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【書籍化&コミカライズ決定】最弱聖女でしたが「死神」になって全キルします  作者: 蒼月海里
2章 冒険者ギルドと新たな仲間と初仕事
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13 最弱聖女、善き仲間を得る

 その後、マリアンヌとポチを捕らえ、冒険者ギルドに引き渡した。


 アリスとラルフの報告を聞き、ギルドは二人の証言をもとに調査したのち、適切に処理すると答えた。

 一方、依頼はゴブリン騒動の解決だったので、主犯を捕らえたことと、近隣に住むゴブリンに敵意がないということが相俟って、依頼達成という判断になって報酬が支払われた。


 ゴブリンの子どもたちは二人によって解放され、ゴブリンの巣へと送られた。

 彼らは怪我をしていたり病気になったりしていたが、アリスが奇跡を行使することで健康な身体を取り戻した。

 ホフゴブリンはアリスとラルフにぺこりと頭を下げ、他のゴブリンもまた、彼らが集めたであろう食糧や、見目がいい鉱石を二人にプレゼントしてくれた。



「なんか……不思議な気分だ」

 ゴブリンからもらった、ちょっと歪だが透明度が高い水晶を眺めながらラルフが言った。

「どうしてだ?」

 町へ続く街道を歩きながら、アリスは問う。


「ゴブリンは人間を襲うし、冒険者が駆除するものだと思ってたからさ。助けるのは初めてだし、感謝されるとは思わなかったっていうか……」

「人間もまた人を害する。だが、人間を駆除しないだろう?」

「そりゃそうだ。みんながみんな、そういう連中じゃないし」

 ラルフはそう答えて、ハッとした。彼の気付きに、アリスは微笑む。

「ゴブリンだって、人を襲わない連中がいる。そういう奴らは倒さなくていいんだ。要は、相手の心がけ次第ということだな。そこに、種族は関係ない」

「ははっ、流石は元聖女様。説教が上手いな……」

 完敗だ、とラルフは肩を竦める。


「最初は、アリスが元聖女様だということをちょっとだけ疑っていたんだ。なんでこんなところに、って思ってたから」

「それはそうだ。君の疑念は尤もだ」

「で、でも!」

 ラルフは勢い任せに、アリスの手を取る。

「今は信じてる。ゴブリン相手に冷静な判断を下せた聡明さ、ゴブリンの子どもたちを癒す慈悲深さ。あれを見たら、聖女様だということを疑いようがない!」

「元、だがな」

 アリスは、やんわりとラルフの手を解いた。


「……マリアンヌに使った魔法。あれと何か、関係があるのか?」

 あんなもの見たことがない、とラルフは頭を振る。彼の真っ直ぐな瞳に、畏怖が見え隠れしていた。

「……君には世話になった。事情を、説明した方がいいかもしれないな」

「あ、ああ」

 他言にしないことを条件に、道すがら、アリスはラルフに事情を語る。



 盗賊団が村を襲おうとしたこと、あるきっかけがあって即死魔法を会得したこと。そして、即死魔法で盗賊団を全滅させ、自分は教会を去ったこと。

 死神との出会いや時間の巻き戻しのことは、伏せておいた。アリスにもそれらの正体が全くわからなかったので、説明のしようがなかったのだ。


「即死魔法……。確かに、マリアンヌの鼻を一瞬で完膚なきまでに再起不能――つまり、即死させた。あれが普通の魔法ではないことくらい、フェンサーの俺でもわかる……」

「私は、奪われる者を守るために、奪う者を処す。この力は、そのために使いたいと思っている」

 アリスは自分の手のひらを見つめる。今や、すっかり汚れてしまったその手を。


「すごいな、アリスは……」

「ん?」

 ラルフの目には、やはり畏怖が滲んでいた。

 しかしそれよりも、尊敬のまなざしの方が強かった。


「そんな強い力を手にしたら、マリアンヌやポチみたいになってもおかしくないのに。それでも、アリスは力が弱い人たち――いいや、人だけじゃなくて、魔物すらも救おうとしている……!」

