本当にすまなかった、大切にするよ
なんでこんな事を言ってしまったんだろう。
いつから俺はこんなくだらない男になったんだろう。
ちょっと脅して困らせてやろう。
意地悪して泣かせてやろうそんな軽い気持ちだった。
若い世代で主催する舞踏会、未婚の男女が煌びやかな衣装で楽しんでいる。
そこで今日エスコートもドレスを送る事もしなかった彼女を見つけた。
どんな膨れっ面をしながら来るかと思いきや彼女は俺を見つけると嬉しそうに微笑んだ。
近づいて来た彼女に、
「カトリーヌ、君は私と親しくする友人達に色々な嫌がらせをしているそうじゃないか。そんな性格の悪い女が王家に嫁ぐなどありえない。この婚約の解消も考えている。」
「殿下、嫌がらせとは一体?」
カトリーヌは怪訝な表情で尋ねて来た。
俺の横にいたデンター男爵の娘キャンディが意気揚々と答える
「でんかぁ学園でいっぱい嫌がらせ受けてぇ3日前は階段から突き落とされてアザができちゃいました。」
「私は彼女と特別な関係ではなく学生として平等に接していただけなのに、嫉妬に駆られたお前は様々な嫌がらせをしたと聞いている
元々お前との婚約は不満だった。嫌いな女が婚約者だと言う苦痛は解消したいと思っていた所だ。」
あ、言いすぎてしまった。俺がカトリーヌを嫌いなわけないのに。
カトリーヌは青ざめながらも俺の顔を見て
「そんなに嫌われているとは存じませんでした。婚約解消は謹んでお受けいたします。ただ一言言わせていただきますが、私昨日、留学先のアゼット帝国から帰国したばかりで、こちらの学園には通っておりませんしそちらのご令嬢のお名前も存じ上げません。嫌がらせや暴力の事実はございません。これから国政を担っていく上で片方の話を鵜呑みにせずきちんとお調べしてから判断をされた方がよろしいかと。」
え、どう言う事だ?
「留学だと!私は聞いていないぞ」
そう言えばここ数ヶ月彼女の姿を見る事はなかった。
「留学前に挨拶に伺った時も忙しいとの事でお会い出来ませんでしたのでお手紙でご挨拶させて頂いたのですが、
留学してからも毎月差し上げておりましたが、お返事が無かった所を見ると読んではいただけなかったのですね。
これまで殿下の横に並び立つのに恥ずかしくない様頑張って来たつもりでしたが私の独りよがりだった様です。申し訳ございません」
俺は自分の失敗と恥ずかしさでクラクラして来た。
そうだ毎月カトリーヌから手紙が来てたのに、会いに来ないカトリーヌに腹を立て読んで無かった。
「婚約解消の件は父と相談し滞り無く進めます。ご迷惑をかけました。では失礼します。」
え、待ってくれ違うんだ。
「待て、カトリーヌ」思わず彼女の腕を掴んだが言葉が出ない。いや本当に目眩がしている。おかしい目の前が霞んできた。
「殿下お加減が悪そうですが大丈夫でしょうかお熱があるように思いますが」と今罵倒されていたカトリーヌが心配そうに覗き込む
あ、昔からカトリーヌは俺の体調悪い時はこんな顔して心配してくれていたなぁ、などと悠長に思い出しながらそのまま意識を失った。
俺が倒れ込みその場が大騒ぎとなりカトリーヌに対して行った冤罪に対する俺の罵倒は有耶無耶となったが婚約解消の話は進んでしまった。
倒れた原因は水痘症だったらしい。高熱にうなされ身体中には水痘ができ寝込んでしまった。
カトリーヌはあんなに罵倒されたにも関わらず子供の頃に罹患しているので大丈夫だと言い婚約解消が決まるまではと付きっきりで看病してくれた。
あれだけ鬱陶しく殿下殿下とまとわりついていて、媚びて来ていたキャンディは一度見舞いに他の生徒と共にやって来た。冤罪の件もあり会話するのも面倒に感じ寝たふりをしていたのだが俺の顔を見るなり
