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魔王との再会

「ミモザ姫、お迎えにあがりました」


 このお城に監禁されてから5日め。

 またもやルシファーがどこからともなく現れて、そんなことを言った。

 いきなり目の前に現れても、あたしは一切驚かなくなった。


「おや、もう驚かれないのですね」

「ふんだ、毎度毎度驚かされてたら、いくらあたしでも慣れるわよ」

「それは残念です。密かにミモザ姫の驚く姿をモニタリングしておりましたのに」


 おおい!

 何してんだよ、バカかこいつ!

 それ、誰に見せようってんだよ!


「ちょい、ルシファー。その隠し撮りしてたテープ、今すぐ渡して」


 青筋を立てるあたしの顔があまりに恐ろしかったのか、ルシファーは2、3歩下がると姿を消し、再度ビデオカメラを持って現れた。


「どうぞ」


 あたしはルシファーの手からビデオカメラをつかみ取ると、鉄格子の窓の外に思いきりぶん投げてやった。


「海の藻屑と消えろッ!!!!」


 その言葉とともに、空の彼方へと飛んで行ったビデオカメラはきらりと輝く星となった。

 ああ、せいせいした。


「さすがはミモザ姫。サイクロプス顔負けの怪力でございます」


 そう言って、パチパチと手を叩くルシファー。

 こいつの言葉は、褒めてんだかけなしてんだか、よくわからん。


「ところでルシファー。お迎えってなに?」


 あたしは尋ねた。

 そういえば、さっき、そんなことを言っていた。

 あたしの言葉に、ルシファーが笑う。


「お喜びください。サタン様の勉強が終了しました」

「ええ、終わったの!?」


 は、早くない?

 だって、1週間ぶっ続けって聞いてたのに。まだ5日でしょ?


「それはもう、サタン様の頑張りようといったら。あなた様に会いたい一心で、血反吐ちへどを吐きながら勉学に励んでおられました」


 血反吐ちへど吐きながらって……。

 それ、もう勉強じゃねえだろ……。


「おかげさまで、サタン様は以前より一皮も二皮もむけた立派なお方になられております」


 いや、どんなに皮がむけようが、あの魔王は変わらない気がする。


「そんなわけで、我が主は今か今かとミモザ姫をお待ちでございます」

「行かないって言ったら?」

「おそらく勉強時のストレスが爆発して、大陸の一つは吹き飛ぶでしょう」


 くそチートだな、おい!! 

 そんな相手と、どう接しろっつうんだよ。


「さ、お早く。そろそろ、サタン様の恋慕の気持ちが臨界点に達します。そうなってしまえば、我々にはもはやどうにも……」


 まるで危険物のような扱い。

 あたしゃ、それを抑える道具ってわけね。

 半ば強制的に監禁部屋から連れ出され、サタンの部屋へと向かわされた。



 サタンの部屋の入り口は、相変わらず大きかった。

 その大きな扉の横に、ちょこん、と人間サイズの出入り口がある。すでに鍵は開いているようだ。


 ううう、いやだなあ。

 臨界点に達しようとしてる魔王。

 なんか、キモい……。


 キイ、と軽く扉を開ける。

 中は、相も変らぬ大きさの部屋だった。

 その中央に、人間サイズの魔王がソファに座っている。

 最初に見たときと変わらない、超絶美形の黒マントの男がそこにいた。


「おおお、ミモザ姫! 我が妃!」


 ひいいっ!!

 魔王は立ち上がると、両手を広げて猪突猛進してきた。


「会いたかった、会いたかったよおぉぉ……ぶべらっ!!!!」


 い、いかん、思わずどつき返してしまった……。

 いや、だって、めっちゃキショイんだもん。


 魔王はゴロゴロと転がり、ソファに頭を打ち付けると頬っぺたを手で押さえながら泣きそうな目でこちらを見つめた。

 犬か、あんたは。

 いや、実際よく見ると犬みたいにプルプル震えながら驚いた顔でこっちを見てる。


「ミ、ミモザ姫……?」


 だあああああっ!

 だから、なんでそんな顔をする!?

 まるであたしが完全にいじめてるみたいじゃないか!


 その時、大きいほうの扉が開いて、一人の巨大な女が顔を出した。


「サタン様! もしかして、また泣かされたのですか、人間の小娘に!」


 出たよ、ジャイアントメスゴリラ。

 確か、サキュバスっていったっけ。

 魔王にぞっこんの女悪魔。


「おのれ、人間の小娘風情が! サタン様をどつくとは」


 そう言って、剣を抜き放つ。

 前にも言ったけど、人間の小娘にどつかれる魔王ってどうなのよ。あ、言ってねーか。


 身構えたあたしをかばう様に、サタンは言った。


「よいのだ、サキュバス。その人を殺してはならん。いきなり驚かせてしまった余が悪い」


 そう言って、しゃん、と立ち上がる。

 ううん、こうして見るとほんとに紳士的で非の打ちどころのない完璧人間に見える。


「ですが、サタン様。この小娘、一度ならず二度までも……」

「余の言葉が聞こえなかったのか?」

「も、申し訳ありません」


 有無を言わさぬ迫力。

 サキュバスは剣をしまうと、そそくさと部屋を出て行った。

 あっちゃあ、やっぱこの人、魔王だわ。


「ミモザ姫、実はそなたに会いたかったのには理由がある。もちろん、話をしたかったというのもあるが」

「へ、へえ……」


 やっべ、「へえ」だって、「へえ」。

 呆気にとられて変な返事しちゃったよ。

 でも、サタンは特に気にするふうでもなく続けた。


「実は今日より余の率いる魔王軍は、地上を侵攻し人間界を支配することを決めた。そして、地上を制覇した暁には余は魔界のみならず人間界のすべての覇者となる!」


 うわっちゃぁ。

 言っちゃったよ、この人。

 厨二発言、出ちゃったよ。

 それって、要するに世界征服宣言ってやつだよね?

 一般人なら「あなた気は確かですか?」て言われるレベルだよね?


「ただ、普通に人間界を進行するのもつまらぬのでな。気分が高まる作戦名を考えてみた」

「作戦名?」

「うむ。『大魔王サタンのラブラブファイヤー大作戦』」


 だっさ!!!!

 なにそれ、だっさ!!!!


「この作戦名をもって、人間たちに宣戦布告してやろうと思う。どうであろうか」


 ど、どうしよう……、内容うんぬんよりも作戦名がダサすぎて笑いがこらえきれない。

 世界に危機が訪れようとしている中、あたしは笑いを止めるのに必死だった。


次回から別視点です。

最後までありがとうございました。困ったときの新キャラ頼み。そろそろ(すでに)煮詰まっています。

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