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Dabster

「マッドサイエンチスト=なんでもあり」

これを普及させましょう(提案)

さて、どうしたものか。

脱走後の算段を練っていたら再び馬車に詰め込まれた。

ただし、彼女と一緒の馬車で、少しだけ高級感がある。

他の男どもは別の馬車に載せられている。


そうこうしているうちに馬車の出口は閉ざされてしまった。

逃げたところで後が続かないことは承知しているから落胆はない。

あくまでも暇潰しみたいなものだから。

さて、“unknown”さんのデータを漁るか。

....他人の記憶って、覗いていいのかな。

人格壊れそうだわ。


名前:ルクレール

年:20

農村出身。7歳のとき村が税を納められないときに真っ先に奴隷として売られた。

それ以来、あちこちで使役されているが稼ぎの大半を村に持っていかれる日々。

だから村を燃やしたら逮捕されて犯罪奴隷となった。

村は村長と親父だけが燃えたそうだ。

かなり壮絶な人生を送っているこのルクレール氏。


人間の精神は頑丈だ。他人の記憶を追体験というか読み返してもなんともない。

マッドサイエンチストの近くにいたからかな?


それと現状、転生というよりも、憑依しているというのが正解のようだ。悪魔憑きならぬ異世界人憑き。

仮想空間か異世界か知らんが、原因は博士の実験だということは佐賀県が地味だと言うこと並みに明白。

向こうから行動は監視されているだろうから、実験が終わった段階で引き戻されるだろう。

優秀な二人しかいない従者、そう簡単には手放すまい。

そうであってほしい。



「ねぇ」


声をかけられた。彼女だ。


「なんでしょうか」

「名前は?」

「ルクレール。一曹です」


つい階級まで言ってしまった。


「ルクレールね。私はユーカ。どこへ売られるのかわからないけど、よろしく」

「ええ、よろしく」

「あなたの体術、どうしたの?みたことがない技だったけど」

「以前お世話になった人に仕込まれました。関節なんかの人体の弱点を効率よく狙って、相手を殺すための技術です」

「いつか教えてくれる?」

「了解」


言葉が通じる。

どういうことだろう?

それっきり、彼女は寝入ってしまった。

今のうちに調べておこう。

..この私がしゃべっている言葉は共通語というらしい。

各地域それぞれの言葉、方言みたいなのとは別だそうだ。

そして大半の人間、農民や漁民などは話せない。習ってないから。

街では共通語が習えるらしいが学校にいけるのは市民限定だそうで。


なら識字率はどうなんだろう。

低そうだな。



私たちを乗せた馬車は深い森の中に入っていった。

その森の最奥には、砦があった。


門番が槍を構えている。

弓兵が油断なく見張りをしている。


馬車は砦の門を潜り、本丸の前へと付いた。


「東方騎士団へようこそ。歓迎しよう、盛大にな」


待っていたのは1人の騎士。


「説明しよう。ついてこい」



「私はラインハルト。東方騎士団の副団長だ。君たちのことは聞いている。強いんだってな」


ポニーテールが特徴の金髪男。三十代。

おそらく、彼は強いだろう。

いや、確信が持てるほどに彼は強いだろう。

腰のサーベルの柄の使い込まれ様は、何度も使い込まれた証だ。


「私の得物はこいつだ。これまで302の敵を斬ってきた。君たちの武器もあとで選びにいこう。..何から話そうか。まずは騎士団についての説明だな。我々の目的は東方の未開拓地域を開拓すること。開拓の指揮と開拓民の護衛が主任務。数の不足を補うために奴隷を導入している。君たちのように強い者を優先して送ってもらっているのさ」


