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 ハイル子爵家のお茶会へ招待されたのは、あの発表から三ヶ月後の夏の盛り。

 シェリーとカイの幼馴染兼専属侍女のメグも、同じ時期に出産するとの事で顔合わせも兼ねている。

 と、招待状に記載されていた。


「メグ、もう良いからこちらに腰を掛けて!セシル後のことはお願い出来るかしら?」

「もちろんでございます、奥様!メグさんにも無理はダメだと伝えているのですが、私の言う事は聞いてくださらなくて」


 ここは主従関係が低い。

 下手をすると主人を蔑ろにする者も出てくるだろう。が、さすが専属侍女。

 立場をちゃんとわきまえている。

 わかりやすく言えばオンとオフの使い分けが出来ているのだ。


「今日は私とメグさんの顔合わせと伺っております。同じ初子を出産する者同士、お友達になれると嬉しいですわ」

「!とんでも無い事でございます!私の様な者と伯爵夫人とでは、本来こうして同じ席に着くことすら許される事ではなく・・」


 きっとシェリーに無理矢理連れて来られたのだろう。

 侍女としてでは無く、招待客として同席する様に!と。

 キチンと立場をわきまえられる人。

 それは侍女として当たり前なのだが、時々勘違いして主人の上に行こうとする者もいる。

 でも彼女は違う。

 サルーン国での彼女のシェリーに対する想い、行動を聞いた時にとても羨ましく思った。


 私もこの人たちの仲間にして欲しい。


 心からそう思えたのはきっと、私にも守る者が出来たからなのでしょう。


「メグさん、サルーン国での事聞きましたわ。本当にシェリーを守ってくれてありがとう。しかも、お腹にお子がいたのに・・」


 私は軽く頭を下げた。

 それを見たシェリーもメグさんも驚き過ぎて、椅子を倒す勢いで立ち上がる。


「エルお姉さま、頭を上げてください!」

「そうです夫人。私の様な者に頭を下げるのは。それにシェリーいえ、奥様は私にとって主人であり妹なんです!守るのは当たり前で・・」


 一生懸命に話すメグさんの手を取る。


「それでも簡単に出来る事では有りませんわ。でも、これからはご自身の身体を一番に考えてくださいね」


 シェリーの後ろでセシルと言われたメイドが頷いている。

 

「おや?伯爵夫人にまだお茶をお出ししていないのかい?」

「お父様!それにルーお兄さまとカイも!」


 声に振り向くと会長とルー、カイも一緒にいた。

 どうやら話は終わったらしい。


 セシルと我が家のメイドが椅子を運んで来て、ここで皆んなでお茶をする事になった。


 暖かい場所だなぁと感じた。


 こんな場所で子育てが出来たら楽しいだろうなぁ


 そう思っていたら耳元でルーが、


「僕たちも頑張ってこんな場所を作ろうね」


 と言ってくれた。

 大丈夫!きっと作れるわ。

 私たちならきっと・・





   一年後


「ギルの様子はどうでした?緊張していたでしょう?」

「ああ、ガチガチに固まっていたのをカイにいじられていたよ」


 想像すると笑えてくる。

 そんな私にルーは口付けをして、私の腕で眠っている息子を受け取った。


「シェリーが新婦さんの所にいるから、エルも行っておいで。まだ挨拶してないでしょ?」

「ありがとうルー。ジャックの事お願いね。」


 つい先程まで泣いていた息子はやっと寝付いてくれた。

 人が多い所に連れ出したのが初めてなので、興奮してしまった様だ。


 息子が産まれた事でクーカス家も変わったと思う。

侍従も侍女も常に息子を気にかけ、そして笑顔がとても増えた。

 シェリーも積極的にメグとメグの子を連れて来てくれる。

 更に笑顔が増える。


「こんな日が来るなんて、思えなかった。」

「何か言った?」


 ルーは息子の背中を優しくトントン と叩いている。

 夫のこんな姿も大好きで・・


「ルー、愛してるわ。私本当にルーと結婚して良かった!」

「?・・」


 ルーは一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに


「こんな僕を選んでくれた君に心からの感謝と、愛を捧げます」


 ルーに抱きつくとジャックが目を覚ましてしまう。

その全てが愛おしい。


 私の心を掴んだのは、病弱だった次期伯爵様の夫でした!



これにて完結です。


読んで頂きありがとうございました。


そして誤字報告もありがとうございました!


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