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魔王のたぶらかし  作者: 暖炉炬燵
1章 意識に囁く者
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戦闘

遅いな。

知り合いのさっと後、暫く待っていたモリビトのふと思った所感だった。

あるいはすることがないという状況に由来する感覚なのかも知れない。

どちらにせよ。動き回ろうという気分にもなろうものだ。

 扉を開けて外に出ることを告げようとした時だった。

迷った。

そうこの屋敷、どうにも迷路じみているのだ。

階段と1階は確かにあるが、玄関の門はない。確かに地上階から入ったような印象があったんだけど


 まあ、いいか。誰かに聞けばいい。旅人なのだから困る事はない。

たしか。見るからに人の出入りは多かった。

動きを止めている人間は少なかったが


しかし、階段に足をおいて直ぐに来る前よりざわめきが少ない事に気がつく。


 どうしようかな。

やっぱ戻ろうかなと脳裏に思考がよぎったがそのまま踏み出した。

ローリーはどこかに行ったし探聖者もあの子ーーーそういえば名前を聞いていないなーーー必要がなかったともいうが、ともあれ

 誰も彼もが用事があったのだ。

人は大なり小なり群れる生き物だ。知り合いと離れて暇だったともいう。


建物に詳しいわけではないがやけに見通しの悪い踊り場を通って、すぐに人の声が聞こえた。

 人がいる。

世間話のように話し込んでいる。思わず足を止めた。

「あら、困りました。男手がこんな時にいなくなるなんて」

「仕方ないわ。だって、そろそろでしょう。ええ、栄誉の代償よ。むしろ、私達も連れて行ってくれるのかも知れないならむしろ歓迎するべきだわ」

「そうね。何せ」「こらこら、言っちゃダメよ。ああいうことは秘めておくべきだわ」

 声をかけたいのだが、知られちゃいけないことを知られてはかわいそうだろう。

風の精霊の加護の力か。その手の力を行使していなくても耳の方は妙にいいのだ。

 ふと、思いついた。ただ聞くだけだから後ろめたいのだ。

「すみません」

聞くだけよりも何かしらのことはしておくほうがいい。

それに助ける理由はある。なにせ、何かが違えば僕は彼らに手を振っていたのだから

「困っている事、何かありますか」

「あら、あなたは」

「あ、知ってるわ。探聖者様のお連れ様よ」

「ああ、ヴェイ様のお客人。…どういう関係なのかしら」

どういう関係って、そりゃあ?。

 ふと、かんがえてみると思い当たる節がない。

そう。そうだな。あながちに行きすがり、だろうか。

「まあ、いいじゃない。きっと悪い人じゃないわ。それにもっと深い場所にいてもおかしくはないもの」

「この荷物を地下から、通って西の大広間に届けて欲しいの」

「西?」

「ええ、匂いはちょっと厳しいけども地下道を通ればすぐよ」

地下かあ。外の空気が恋しかったのだが

「ええ、まっすぐに道なりにいくだけ。本当は馬を使いたいんだけどね。運び入れるわけにもいかなかったから」

ひょいと荷物を担ぐ。ずっしりと重いそれは細々としたものがまとめられている様だった。

「あ、あら。一気に持つなんて力持ちなのね」

バラバラにするつもりだったらしい。

ーーーー

 地下道と聞いた道はどうにも臭い。

あまり清潔と呼べない湿気とネズミに水の流れ。

単に地下道というよりは下水道と呼ぶべきだろう。

 かつて、古い王がいた時代に整えられた下水の施設だと思うが

有り体に言って臭い。

思わず風の呪文を口ずさんでさっさと避けたほどだった。

あまり長居すると体悪くしそうだ。


 聞いた通り西に向かうと、水道から出て湿ってこそいるものの直ぐにでも地上階に上がれそうな広間にでる。

天井には採光窓のように日が差し込み、目を細めさせる。

どうやら、本来何かの施設というよりは増築で隠れてしまった場所のようだ。

「おおーい。あんた。教会からだろう。荷物をこっちに寄越してくれ」

「分かったよ」

 それにしても賑やかだ。

しかし並べられているのは武器だ。実は金物市か何かなのかも知れないが、どちらかというと物騒だ。

「賑やかだね。人の顔も明るい」

体の大きな男に話しかけ荷物を渡す。

「そう見えるかい。でも、そこの男なんか」

指のない男、耳のない男、そして無傷には見えるが妙な男が3人まとまっている

「連中に一部を落とされてんだぜ。税が払えなかったのと、反社会的活動のツケだがな。つってもこの街には仕事がない。誰にでもできる仕事はな。あるいは表向きは誰にでもできると言いながら好き勝手してるってこともあり得るが」

 ふと、男は顔を振り向き目を合わせる。

「誰にでもできるならいいんじゃないかい」

「そりゃゃどうだろうな。入り込む隙がなく。精神をすり減らすことになるとかな」

 男はじっと顔をみて再度口を開く。

「アンタは、見ない顔だからな。あんまり関わらないほうがいい。きっと、家に。いや、よっぽどこの国に適応できたなら家財道具持って離れてたほうがいいかも知れねえな」

「あいにくと手伝いを頼まれただけの旅人だよ」

「旅費のための仕事かい。確かに人手だけがいるのは俺たちくらいだろう。当然だが、ここで見たことは秘密だ」

「武器を集めているのかい」

男が包みを解くと鉄製の槍、剣。盾に弓矢が現れる。

暗い声で大きな体の男はいう。

「蜂起するためだ。。でも、戦わなければ明日を生きられないのなら仕方がない」

あんたは暫くここにいるこったな。と男は呟く様に言う。

 口を開きかけて、ふとモリビトは思う。

この地域になんの権利があって口出しするのだろう。

それに旅人は旅人で傍観者にすぎない。

男が作業に戻ろうとし、手持ち無沙汰になりかけたときのことだ。


「傾注」

 けたましい音が響き渡った。

現れたのは舟の象徴を掲げた聖職者の下っ端だろうか。

恐らくは聖女教、狭く服飾に指定をつける集団だからか雰囲気が近い。

 書面の羊皮紙を広げ明かりで照らす。

そして文面を読み上げた。

「きけ者共よ。本日、ついさっきのことだ。忌々しいふんぞり帰った豚どもが、我らの食糧庫を燃やした。聞くにほざくは反乱の疑いありというのだ」

 声が上がる。不安の声だろうか。

武器を集めていると言っても市民にすぎないのだろう。

「静まるがいい。君達は思っているだろう。このまま、武器の準備などしていることがわかっていて、戦いに臨んでいいのかと、だが考えてもみたまえ」

市民の声は静まらない。だが、それでいて声を張り上げる声は続く。

「事実、明日の食はどうなる。我らに退路はない。今更、武器を放棄し、巧妙に隠し叶ったとして奴らは我らをどう扱う?いかにも、更に苛烈を極めるであろう。できぬならば尚更だ」

 そして決定的な一声を宣言した。

「我らは今より神の御名の基に戦いを挑む。恐れず武器をとれ、自棄ではない。基より戦うために我らは集ったのだ!」


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