「ラルフ……」

「元じゃない。君は真の聖女様だよ。君の高潔さは、卑しい連中の返り血で汚れても尚輝き続けるはずだ。俺はそんな君の手助けをしたい。君の旅に、同行してもいいか?」

 日は傾き、夜になろうとしている空の下で、ラルフの瞳は星々よりも力強く輝いていた。

 その美しさに、アリスは思わす息を呑む。気づいた時には静かに頷いていた。


「ああ。あてのない旅だが。君さえよければ」

「やった! 有り難う、アリス!」

「礼を言うのはこちらの方だ。君のように真っ直ぐな仲間がいると頼もしいからな」

 アリスは手を差し出す。ラルフは嬉しそうに手を出すが、自分の手が泥だらけなのに気づき、律義にマントで拭ってから握手を交わした。

 ラルフの手は温かく、頼もしい。ごつごつした剣士の手だ。


「あっ、そうだ」

 見つめ合っているのが照れくさくなったのか、ラルフはパッと手を離して話題を変える。

「自分のレベル、タリスマンで見てみたらどうかな。さっき確認したら、俺はレベルが上がってた。ポチと戦って経験が詰めたんだと思う。アリスはどう?」

「ふむ」

 アリスは自らのタリスマンを取り出し、自分のレベルを表示するよう念じる。そこに現れた表示を、さらりと読み上げた。


「1のままだな」

「嘘ぉ!?」


 ラルフは目を丸くして、自分のタリスマンでアリスのレベルを測り、アリスのタリスマンを覗き込み、信じられない表情でアリスを見た。

「本当だ……。レベル1だ……。なんで……?」

「君のタリスマンでも同じということは、タリスマンが不良品というわけではないようだな」

「冷静過ぎでしょ! 君のことだよ!?」

 ラルフは、混乱する頭を抱える。

「っていうか、君は盗賊団も全滅させてるよね。それなのに初期レベルのままっていうのはおかしい……。冒険に関する経験は、充分に詰んでるはずじゃあ……」


「タリスマンが判定する範囲の経験を、詰んでいないのかもしれないな」

「どういうこと?」

「タリスマンに内蔵された解析魔法は、主に戦闘経験を判断してレベル判定をしているようだが、私は詰んでいないとみなされているんだ、戦闘経験を」

「ああっ! そ、即死させてるから……!」

 タリスマンが判断するのは、主にどれだけの時間戦ったのか、どれだけの技術を使い、どれだけ能力を向上させたかなど、その辺りだろう。


 だが、即死魔法は一瞬で雌雄を決す。そのため、経験はゼロに等しいと判断されてるのだ。

「欠陥品じゃないか! アリスの強さを正当に評価できないなんて!」

 ラルフは悲鳴をあげる。一方、アリスは平然としていた。

「即死魔法なんて使う人間はいないから、想定外なのも仕方がない」

「でも、アリスはずっとレベル1で最弱判定に……」

「ギルドの活動に制限がかかるのは由々しき事態だが、幸い、君という頼もしいパーティーメンバーがいる」

 ぽむ、とアリスはラルフの肩を叩く。正しくレベルを上げているラルフさえ同行していれば、ギルドの制限には引っかからない。


「それはそうだけど……。納得いかないなぁ」

「私一人の基準に合わせてもらうわけにもいかない」

「そりゃあ、そうだけどさぁ。アリスの強さと尊さを誰もわからないなんて……」

 ラルフは自分のことのように項垂れ、重い足取りでアリスについて行く。

「そんなことよりも、今日の夕飯はどうするかな。報酬が支払われたことだし、満腹になるまで食べられそうだ」

「マイペース……。まあ、お腹は空いたけどさ」

 身体も動かしたし、魔法もたくさん行使した。アリスはすっかり腹ペコで、報酬で何を食べようかと悩んでいた。

アリスとラルフ、確固たる仲間のキズナが結ばれる。

次回、あの男が再び!?

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