「やだ〜気持ち悪いヒキガエルみたい。高熱続いたら子供もできなくなるって聞いたよ。やっぱ王太子は第二王子か〜
リチャード様って単純だから私もチャンスありかなーんて思ってたけど相手が第二王子ってのは無理か5歳も年下だし。残念だけど王妃狙いは諦めだね」などと大声で話している
寝ているから構わないと思ったのか、王子に向かって不敬な物言いに他の生徒が慌てて連れ帰った。
悔しくて情けなかったが熱のせいで身体が動かず声が出せず言い返す事もできない。皆が帰った後、俺の側にそっと座ったカトリーヌが私の頭を撫ぜながら「もっと見る目を養わないとダメよ、リチャード」と優しく語りかけ始める
「私ねリチャードが大好きだったの。子供の頃よく走り回って遊んで楽しかったよね。悪戯も冒険も沢山した。
やんちゃだけど心の優しいリチャードの笑顔がたまらなく好きだった。でもいつからか私に笑顔向けてくれなくなっていたね。婚約してから会える回数も減った。
王妃教育が大変で寝る間も無くて余裕が無くなって、私が
リチャードの事蔑ろにしていたのかもね。とっくに嫌われている事すら気づけなかった。ごめんなさい苦しめてしまって。今までありがとう、幸せになってね」
そう言うと静かに退出して行く。
違う、違う本当はどんどん成長して王妃教育も完璧にこなしていくカトリーヌに嫉妬していたのは俺だ。くだらない矜恃で意地を張っていたのは俺だ。本当はカトリーヌが大好きなんだ。ごめんよ傷つけてしまった。本当バカだよ俺は。謝ろう謝って許して貰えるまで謝ってもう一度カトリーヌとやり直したいそう思いながらも動けず再び眠りについたてしまった。
1週間後体調が回復した俺はカトリーヌの実家であるメルバイト公爵家に向かった。
「メルバイト公爵申し訳ない私の浅慮のせいでカトリーヌを傷つけてしまった謝らせて欲しい」
「殿下わざわざお越しいただきありがとうございます。しかし娘は家を出てしまいました。殿下に婚約解消され今後も婚姻先はないでしょう。下級貴族との婚姻や後妻などは公爵家にとって外聞が良くないですので公爵家を出て平民として仕事をしながら生きていきますと申しました。
このままこの家で過ごせば良いと引き留めたのですが意思が固く。
殿下、私供に取ってカトリーヌはかけがえのない大切な娘でした何がいけなかったのでしょうね。残念でございます」
憔悴した父親の顔を見てますます自己嫌悪に陥ったのだがなんとか向かった先を聞き出すことができ王城へ戻り父王へお目通りを願った
「陛下私は大きな間違いを犯しました。私の様な浅慮で公平な判断力の無い男は国政を担う事は出来ません廃嫡していただきたい」
「一連の話は聞いておる。廃嫡されてどうするつもりだ」
「家を出たカトリーヌを探して私の間違いを平身低頭謝るつもりです」
「カトリーヌ嬢が受け入れてくれなかったらどうする、その後はどう生きる」
「受け入れてもらえないのは当然です。でも彼女になんの非もない事を伝えたい。その後は冒険者になるかどこかの国傭兵になるか何か仕事を探して生きていく所存です。」
「お前の覚悟はわかった。ただカトリーヌ嬢がお前の事を許し公爵家に戻ることがあれば一度お前も戻って来るが良い。お前も私の可愛い息子には違いないのだから」
「ありがとうございます父上」
そうして俺は旅に出た。
留学先だったアゼット帝国にいると聞いたカトリーヌを探して回った。
けれどカトリーヌに辿り着く事が中々出来ずにいた。
途中冒険者ギルドに登録して護衛などの仕事をしながら日銭を稼ぎながらの旅であった。
王子として暮らしていた時と比べようがない平民の暮らしの大変さもひしひしと感じていた。
