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愛してた人

「達也くん…私たち別れましょう」

「…わかった。」

三日前のことだ。

駅前はクリスマス当日ということもあり人で溢れていた。

今日彼女である二宮紫乃との交際一年目を祝うため待っているのだが…

「あ!達也くん!待った?」

「ううん。ちょうどきたとこ」

「よかった〜…それじゃあ今日はよろしくお願いします」

「うん。今日は楽しませるから覚悟しててよね?」

なんてことない挨拶。これから起きることなんて予想できる訳がなかったんだ…

「そいうえば前園さん別れちゃったらしいね〜」

「あぁ…前園さんって確か二つ上の先輩と付き合ってたんだっけ?」

「そうそう…まぁ?私たちとは関係ないことだけどねー」

他愛もない会話を続けて徒歩10分。今日の目当てのお店の前に着いていた。

「へぇ…ちょっと高かったんじゃないの?」

「紫乃はこれぐらいのお店じゃないと舌が合わないだろ?」

「じゃあ今日はご馳走になっちゃいます」

「今日はってかいつもだろ…」

そう。紫乃はいいとこのお嬢様だ正直自分と分不相応なのは自覚しているため今でもなぜ付き合えたかは分からないぐらいだ。

そんな紫乃の舌に合うように学生でも入りやすいが、ちょっとだけお高めの店を選んでみたんだが…

「ん〜〜!!これすごく美味しいね!!!」

どうやらお口に召したようだ。ひとまずは安心できそうだな

そうこうしてデザートが運ばれてくる

「え…これって…」

「今日付き合って一周年ってことを予約する時に話したら用意してくれたんだ」

皿に書かれたお祝いの言葉に驚いているようだった。

「そっか…私達もう一年も経つんだね」

幸せそうな紫乃の顔を見るだけで俺は満たされた気分になれた

「いやー今日は楽しかったよ!あそこのお店は全体的にレベルが高いね!」

「楽しんでくれたなら用意した甲斐があったな」

「今日はここまででいいよ、達也も家遠いでしょ」

そんな事気にしなくていいのにと思ってしまうが俺のことを案じてくれているのだから悪い気はしない。

「そうか…じゃあ次会うのは初詣の時かな?」

「…そうだね。楽しみにしてるよ」

少し浮かない顔をしてみたのは俺の思い過ごしだろうか?

だがここで聞くのも気が引けたので俺は幸せな気持ちが抜けないように家に帰った

そう。ここまでは幸せだった

寝る前はいつも通話してから寝るようにしていたので、電話をかけようとスマホを手に取ると一件だけメッセージが送られていた。

「急にごめんなさい達也。どうしても明日会えない?」

急にどうしたのだろうか紫乃はあまり人にお願いをするタイプではないので、並々ならぬものを感じるが…

「予定もないから大丈夫だよ。また駅前でもいいかな?それても迎えに行こうか?」

すぐに返信がきた

「うん。ありがとう…明日の6時駅前集合でお願い」

確認した後普段行かないようなお店に行った疲れからか、俺は眠りに落ちてしまった…


冬休みといえど俺はいつもどおり5時半に起きる。

それからは軽く身なりを整えてからはランニングにでかけ朝食を済ませてからジムに向かった。

「よぉ!達也じゃねぇか!今日も鍛えってか?」

ジムに着くなり声をかけてきたのは大柄な男

彼の名前は水瀬洋大。高校に入ってできた数少ない友人だ、中学時代は荒れていたと聞くが…定かじゃない

彼とは同じジムに通っており同級生でもあるため必然的に会話する機会が増えていって、気づいたら仲良くなっていた。

「久しぶり洋大もちろん冬休みだからって手は抜かないさ」

「いいねぇ…それでこそ達也だぜ」

「っていっても今日は軽めだけどな」

「どうせあれだろ?紫乃とのデートまで暇だったからジムに顔を出した感じだろ?」

「まぁそんなところだな」

それから俺たちはジムでトレーニングした後に洋大はまだ残るというので俺だけ帰路に着いた。

家に帰りシャワーを浴びて今日着る服を考えてたりしていれば気づけば待ち合わせの6時まで30分というとこだった。

「そろそろ行くか…」

集合場所には紫乃が先に着いていたようだ

「ごめん紫乃遅くなった」

「え?あ、ううん!別に大丈夫…」

…なにか様子がおかしい別に気にするほどでもないと思うが…

「えっとそれで?今日はどうして会いたくなったんだ?俺としては嬉しい限りだが…」

「とりあえずそこのカフェにでも入らない?寒いし」

それもそうだと思いいつものカフェに入ることにした

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「あ、私はカフェラテで」

「俺も同じものを」

店員がいなくなったタイミングで聞いてみることにした

「どうしたんだ?今日なんか変だぞ?会いたい理由と関係があるんじゃないのか?」

「……」

ほんとにどうしたんだろうか…

届いたカフェラテを飲み終えてからやっと紫乃は口を開いた

「私…ね…気づいたんだよ…」

なにか嫌な予感がする。それこそ聞いてしまったらもう後戻りはできないような俺の人生を変えてしまうような予感がしてやまない

「達也くん私達別れましょ」

は?俺は発せられた言葉の意味がわからずにいた。初めての経験だ頭が真っ白になって何も考えられない冬だというのに嫌なほどひどく冷たくじとっとした汗が出てやまない

「もう私達の関係はこれで終わりにしましょう。言いたいことは山ほどあるけど、一つだけ言えるとしたらあなたじゃ私に釣り合わないのよ」

「あなたは私に相応しくない。悔しい?何も言い返さないの?そんなんだから振られんだよ!バカ!」

何を言われても俺にはもう思考することができなかった

「それじゃあ最初に言った通り、達也くん私達別れましょう」

な、なにか言わなきゃ必死で頭を動かした

だがここでなぜその言葉を選んだかはわからないが、きっと本能で選んでしまったのか…俺は一生後悔することになる最悪の返事をしてしまった

「…わかった別れよう」

返事を聞き満足したのか紫乃は料金だけ置いて帰ってしまった。俺は紫乃を追いかけるように店を飛び出たが…もう時間が経ってしまっていた少なくとも紫乃の足跡だろうとのが半分以上雪に埋もれていたのだから

俺はあまりにも惨めだ、彼女…いいや今はもうその名で呼ぶべきではないな、これかは出会う前と同じ二宮と呼ぼう。そして二宮の言う通り俺は言い返せなかった。努力しているとはいえ心のどこか深いところでは薄々わかっていたんだと思う、自分が釣り合わない事も、振られる可能性があったことも。気づいていたのにどうもしなかった俺が醜くて、惨めで、悲しすぎて気づけば泣いたまま帰っていた。

「今日は家に誰もいないんだっけ…」

家には普段俺と姉。それと一つ下の妹しかいない

親は三年前事故で二人とも死んでしまったからだ、だが幸いな事に両親は蓄えは多く残しておいてくれたらしく人並み以上の生活を送らしてもらっている。

こんな辛い時は誰でもいいから相談に乗って欲しかった。落ち込んでいるからか今だけはこの世にいない両親を思いながら重くなった足取りで家に着くと

なぜか美少女が待っていた。しかもその美少女に俺は覚えがある、なぜならその少女は隣のクラスのマドンナ椎名理佐。なにを隠そう二宮紫乃の親友だ。



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