ライバル
玉座に際しても、シェスターはその力を存分に発揮して、敵の攻撃を防ぎ切りシエラベールを降伏せしめる。そんなシェスターに淡い恋心を抱くセイラはシェスターに会いに行く。シェスターの心の底にセイラの母であるメルティアへの愛情が残っている事を知る。セイラは母メルティアからシェスターの心を奪い返す事を心に誓うのだった。
セイラとシェスターは玉座の間の扉を開ける。
同時に中に配置された10機の重戦車から聖槍が一斉に発射され、二人に迫る。
避けるスペースがない。
「きゃっ!」セイラが目を瞑りうずくまる。
瞬間に玉座の間の空気が凍り付く。
10本の聖槍が一瞬にして凍り付き、崩れて消える。
「フロスト・ノヴァ・・・」
聖槍を全て破壊すると、シェスターが冷ややかな微笑みを浮かべて玉座の間の王道を歩き出す。
「シェスター?」心配そうにセイラが抱きかかえられている。
「殿下、大丈夫ですよ。貴女には指一本ふれさせませんから。」セイラは、シェスターの優しい笑顔にドキッとしてしまう。
フランジアに居た頃は守られた経験より、守った事しか無かったセイラは思わずシェスターにぎゅっと抱きつく。
『本当にこの人のそばにとずっと居られるなら・・・』と淡く幼い恋心が芽生えはじめていた。
圧倒的な力を見せつけ玉座の前に立ち選択を促す。
「こちらはアンブロシア第二皇女セイラ様である。私は、アンブロシアの筆頭賢者であるシェスターと申します。もう分かっている筈ですが、抵抗は無駄です。降伏して下さい。」
圧倒的な力の差を見せつけられ、シエラベール王、ラウダ将軍とも頷くしかなかった。
その日セイラとシェスターは、疲れているセイラを気遣って一旦レドナに戻る事にした。
セイラは今回の戦闘でシェスターにかなり好意を抱いており、シェスターの居室を訪れていた。
「コンコン・・・」小さなノックがシェスターの部屋に響く。
ラフな装いのシェスターがドアを開ける。
見下ろすと可愛らしい少女が佇んでいる。
「殿下、どうされましたか?寒いので取り敢えず中にお入り下さい。」シェスターは、セイラを招き入れた。
「あの・・・今日は危ない所ありがとう・・・」
「いえいえ、殿下の役に立てて光栄です。」
「あっ・・・あのですね?セイラと呼んで下さい。」
「では、セイラ殿下。」不満げである。
「セイラ・・・呼び捨てで・・・」
「あはっ、そうですか・・・それでは・・・セイラ?どうかされましたか?」
「シェスターは・・・私の許嫁なのですよね?」
「あー、その件ならそんなに真剣に考えなくてもいいんですよ。私みたいな歳の離れた男なんて気にしないで下さい。」
「私じゃダメですか?」セイラは少し泣きそうになりながら問い返す。
「そんな事はありませんよ。セイラはメルに似てとても可愛いし、目は少し垂れ目でメルの小さい頃よりも可愛い感じかな。将来の相手は選び放題さぁ。」
「じゃ、私で決まりでいいよね!」顔を薄桃色に染めて、必死に纏わりつく。
「ありがとう御座います。光栄ですが、まずはもっと色々な男性をみてからでも遅くは無いですよ。私は最後に貴女が選んでくれたなら、そのとき貴女の気持ちを受け入れたいと思います。」
「なんで・・・なんでそんな事言うの?私こんなに・・・想ってるのに・・・」泣きべそをかいている。
「あははは、本当にありがとう。大丈夫ですよ!ずっと待っていますから。ほかの女性に目移りなんかしません。だって、メルが身を削って僕の為に君と言う宝物を残してくれたんだから・・・」
「メルって?メルティア母様?・・・」
「少し長くなるけどお話しようか・・・僕はね、メルと小さい頃からずっといっしょだったんだ。メルはお姫様で僕は専属の側付きで、、、ある日、メルが壊されてしまって、それからはずっと一緒にいる約束をしたんだ。メルは僕を愛してくれて、僕も心から愛していたんだ。でも僕はメルを最後まで護ってあげられなかった。それなのに、メルは貴女のような素敵な女の子を僕の為に残していってくれたんだ。だから、セイラは僕の宝物なんだ。絶対に幸せになってもらわなけりゃ困るんだ。」
「・・・シェスターは、今もメルティア母様を愛しているのね。私負けない。ねぇシェスターの事、これからはシェスって呼ぶね!」セイラのライバルが母になった瞬間であった。
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