13日目
いやいや、あっちにいたときは日記なんて書いたこともないのに、こんな状況に追い込まれて書こうと思い立つとは。
吉川健、16歳。
日本のそれなりの都市部に住むどこにでもいるようなサラリーマンと専業主婦の間に産まれた、平凡を地で行く次男の俺が、これまた普通の市立高校に通い、可もなく不可もないような成績の俺が、どうやら異世界トリップ真っ只中。
異世界トリップ?ファンタジー?おいおいオタクかよ、と突っ込んでいた過去の俺、馬鹿にしていた友人諸君。土下座して謝るから、助けてください。
前後左右眺めても木しか見えない、森の中で目が覚めて、当てもなくさまよってたどり着いたログハウスみたいな小屋を訪ねてみればボケたばーちゃん、じーちゃんしかいないって。
異世界トリップ?テンプレ?なにそれおいしいのな状況に泣くしかない。
幸いにして、ボケた老夫婦は俺をハロルドと呼ぶ。息子だと勘違いしてるらしい。頼れる人もいないから俺はハロルドとしてじじばばの息子に成りすました。(薪割りとか弓で狩りとか初めてしたし、腰がはいっとらーんって鉈持って追っかけまわされた。あのじじボケたふりしてんじゃねぇだろーな)
馬鹿にしていた友人諸君。
異世界トリップにはテンプレ必須?おいおい、それならこの状況をどう説明する!
俺を召喚したらしい魔法陣もなく、というか人がいねぇ!勇者と崇める王家の人間も、俺に惚れるはずの王女もいない。魔王を倒してくれとも国に平和をとも。(あ、でも言葉が通じるのはテンプレ、か?)
俺にいるのはボケた老人2人、ってどーゆーことだよ。
テンプレ必須って誰が言った。異世界トリップしてみたいって言ってただろ、誰でもいいからあの馬鹿どもと俺を変えてください。お願いします……いや、まじで。
拍手より転載
吉川健が勇者タケルとなるまでのお話