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カイとギルの兄、ペルージャとエルディアナのお話です。
「僕の事は気にしないで。君もあの輪に入る為に今日ここに来たのだから」
ガーデンパーティーの会場から少し離れた木陰で、肩で息をしている一人の令息に声を掛けた。
先程まで王太子の側にいたこの令息は確か・・
「苦しんでいる人をそのままに出来るほど私、腐った人間ではありませんのよ?クーカス様」
彼は一瞬驚いた顔をしたが、安心したのか?そのまま眠りについてしまった。
私は彼が眠りについたのを確認し近くを通り掛かったメイドに声をかける。
その後メイドに呼ばれたフットマンの手に寄って運ばれて行った。
私は運ばれて行く彼を、ただ黙って見送った。
青白い顔をし、痩せ細った男の子。
将来私の夫となるベルージャ・クーカス伯爵令息
との、初めての顔合わせだった。
ペルージャ・クーカス 10歳
エルディアナ・フォッド 11歳
この日は
第一王子ジェネヴェクト殿下 12歳
第二王子ファンレット殿下 10歳
の側近、妃候補を見定める為に開かれたガーデンパーティーだった。
国内の高位貴族である公爵家、侯爵家、伯爵家の年頃の子息令嬢が集められた。
高位貴族である我が家からは私と妹の、クラリスが出席をした。
兄のオーウェンは父の後継としてすでに領地経営を学んでおり、今年の春から学園へ入る予定となっている。
兄の婚約者であるサーラ・スライト伯爵令嬢とは親同士の事業提携の為の政略だが、同い年で趣味も同じだった事もあり仲はとても良い。
そしてサーラ様も兄と一緒に春から学園へ入る。
クーカス様を見送り、いつまでも隠れていても仕方が無いので一人会場へと戻ると
「お姉様!いったいどちらに行かれてたの?わたし、探したんだから!」
私の姿を見つけた妹のクラリスがかけて来る。
「ごめんなさい。あちらで倒れてる人を見かけたから・・人を呼んでいたの」
ウソでは無い。だが自分を置いて何処かに行った私を許せなかったのか、プリプリ怒っている。
「それよりもお姉様良いのですか?ジェネヴェクト殿下の周りはすでに人の山が出来ていますわ!」
私は言われた方をチラッと見た。
クラリスの言うように人の山が出来ていて、殿下の姿は見えなかった。
一方ファンレット殿下の方は臣下狙いの子息達が多かった。
「クラリスは良いの?ファンレット殿下の所に行かなくて」
「私は先程ちゃんと挨拶したから良いの!あまりベッタリし過ぎると嫌になる!って言ってたから」
「誰が?」
「カールよ」
カールは隣の領地の息子で時々兄に会いに来る。
カール・カッセル子爵令息は兄より一つ下の嫡男だ。
子爵家も我が家と農業の方で提携を結んでおり、領地経営を学ぶ為に三日に一度我が屋敷へと足を運んでいる。
年頃的には私と縁を結ばせようとしていたが、今回の王宮からの招待で親の気が変わったらしい。
もちろんカールも出席しており、今はファンレット殿下と会話を楽しんでいるようだ。
「カールは多分・・」
「お姉様何かおっしゃった?」
「いいえ・・」
まぁまだ私たちは子供だから、先の事は深く考えるのはやめましょう。
結局私はジェネヴェクト殿下に話しかける事なく屋敷へと帰った。
ガーデンパーティーから三日後。
我が家へ王宮から王太子妃候補として、私宛に招待状が届いた。
前作ではあまり出番の無かった二人。
前作では王太子と一緒にサルーン国へ行く予定が、なぜ行かなかったのか?の理由も書くつもりです。
長くなる予定では無いので、今回もお付き合いお願いします。