おとこのゆめ
異世界で女にモテモテハーレム。
一度は夢見る男の夢。
ご多分に漏れず俺も、夢を見ていたと言わざるを得ない。
回復系が優遇の世界で。
基本的に男女比率が女性多めで男性優位で。
しかも僧侶系の職業ならモテモテだよ!
うん、そう言われたらヒーラーになるよな。
大体異世界で殴ったり切ったりとか現代人に出来るわきゃねーんだよ。
まだ傷治すとかのがましだ。ましてや今の職業考えたらむしろ優位に立てる。
異世界に行かせてもらえるとなった時、ヒーラーが少ないからヒーラーになって欲しいと言われて俺は案外あっさり頷いたのだ。
それが罠とも知らず。
そんな俺は元外科医である。
グロさに耐久はあるので回復に抵抗があるとかは一切ない。
さすがに手術以外で切ったりは勘弁して欲しいが、相手が血だらけだろうと腕が取れてようと魔法をかけようとする事自体に抵抗があるわけではない。
何が地雷だったかって言うと。
うん。
異世界舐めてた。
回復役日照りのこの世界が、ヒーラーに対してどんな状態になってるかとか全く考えてなかったんだわ。
そもそも男自体少ないんで男剣士とかもハーレムになってるわけ。
んでもってPTと言うからには女子の剣士とか暗殺者とか重騎士とかそんなのもいるわけだよ。
「いないわねぇ、回復役」
「仕方ないわよ。少ないし、回復役ともなると大抵PTが囲ってるもの」
「どこかにフリーな回復役いないかしらー」
ギルドの掲示板の前には、肉厚な女子の皆さん。
その胸は筋肉ですか?
目がぎらついてる気がするのはどう考えても気のせいじゃないですよね?
やめて、寄ってこないで怖い!
「あら、貴方は?」
「PT募集の人かしら? ……男…」
「男だわ…」
フェイドアウトしたかったのに寄ってくるムキムキ女性陣に、俺は早くも引き気味。
へらっと愛想笑いはしつつ、いつも通り手を振り拒否の意を伝える。
「かけだし魔術師なので、勘弁して下さい」
「……魔術師かあ…」
「男でも魔術師はちょっとね…体力ないだろうし…」
ちなみに一番人気ない職業、魔術師。
魔術は威力があるけれど才能に左右されるし、俺が使えるのは初級攻撃魔術のみ。
なので駆け出し! を言いきるだけで敬遠されるのだ。
体力もないしね! 体力もね!
大事な事は2度言っておこう。体力値が少ない魔術師はそれだけで敬遠されるんだやっほう。
ぶっちゃけホントはモテないとかそんなオチがあるのを警戒して初級攻撃魔術ぐらいは使えるようにスキルを調整してとった俺、今考えると超偉い。
体力は人並みだけど身体はINT値に影響されて細いし、なんとか誤魔化しきれた。
名残惜しそうに去っていく女性陣にほっと息をつきつつ、俺は力を抜く。
(女怖い…女怖い…女怖い…)
思い起こせば数日前。
トリップしてまず意気揚々とギルドにやってきた俺は、幸運と言うべきかこの世界の回復役の男に真っ先に出会ってしまったのだ。
そして現実を知った。
(ヒーラー…………………死にそうじゃね?)
何故か爺さんのようにぷるぷるしている男を見て俺は思った。
想像以上にこの世界はヤバイ世界なのではないかと。
そして滅多にギルドで男を見ないのは本気でやばいのではないかと。
何故に回復役が冒険者ギルドで死にかけてるのかと思われる良い子の皆さん。
良く考えてみよう。
回復役が求められるのは何故か?
戦闘での回復が必要だから。
ここまでは良いだろう。
この世界、それだけじゃないのだ。
ヒーラーの子供は当然ヒーラーになりやすい。
数が産めれば当然、男も生まれる"事がある"
さあ、どうなるでしょう。
PT内で行為は当然。
下手すると、戦闘行為すらニの次かもしれない。
ビバハーレム。
うん、男の夢だな。
………………………相手が好みならな…!!!!
俺、細い子が好きなんだ。
魔術師って基本、回復兼用なんだ。特化程回復できないし回復出来ない子全般を魔術師とも言うんだけどその数すら少ない。
つまり好みの女の子を見ることも少ないんだよ。しょんぼり。
で、この世界、ハーレムって言うと。
女性が前衛! 後衛何それ美味しいの! 魔術師とか稼ぎにならないからいないよ!
……っていう。
つまりは好みの外れた女性陣の……群れ…。
そしてそんな女性陣に回復役とばれた瞬間何が起こるかって…下手すら 監 禁 ル ー ト? みたいな?
おいどこのヤンデレだよ!!!
相手が美人ならそれもいいかもしれないけど強制ハーレムルートとか地雷以外の何物でもないよ!
何の調教エンドだよ!
女にえり好みするな?
いやいやいや、鑑賞するなら別にムキムキ女性でもかまわんけど。
たまにはと言うならちょっと惹かれないわけでもないのだけど。
回復役って、何を回復するんだと思う?
普通に 精力回復 とかあるんだぜ? スキルに。
どう考えても好みの子とヤる前に死ぬ。
どうして俺は攻撃魔術じゃなくて若返りを取らなかったのかと…!!!
そもそも性欲はそこまでないんだよ! 疲れた医者に何を期待したのか!
なんて無茶ふりしやがった…!
「………とりあえず俺は魔術師と偽って…俺は好みの女の子を捕まえて細々子作りするんだ…」
目標を掲げつつ、俺は今日も冒険者ギルドでぷるぷるするのであった…。
尚、金についてはトリップのスキルふりの際に「余ったのは金にふってしまえ―☆」と所持金に振ったため働かなくてもイイらしい。