だから待遇がいい職場か。

ラインハルトはポニーテールを撫で付けながら続ける。


「で、今回。奴隷のみの部隊を設立することになった。その隊長を頼む」

「規模はいくらです?」


部隊指揮はとったことがないんだが。


「50だ。少ないだろ?」

「了解です」


ユーカは承諾した。


「ルクレール、質問は?」

「兵士はすでにここに?」

「これから買い付ける。戦の捕虜を商会でまとめ買いする」


お買い得に聞こえる。


「戦奴隷に指揮官はいないのですか?」

「指揮官が生き残るのはまずない。真っ先に狙われるし、降伏するときに兵士の助命と引き換えで処刑される」


指揮官はレアなのか。まぁ部隊指揮は練習すればいいか。


「了解しました」

「やるな?」

「はい」


気乗りはしないけどな。


「部屋に案内する。こっちだ」



あてがわれた部屋は奴隷隊の隊長/副長用に一人部屋。

日当たりも悪くない。他の隊員は4人部屋だ。

砦の居住区南東側2階が奴隷隊の空間。食堂や風呂もある。

風呂といっても樽の水で体を拭くようなもの。洋風だ。残念。



「武器を選べ」


次に案内されたのは武器庫。

そこには長剣、短剣、槍、斧、鉈、たらい、ハルバード、大盾、そのほかいろいろ。

博士を刺したり突いたり斬ったり潰したりにはちょうど良さそうなものがいっぱいある。



ソレはその武器庫の真ん中にあった。

木製のストック。鈍色のバレル。

銃だ。

先込めのマスケットではなく後込めのボルトアクション。

マガジンまである。五発か。WWⅡを境に軍用の主力から外れたよな、ボルトアクション。スナイパーライフルにはいまだ多いが。

西普連の狙撃上手、篠田さんは元気かな。


しかしなんで銃があるのに剣槍がメインなんだか。


「銃は貴族には好かれないんだよ。臆病に見えるそうだ。正々堂々戦え、とも」

「なぜ犠牲がでるやり方を好むのか..」


「君は結局銃を選ぶか。扱いにくいぞ、それ」

「練習しますよ。弓より楽で射程が長い有利は捨てがたい」

「フレイと同じことを言うな。..あ、フレイはここの団長だ。銃の扱いが上手い」


ユーカはやっぱり斧を選んだらしい。

私は銃と鉈に大型ナイフ。

扱いやすいものを選ぼう。


「ちなみにフレイは銃とサーベルに大型ナイフだ」

「団長とは気が合いそうです」

「ユーカ、君は?」

「私は斧を。あと投げナイフ」

「前衛と後衛が分かれたな」

「ですね」



そうだ、この世界の銃を撃ってみよう。

89式のような精度は期待しながまっすぐ飛ばないと困る。

あ、アサルトライフルでもないかな。

..Stg系のアサルトライフルの構造は撃ったときのガスで弾を装填するんだっけ?

その辺の設計の知識がないのはつらいな。



砦の北側の演習場、その隅に射撃場はある。

その射撃場には先客がいた。

腰まである銀髪の美しい女性。

手にしたライフルはしっかりと的の中央を穿っている。


「どうした、新入り。射台は空いているぞ」


的から目をそらさずに言う彼女の言葉で我にかえる。

美しい、というのは彼女のためにあるのだろうか、つい見とれていた。


「了解です」


射台につく。

土の台座に銃身を据え、深呼吸。

体を倒して銃を構え、サイトを覗く。


風がまだ吹いている。

銃身のブレがおさまる。

風を感じる。的の風は....微風。

銃口をほんのすこしずらす。

発射。

精度は最高。真ん中に命中だ。

レバーを引き、次の弾を薬室に送り込む。

発射。

少しそれた。


(いい銃だ)


「なかなかやるじゃないか」

「ありがとうございます」

「ほれ」


彼女はマガジンを一つ投げてよこす。


「競いあいだ」

奴隷には三種類あって、

債務奴隷、犯罪奴隷、戦争奴隷の三つ。

借金が返せないので身体を売る債務奴隷

刑務所から出て社会復帰がてら働く犯罪奴隷

捕虜を使役する戦争奴隷


ちなみに上から順に人権(みたいなもの)が制限される。

人権はいまだに考え出されていません。

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