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【書籍化&コミカライズ決定】最弱聖女でしたが「死神」になって全キルします  作者: 蒼月海里
8章 アリスの正体と死神の目的
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49 最弱聖女、怨敵と再会す

「皇女……? 何を言っている……?」

「あなたの父親は国王様なのです。国王様と、学者であったマチルダ様との子です。しかし、民衆に公表する前に、あなたが災いを齎すという神託が下り、母娘ともに密かに処刑せざるを得なかった……!」

「な、何を言っているんですか、シャンテル卿! あなたが言わんとしていることが全くわからない! 私が国王様の娘? 忌み子であり処分されるはずだった話は大司教から聞きましたが、誰かが逃がしたのではないかという話に――」

「それが私です」

 アルベールは力強くそう言った。


「当時、王子だった王の命令により、私があなたたちを逃がしたのです」

「あなたが……我々を……」

「アリス様……! 国王様はマチルダ様の訃報を知った時には嘆き、あなたの無事を祈っておりました。指名手配したのも、あなたが王都に近づかぬようにするためです。手配書の配布はマーメイドヘイブンまでとし、スタティオ以降には配布せぬよう密かに命じていたのです。人相書きを似せなかったのも、国王様の配慮ゆえでした」

 アリスが王都に近づけば、アリスを恐れる勢力がアリスを排除しようとするだろう。国王は、彼らからアリスを守りたかったという。

「あなたを排除したいのは、神託を得た大聖堂です。しかし、手を下すのは聖騎士団の役目。国王様と秘密を共有している私が、聖騎士団の手があなたに及ばぬよう、密かに誘導しようとしていたのです」

「そんな……」

 眩暈を感じたアリスは倒れそうになる。そんな彼女を、ユーロンが力強く支えた。


 突然のことで呑み込み切れない。

 自分が国王の娘であり、自分と母親を逃がしたのは聖騎士団の団長で、それは国王の意思であったこと。そして、国王はアリスの身を守るために、王都から退けようとしていたこと。

「……シャンテル卿、国王に会うことはできるか……」

「それが……」

 アルベールは目を伏せる。

 彼は見ていたのだ。国王が塩の柱にされるところを。

「会わせてくれ! 彼が父だというのなら、彼の口から直接話を聞きたい! そして、この惨状の説明を――」


「そいつは無理な話だ、重罪人よ」

 第三者の声が割り込む。

 聞き覚えのある声だ。

「お前は……!」

 静かになった王都の街角に、馬の蹄が響く。

 馬に乗って一同を見下ろしながら現れたのは、鋼鉄の片腕を持つ聖騎士であった。ピンと跳ね上がった髭と神経質そうな顔つきには、見覚えがある。


「スペンサー卿!」

「覚えていてくれて光栄だ。忌まわしき聖女アリス」

 それは、北の森の村で断罪したはずの分隊長スペンサーであった。アリスが即死魔法で処した腕は再起不能になったのだろう。切り落として、鋼鉄の義腕にしたのか。

「クソ騎士……!」

 因縁の相手を前に、ジギタリスの髪がぶわっと逆立つ。

「なるほどな。作り物の腕っていうのは、お前さんかい」

 ユーロンもまた、柳葉刀を抜く。

「エミリオを攫ったのは知ってるぜ。どこへやった?」

「ふん。あの小汚い混血児のことか」

「余計なことは言わなくていい」

 ユーロンがぴしゃりと言うと、スペンサーは口を噤んだ。


 デウスの影響で力が半減しているとはいえ、ユーロンが内包する気迫は衰えていない。心の弱いものは、彼の鋭い双眸から漂う殺気だけで逃げ出してしまうだろう。

「あのガキは異端として処分するつもりだったが、大司教様が必要だとおっしゃってね。一体、何に使うやら」

「ガブリエラ殿の命令……だと?」

 アルベールの目に恐怖が宿る。

 アリスは、それを見逃さなかった。

「どうした……? 彼女が何をしようか、知っているのか……?」

 アルベールは首を横に振りつつ、アリスに縋るように訴える。

「わからない……。デウス神を『完成』させようとしていること以外は……。だが、あなたたちに教えなくてはならないことがある!」

「な、なんだ?」

 完成という単語が気になったが、アリスはまず、アルベールの訴えに耳を貸す。

「ガブリエラ殿は人間ではない! 彼女はデウス神のように純白の翼を持つ天人の――」


 アルベールの言葉は、そこで途切れた。

 何か圧倒的な力がアルベールの鎧を貫き、肩を焼いたのだ。

「ぐああっ!」

「シャンテル卿!」

 肩を押さえて悶絶するアルベール。アリスが彼の手をやんわりと離させると、鎧には大穴が開いていた。

 焦げ付いた臭いが鼻を掠める。

エミリオを攫ったのは、かつて魔女の村を埋めようとしたスペンサー卿だった。

再びアリスたちの目の前に現れた彼は、どうやらただならぬ力が……!?

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