243日目
バースさんに連れられて街の自衛団に入ってみた。へっぴり腰で剣を振るう俺を馬鹿にしつつ、ちょっかいをかけられつつ、パシリにされつつ、……やべ、俺いじられてる。もやしっこだった俺もいっちょまえに細マッチョと言えるくらいにはなった。鏡の前でポージングしてみたらバースさんと鏡越しに目があった。恥ずかしくて死にたい。
そういえば、今日初めて魔法とやらを見た。なんかもぞもぞしゃべってるなと思ったら何もないところから火やら水やら現れた。ファンタジー。一応城壁に囲まれている街ではあるけれど、そうほいほいと魔法使いがいるわけではないらしい。王都からやってきた領主のお抱えらしい。馬鹿みたいに見入ってしまったけど、自衛団の連中も魔法は珍しいらしく、馬鹿みたいな顔してたのは俺だけじゃなかった。よかった。
魔法使い、レオンさんはいいひとだ。頭もいい。仲間は魔法なんて使えるわけねぇって鼻で笑っていたが、俺は魔法に興味があった。テンプレよろしく俺って魔法使えるんじゃね?と思ったわけだ。
いや、ここまでの道のりでテンプレよろしくされてませんが。
簡単な火の魔法の呪文を教えてもらった、が。期待した俺が馬鹿だった。レオンさんが言ってる言葉が一言も理解できないうえに、音をまねようと口を動かしたけど音が出ない。どうして、と詰め寄った俺の顔をみてレオンさんは苦笑いしていた。精霊から嫌われてますね、って。オイ。
もやしっこ、剣の腕もそこそこ、魔法に至っては使えない。
ホント、俺ってなんでここにいるんだろう。