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出会い

警告タグを付けていますが、ほとんど軽いもの…

というか、ホントにそうなのか?なので、さほど気になさらずとも結構です。

ちなみに、アニメ、小説のオマージュな部分が多々あります。



おもむろに、少年はため息をついた。

彼は軍隊の中で、ショウゴと呼ばれている。

そして、彼がため息をついた理由、それは……、

「こんなところで……」

そうつぶやき、またため息をついた。

この世界の軍は、寮生活を基本としている。

共同制で、何人かが同じ部屋に一緒に住んでいる。

部屋でゲームをしていたショウゴ。

その横で、NPCと呼ばれているロボットと……、

まぁようするに、エッチなことしている仲間がいた。

――NPC。

最先端の科学技術を用いて造られたソレは、そういう目的で買う人物が多いのだ。

「こら!

どーせんなことやるなら、誰も見てないところでヤれ!」

後ろから、誰かの怒鳴り声。

ショウゴがよく知ってる者の声だった。

「すいません、アキさん……」

アキと呼ばれた、サングラスをかけた男に、ショウゴは頭を下げた。

アキは頭をかきながら口を開く。

「俺だって、見ててイイ気はしねぇよ。

……アイツもただの享楽主義者みてーだな」

アキは、NPCを連れて急いで部屋を出ていった男に背を向けたまま親指を差した。

ちなみに享楽主義者というのは、NPCを愛玩人形として使う者の呼称だ。

「まぁ、娯楽がねぇーからな。

しょうがねぇのかもしれねぇ……」

アキが外を仰ぎ見た。

ショウゴもつられて外を眺めた。

空は、青い。

戦争なんてしてるのがバカらしいくらい、青い……。

少なくとも、ショウゴにはそう想えた……。




数億もの死体を積み上げてきたにも関わらず今も尚、人類に壊滅的なダメージを与え続けている、全世界大戦……。

ショウゴが高校2年生になった―戦争のため、休校している―その時、彼の幼なじみの女の子は軍に入隊した。

長い黒髪。

誰にも退けを取らないプロポーション。

そして、眩しい笑顔……。

そんな彼女が、なぜ軍隊に?

