孤高の姫
アンブロシアは精鋭の戦士たちをかき集めてドナ鬼神国に侵攻した。今回は準備が十分であったため、危険らしい危険もなくアンブロシア軍勢は進んでいく。セイラも善戦し功績を挙げ、仲間も彼女に目を引かれる中、戦いでひときわ輝いていたのはルーナだった。それを見ている仲間は誰もいなかったのだ。
アンブロシアの精鋭達はドナの国境線から侵入して半日以上経つ。セイラ達が襲撃を受けた町までは暫くかかる距離である。
「ラーズ兄様?先に偵察お願いします。」セイラは転移魔法の使えるラーズに依頼する。
「かしこまりました。」言葉を崩さない。
「兄様は如何してそんな慇懃な喋り方するの?やめてよ!」セイラは当然の様に怒って見せる。
「いえ、私と貴女では立場が違い過ぎますので。」転移して消えてしまう。
「セイラには悪いけどラーズは犯罪人だからね。」シェスターは静かにセイラをたしなめる。
夜になり野営の準備を始めているがラーズが帰ってこない。
「ラーズ兄様大丈夫かしら・・・」セイラは心配しきりである。
突然周囲が騒がしくなりテントから外にでて見ると、例の大男達が攻めて来ている。
「あの役立たずが・・・」シェスターが唇を噛む。戦闘開始である。
ただ今回は前回とは違い、準備があるのだ。セイラは物理的な切れ味を強化した双剣を使っており、全くダメージを与えられなかった前回の状況とは違うのだ。
「ガキッ ギギャッ」相変わらず衝撃は大きいが受け流しつつ反撃出来る。
「シュイン フィン」二人の大男を切り伏せた。
シェスターも数人の大男に囲まれてもものともしない。少しずつ攻め込んで行く。今回は何とか相手ができそうだ。
「シュバッ オン シュアン」剣が交わされる音が全くせず、ただあいてを切り倒して行く音だけが響く。
大男の大群がみるみる倒されて行く壮観な景色の中にルーナが居る。危なげもなく、まるで舞うように敵を倒して行く。
ただ、多くの仲間に護られて戦うセイラと大きく違うのはその周りには誰もいないと言う事だ。そう、許嫁のシーベルでさえもそこにはいなかった。
半日も戦っただろうか?ようやく終わりが見え始める。最後の1人をマリベルが倒すと周囲を見渡す。
皆んなセイラとシェスターの所に集まってきた。
「セイラ殿下大丈夫ですか?少し驚いてしまって側に付いてられなくてすみません。」マリベルが声をかけてくる。
一方で一見冷ややかな微笑みを浮かべてセイラ達に視線を送るのはルーナである。
ルーナは切なそうに小さなため息をつくと、ゆっくりとセイラ達の居る所にゆっくりと歩いていった。
この時から少しずつなにかがすれ違い始めていた事に誰も気付けなかった。
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