冒頭
「はあ、はあ、はあ、これからどうすれば」
赤い光が夜闇を捌く。
けたましい音が鳴る。
あんな事になるとは
一体なぜだ?
アレがダメな事は自分でもわかる。
アイツだ。
なぜ、あの女もだ。わかっていたらやらなかった。
暑い。いや熱いのだ。
「ひっ」
車の音に転ぶ。
まだ生き残っているパトカーだったかもしれない。
見つかった?いいや、闇に紛れて見えなかったかもしれない。
見つかりたく無い。
そう思うと、恐怖のまま、這いずり回わって進んでいく。
無様にバタバタと
なぜ?立った方が速いよ。
いつもだ。世の中はいつも恐怖を強いる。
「はっは、はあ、っはあ」
壊れたような呼吸が詰まる。
明るい?。なぜだ?
なぜだ。
何かの屋台があった。
屋台といっても店主が顔を出しているものではなく、仮設テントを活用した幕の降りた屋台だった。
「どうぞ。お客さん」
声が聞こえる。
…逃げよう。
鈍い頭が一瞬で回らない。
「まさか。逃げる理由はありませんよね?」
どろりと脳に言葉が書き込まれる。
そうだ。私は悪い事をしていない。だから逃げる必要はない。
いや、どうやって逃げる。
「では、お入りください」
まだ迷ったが、堂々と、少なくともそう意識してテントを潜った。
「ようこそ」
声は…真横から聞こえた。
あ、
「ハトバさ…」
女神様だ。
一言言った途端。膝をつかされた。
なんだか、煤の匂いがした。
ダァンダァン、バン




