第25話 再びダンジョンへ
ここ数日コメントしつつ配信もたくさん見たので、配信欲も満たすことができた。そしてお金も使ったので、頃合いだ。
ダンジョン第二シーズンの始まり始まり。
「おはようございます!」
「おはようございます、天沼さん。今日も早いですね」
「久しぶりにダンジョン来たので、やる気満々なんですよ、行ってきます!」
受付嬢の海羽さんに挨拶をして、転移門に入る。
「今日は逆走から、だな」
前回のさいたまダンジョンでは、はやく最前線に追いつこうと思って速攻していた。せっかく地元にダンジョンができたのだから、もっとじっくり味わわないと。
ということで、一層からまた探索することにした。
階段を見つけても即降りせずに、あちこち見て回ってから次の階層に行く。
ある意味これが本当の探索開始だ。
「さ、行こう」
一週目――第三階層まで。
二週目――第五階層まで。
三週目――第七階層まで。
四週目――第八階層まで。
四週間かけて、八層の探索までを終えた。
前は二日で十三層まで行ったから、それに比べるととんでもないスピードダウン。だがそれでいい。焦ってもしかたない。
それでも稼ぎをせずに先に進める分、普通よりもずっと早いわけだし。
今日もじっくりことこと九層から探索していこう。
九層は湿地帯の開けたダンジョンだ。
六層の森と同じような、屋外形式のフロアで、水分を多く含んだスポンジのような大地が広がり、濃い霧がかかっていて、沼も多い、モンスター以上に地形が危険な場所だ。
あまり長居したくないが、そういうところにこそいいものがある。体感。多分。
たまにズボッと柔らかい泥に足が埋もれることもありつつ、進んでいると、沼に潜むスプリングゲータと戦っている一人の探索者の姿が霧の中に見えた。
特にやられそうな様子もないので、心の中で応援しつつ先に進むと、今度は沼地に潜むキングマリモー――巨大なマリモ――と戦っているまた別の一人の探索者がいた。お、あれは何度か見たことあるショートカットの配信者。マリモの攻撃を盾で受けつつ、剣でチクチク刺して地道にダメージを与えている。
こっちもやられることはなさそうだ、先に進もう。
この四週間、じっくり探索してる途中に結構な数の探索者を見てきたけれど、やっぱり一人の人が多いな。
また、探索しつつ配信も帰ってから見て、特殊ドロップについて教えたりもしたけど、配信者も一人が多かった。たまーに二人組がいるくらい。
やはり、ダンジョン攻略のセオリーはソロ。
異世界もこちらも同じ仕組みのようだ。
その時、俺の目の前にキングマリモーが現れた。
ぷよんとジャンプして巨体で押しつぶそうとしてくるが、愛用の鋼の剣で一刀両断、二つに分かれたマリモは俺の左右に墜落した。
その後は塵となって消えていくが、同時に、俺の肌にじんわりとした温風がまとわりついた。
これが、ダンジョンで得られる強さの源だ。モンスターを倒すと、その体を形作っていた魔力を自らの力へと転換できる。現代地球風に言えばまあ経験値。
腕力や魔力みたいな基礎能力の他に、スキルオーブで身につけたスキルの熟練度もこの経験値をゲットすることで強化されていく。
なので、ダンジョン探索者は、より深い階層へ挑むためには、浅い階層でモンスターをたくさん倒し、強くならなければならない。それに時間がかかるんだ。
そしてまた、それがソロが多い理由でもある。
複数でモンスターと戦うと、魔力は各々に分散して吸収されるが、分割される時、きっちり半分にはならない。
ビスケットを二つにわろうとすると、どうやったって小さな破片が飛び散ってしまうよね。それと似たような現象で、モンスターの持っていた魔力も分割された時にその何%かは破片となって霧散して無駄になってしまうのだ。
これが非常に厄介で、ビスケットなら荒っぽく割っても無駄になるのは5%もないだろうけど、モンスターの魔力の場合、二人で倒すと一人あたり30%弱しか魔力が入らないと言われている。50%ではなく。
もちろん正確に計測する手段がないので、体感的な比較調査によるものだが、おおよそそんな感じだと異世界では言われていたし、こっちでも変わらないだろう。ちなみに三人だとさらに減って10%ほどになる。
このため、複数人でダンジョンに潜っていると、人数が増えたことによる効率アップ以上の魔力効率低下に見舞われなかなか強くなれず、探索の効率も上がらないので、ほとんどはソロで潜ることになるのだ。
ある意味では気楽。ある意味では孤独。
それが探索者なのである。
それでもひたすら探索を続けるしかない、俺達は……ふっ……。
「あ、でも今日は探索終了」
ギルドの売店を見ようと思ってたんだ、今日は。
閉店ギリギリに行くと売ってる商品をじっくり見れないからな。いつもより早めに帰らないと。
俺はキングマリモーを倒しながら、沼地を引き返しギルドに帰還した。




