってきた男に怒鳴った。
いやだ。男だ…。怖い…。
「悪りぃ!大丈夫?」
男が私の手を握って起こそうとしてきた。
私は咄嗟に
「触らないで!!」
と口走っていたのだ。
「は?俺もお前のこと触りたくて触ってんじゃねぇよ。可愛くねぇ女」
そう言い残して男は去って行った。
数日後…
「えー今日から突然なんですが、このクラスに転校生がきます」
ガラッ
「はぁ!?」
私よりも先に夢が大きく口を開いていた。
それは数日前、私にぶつかってきたあの男だった。
「D高から来ました。矢神 海里です。よろしくお願いします」
「やばくない!?かっこよくない!?」
みんな小声でつぶやいている。
「矢神の席は〜…木崎の隣だ。木崎、教科書とか見せてやれよ」
ガタッ
「よろしく、木崎さん?♪」
「…」
「やっぱ可愛くねぇ女」
最悪だ。よりによってなんで隣なの!?
意味わかんない。
平穏な学校生活がこいつによって一変させられるとはこの時は予想もしていなかったのだ。
「空おはよ!」
「おはよ…」
「元気なさすぎでしょ(笑)」
「もう本当最悪だよ」
「まぁ、ほっときなよ!あんな奴!」
「うん…」
ガラッ
あいつ…来てない。
今日1日幸せだぁ〜♪
事件は昼休みに起きた。
「夢!ご飯食べ行こ♪」
「朝と全然違うじゃん。なんかいい事あった?」
「別に〜?♪」
「あっそ」
「つめたっ(笑)」
「売店人多すぎでしょ〜」
「嫌になっちゃうね」
グイッ
「!?」
「こいつ借りるわ」
「は!?ちょっ、なにしてんの!」
ここは…空き教室…?
ガチャッ
なんで鍵しめてんのこいつ…怖い…
あの頃の記憶が鮮明に蘇ってくる。
「お前、俺と似てんだよ」
「…?」
「俺もお前とおんなじ時期におんなじこと経験してる」
「え?」
「信じらんねぇだろ」
「なんで私のこと知ってるの?」
「まぁそれはいいじゃん。頼みがある」
「なに?」
「俺と付き合って」
「…どこに?」
「俺と彼氏彼女になるってこと」
「なにいって…んっ」
ちゅっ
「へぇ〜意外と可愛い顔すんじゃん」
「もうあんた本当、嫌い!!!こんなことして何が楽しいの!?もう話しかけてこないで!」
ガラッ
タッタッタッタ…
ほんとなんなの?あいつ。
イライラする。
人を弄んで何が楽しいの?
最低…最悪…
ゴシゴシゴシ…
何度水で洗い流して、何度こすっても
あいつの唇の感触が消えなくて。




