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あの日も今日みたいに暖かい日だったわね。
王宮から招待状が届いてから10日後。
私は一人指定された部屋へ、一人の侍女に案内されていた。
扉が開かれ中へ入るとそこには、私以外にも招待された令嬢が二名いた。
一人はヘンダー公爵令嬢のフランソワ様
もう一人はプレリュー伯爵令嬢マネット様
私は指定された席に腰掛けると直に、王妃様が共を連れて入って来た。
三人は一斉に立ち上がり淑女の礼を取る。
王妃様から声が掛かるまで顔を上げてはいけない。
「お座りなさい」
声がかかり、やっと座る事が許される。
淑女の礼は簡単そうに見えて実はなかなかにキツイ姿勢なのだ!
私たちが椅子へ座ると侍女達がお茶の準備を始める。その間口を開いてもいけない。
準備が終わると一人の侍女を残し全員部屋から退室して行った。
「今日呼ばれた理由は、分かるかしら?」
王妃様は声をかけた後カップを口に運んだ。
お茶が美味しかったのか、侍女に微笑んでいる。
「妃・・教育でしょうか?」
フランソワ様が口を開いた。
王妃様は静かにカップを置くと、一人一人の顔を見た。
「先日のパーティーの意図は、お気付きになって?」
三人とも静かに顔を縦に振る。
「話が早くて助かるわ。貴女達の中からジェネヴェクトの妃を選びたいと思うの。詳しい話は侍女長から聞いて頂戴」
王妃様はそう言うと席を立つ。
私たちも同じように立ち上がり、礼を持って見送る。
お茶を淹れてくれた侍女が
「こちらへおいでください。侍女長様の元へご案内致します」
家格の順に着いて行き、侍女長室のソファーに座って待つように言われた。
正直私は妃には興味もなく、この二人のどちらかに決めて欲しいと思っていた。
するとプレリュー伯爵令嬢が口を開いた。
「私、家族から期待されて来ました。お二人は高位貴族ですが私の伯爵家も負けてはいないと思います」
「ええ、存じ上げておりますわ。二代前の御領主様が戦争で功績を挙げたと」
「その縁で確か当時の王妃様の従姉妹様が嫁がれたと・・」
従姉妹だったか、また従姉妹だったか・・
私が考えている間にフランソワ様とマネット様が話続けた。
四半刻程待つと侍女長が部屋へと入って来た。
私たちは立ち上がり軽い礼をとると座るよう指示を受ける。
「今日から三ヶ月間、毎日こちらへおいでください。
各家でマナーを受けられていると思いますが、王家に入ればそのマナーは無意味です。
三ヶ月で王家のマナーを身に付けて頂きます。
三ヶ月後に王家主催のパーティーがありますから、
そこで成果を見せて頂きます!しっかり励んでくださいませ」
その後のパーティーで私たち三人は正式に第一王子殿下の、妃候補となり厳しい教育を受けることになった。
それから数年が過ぎ、
当時11歳だった私は、気付けば18歳になっていた。