一歩
「だから…協力してほしいんだ。僕は二人が知ってる僕ではなくなっているかもしれない。今の僕は二人を知らないから迷惑ばかりかけることになると思う。それでも…」
「わかってるよ」
玲が唐突に僕の言葉を遮るように言った。
「え?」
「優希は記憶を俺たちに必死に合わせようとしてくれてるだろ?だけどよそんなに焦らなくていいんだぜ?俺たちはお前に合わせる。三人でちゃんと優希の記憶は取り戻す。優希だけが焦る必要はない」
焦っている。二人から僕はそんな風に見えているのか。確かにそうかもしれない、早く取り戻して恐怖や孤独感を消したかった。
「三人で頑張ろう!!」
梨花も真剣に頷きながら言う。
「そうだね、ありがとう」
焦りすぎては駄目だというのは分かっているけれどはやく記憶を取り戻したいと思わずにはいられなかった。玲が考えながら口を開く。
「それじゃあ、少しずつ始めてみようか」
「何からするの?」
「優希、何か今の時点で気になっていることはあるか?」
気になっていること、僕はカメラと写真の方に目を向ける。
「あの中に僕が事故のとき持っていたカメラはある?」
記憶のことならもっと他に聞くべきことがあったかもしれない。僕に関する思い出とか、二人との記憶とか。でも、僕は事故のことが気になって仕方がなかった。事故は確かに頭を強く打ったことで記憶を失う一番の原因にはなっている。だけど記憶を取り戻すきっかけにはならない。それでも聞かずにはいられなかった。