『ブレイバー』だったからだ。

人間を越えた力を持った人間……。

彼女はなにかがきっかけで、ソレに目覚めた。

「じゃ、いってくるね」

彼女はそう言って、同級生の前から……ショウゴの前から姿を消した。

いつもと変わらない笑顔……。

今と変わらない青空……。

ショウゴは思った。

『きっと、この戦争はすぐに終わり、彼女は無事に帰ってくるだろう』と……。

そう思って、待ち続けた……。

それから、手紙が届いた。

それは、彼女が入隊してから半年後のことだった。

――行方不明。

それに関する内容が、淡々と記されていた。

だがショウゴには、その4文字しか頭に入ってこなかった。

彼女にひそかな恋心を抱いていた、少年の小さな夢。

告白するという、そんな夢さえも叶わなくなった。

彼は絶望した。

死にたくなった。

そして……、能力に目覚めた。




「………」

ショウゴは剣を握った。

刃がボロボロになった、使い古された剣。

目をつむる。

想像する。

自分が強いと思った剣を。

細部に渡るまで、構成する。

「ふぅ……」

目を開ける。

手の中にあったのは、別の形をした剣だった。

刃部が光り輝いている。

ボロボロだった面影はまったくない。

これが彼の能力。

手に持った物体を別の刃物に創造する能力。

ただ、金属や鉄製の物でなければできないらしく、事実、何度も失敗している。

「……ん?」

近くに気配を感じた。

キョロキョロする。

道端で倒れている人が目に入った。

そっと近づく。

外傷は少ない。

だが、気を失っているらしかった。

「ま、見捨てるわけにも……なぁ」

ショウゴは言い訳がましくつぶやきながら、その子をおんぶして寮に引き返した。

耳たぶにイヤリングがついていた。

そのマークから察した。

この子はどうやら、下の世界の人間らしい。

「コイツ……、どうしてこんなところに?」

ショウゴは首を傾げた。




「お前さぁ……、犬やネコならともかくなぁ」

アキはため息をついた。

ショウゴは苦笑いする。

今までにも、動物を拾ってきたことがあった。

今では一部屋に一匹、必ず動物がいるくらいだ。

だがそれだけじゃない。

ショウゴは人もこうやって寮に連れてきたことがある。

こうした優しさは、時に弱みになる。

そのことは、ショウゴも充二分に理解している。

困ったものを見捨てることができないのがこの男なのだ。

「すいません、つい……」

「……とりあえず、こっち寝かせとけ」

アキも、なんだかんだといって甘い。

ショウゴの起こす不祥事を片付けるのはいつもアキだ。

ショウゴは頭を下げてから、背中の子を自分のベッドに寝かせた。

「水でもぶっかけりゃ目ぇ覚ますだろ。

ちょっと待ってな」

「ありがとうございます」

今度なんかおごれよ〜、と言いながら部屋を出た。

その時には、アキさんの好きなお好み焼き屋に連れていこうと思った。

足元で、布が擦れる音がした。

「……んっ」

さっきまで意識を失っていた子が、目を覚ましたのだ。

視界に入ったショウゴを、無表情で見つめる。

ショウゴはとりあえず、笑顔を見せた。

よく見ると、引き攣っている……。

小さい子は突然、ポケットに手を突っ込んだ。

取り出した物は……、

なんてことない、ただのハンドガンだった。

その銃口が、ショウゴに向けられる。

残念ながら、偽物には見えない。

「ちょ……っ!?」

ショウゴは目の前で起こったことをまったく理解できぬまま、部屋を飛び出した。

走りながら考えた。

そして、ある答えが浮かんだ……。

「やっぱ、敵だもんなぁ……」

当然だよな、と言いながら走る。

その間にも何発も弾丸が腕や足に掠る。

地味に痛いと思いながら、必死に逃げる。

そして、訓練所として使われる広場に出た。

「逃げ道はありませんよ?」

その子はショウゴの目の前で初めて声を発した。

透き通るような、カワイイ声……。

いや、そんなことはどうでもいい。

ショウゴは頭を振る。

男か女かも見分けがつかない子供に欲情する自分を悲しく感じながら、ポケットから鉄鉱石を取り出した。

それを剣の形に変える。

お得意の、剣創造能力である。

「ブレイバー……」

小さい子がつぶやく。

ショウゴは斬っ先を向けた。

だがその子はまったくうろたえもせず、目をつむった。

そしてつぶやく。

「来い、スザク」

目を、開けた。

ショウゴは驚いた。

目が、紅くなっているのだ。

充血しているとか、そういうのではない。

あたかも、目は元々紅いものだというかのように……。

ショウゴはすぐに気づいた。

「お前もブレイバーか……」

考えた。

これ以上、アキや他のだれかに迷惑をかけるわけにはいかない。

そう思ったショウゴは、構えをとった。

「また眠っててもらうぜ?」

「それはこちらのセリフです」

二人は睨み合う。

一瞬の静寂が二人を包む。

ふと、ショウゴが気配を感じた。

誰かがこちらを狙っている。

だが、ショウゴには場所を特定することはできない。

「撃つな!!」

叫んだ。

だがその声も虚しく、広場に銃声が響いた。

パァン、と乾いた音。

目の前の子供は、斜め上に向かって銃を構えていた。

銃口から、煙が出ている。

「ぐ…っ!?

うわぁぁぁっ……!!?」

叫び声がしてから、ドシャッと音がした。

振り返る。

遠くになにかある。

人だ。

いや、人だったものだ。

それは……、死体だった。

手にはスナイパーライフル。

「あれ?

肩を撃っただけのはず……。

まぁいいか」

撃った本人は何食わぬ顔で弾を入れ換える。

空の弾倉が足元に落ちる。

そしてショウゴが気づいた。

その子の能力に。

「目が良くなる能力だな!?」

ビシッと指差す。

だが、指差された相手はふるふると首を振る。

「全身の感覚を鋭くする能力です……。

名前は、イーグルアーク」

ということは、聴覚など、他の感覚も鋭くなるということだ。

高台に居た男の肩を、ハンドガンで狙い撃った。

それを命中させた。

常人にできることではない。

しかもかなり距離がある。

それを、平然とやってのけるとは……。

ショウゴは、少し彼女に恐怖した。

「大丈夫か、ショウゴ!?」

アキの声が響く。

少し息が荒い。

全力で走ってきたのだろう。

「なんとか……」

ショウゴは苦笑いで返す。

アキが右腕に意識を集中させる。

彼の能力は、アイアンバッシャー。

体を硬質化する能力だ。

それを見たショウゴは、アキの前に立ちはだかる。

「どけ、ショウゴ!」

アキが叫びながら、歩み寄る。

だがショウゴは、アキの進行を阻む。

「ダメです、アキさん!」

「いいかショウゴ!

お前の気持ちはたしかにわかる。

だが、既に犠牲者が出てるんだぞ!」

「それでも!!

俺は、目の前にいる人を死なせたくない!!」

必死に抵抗をする。

狙われている本人は、無表情でその光景を見つめている。

手には銃。

だが、引き金を引こうとはしない。

「………はぁ、わかったよ」

アキは観念したようにため息をつきながら、能力解除した。

ダイヤモンドのような塊になっていた右腕は、元通りになる。

ショウゴは思わずホッとした。

正直な話、押し切られていれば、ショウゴは敵わなかっただろう。

「なぁ?」

振り返る。

後ろにはあの子供。

「お前、戦争をどう思ってる?」

つぶやいた。

アキは驚いた。

『戦争をしたくない』など、戦時中の今ではご法度だ。

そんなことを言えば、『戦争反対論者』として処罰されるだろう。

「………」

答えない。

当然だ、とアキは思った。

だが、次に吐き出したショウゴの言葉に、アキは血の気が引くのを感じた。

「俺は嫌だ」

その言葉に、さすがに相手も驚いたようだった。

誰に聞かれているかわからないというのに……。

アキはやれやれと頭を振った。

ショウゴはどこか意地になっている。

こうなったショウゴを止められないことは、アキは知っていた。

「お前は、どうなんだ?」

ショウゴは再度、質問する。

相手は、静かに口を開いた。

「好きなわけ、ないじゃないですか……」

それを聞いたショウゴは笑顔になった。

「だったら、ここは一時休戦ってことで手を打ってくれよ」

ショウゴは剣を投げ捨てた。

その手を伸ばす。

「君、名前は?」

「………カケミ」

カケミは、ショウゴの手を取った。

「よろしくな、カケミ!」

ショウゴが微笑む。

カケミは小さく頷いた。


この小説の設定資料のようなものも書いておきますので、そちらもどうぞ。

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