カトリーヌの居場所が掴めないまま半年が過ぎた頃とある街の商人の荷馬車の護衛を頼まれた
商人の商会はアゼット帝国でも大きなもので支店と称して帝国内の色々な街に展開している。
無事に護衛を終わらせて宿に向かおうとした時突然カトリーヌを見つけた。
カトリーヌは質素なワンピースを身にまとい商会から出て来た。ここに務めていたのか挨拶しながら帰宅する様子だった
突然の事で声もかけられずどうしていいかわからずにただ後ろから付いて歩いた。
情けない。謝る勇気も顔を見せる勇気もないのか俺は。
カトリーヌは近くの商店街の人に声をかけられながらにこやかに返事をしている
そうだ彼女は分け隔てなく色んな人に接する事ができる子だった。意地悪なんかするはずないのに、何故あんな冤罪を思いついたのか。つくづく自分のバカさ加減が嫌になって来た。
そんな事を思いながら着いて行くと酒場から出て来た男にカトリーヌが絡まれ出した。知り合いかと思ったがカトリーヌは明らかに嫌がっているようだ。
「やめろ、嫌がっているではないか」思わず声をかけてしまった。
「ああっ!」
絡んでいた男は睨んで来たが冒険者姿の俺を見てチッと舌打ちしてすぐに離れて行った。
「ありがとうございます、 えっ...」
カトリーヌは俺の顔を見て驚いている。
「どうして殿下が?」
謝らなければと焦った俺は地面に着くくらい頭を下げて
「カトリーヌすまなかった、其方の人生を狂わせておいて謝って済むことではないのはわかっている。私の顔など見たく無かっただろうがどうしても謝らせて欲しかった。本当にすまない」と一気に話した
「あの殿下頭をおあげください。もしよろしければ目の前のアパートメントが私の住まいでございますそちらで御茶でもいかがですか」
通りで男に頭を下げさせている姿が気になるのかカトリーヌは困った顔をして誘ってくれた。
迷惑をかけるつもりもないので案内されるままカトリーヌの住まいへ移動する。
カトリーヌの住居は狭いが綺麗に片付いており居心地の良さを感じた。
「殿下はどうしてこんな所へ?それにそのお姿は?」
俺は廃嫡を望みカトリーヌに謝罪するため探しながら旅をしていた事を説明した。
「私に謝るためにそんな無茶なことされたのですか?何故」
カトリーヌは心底驚いたふうに問いかける。
俺は今までの事を正直に全て話した。
本当は自分の不甲斐なさを棚に上げ賢く立派に王妃教育をこなして行くカトリーヌに醜く嫉妬していた事。意地悪して澄ました顔を泣かせやりたいと幼稚な考えで行動した事。すぐに反省して謝りに行ったのに間に合わなかった事。カトリーヌの事が本当は大好きだった事
ポツポツと話し始めた私をカトリーヌは黙って見つめていたが、呆れたような顔をした。
「はぁ、ねえリチャードバカなの?あなたは王太子なのよ私の代わりなんか沢山いるけどあなたの代わりなんていないのに」
そう言う彼女に縋るように、俺は答える。
「違うカトリーヌの代わりなんていない、カトリーヌと共にいたい。俺はカトリーヌがいないとダメなんだ。大好きなんだ。愛してる。嘘じゃない。俺がバカな事したのはわかっている。でも、カトリーヌの側にずっといたい。
平民になった俺だが側にいてくれないだろうか?俺の事嫌いか?」
気取って取り繕ってなどいられない必死に懇願する。
断られたら、静かに消えよう。二度と恋などしない。
ドキドキしながらカトリーヌの瞳を覗き込む。
俺の顔をカトリーヌはじっとを見つめていたがクスクスと笑い出し
「ずっとお慕いしていたのにあの時ひどい言葉で私を傷つけた貴方の事が信じられませんでした。私は貴方にこんなに嫌われていたのかとショックでした。それで貴方の意思を受け入れたのです。
メルバイト公爵家の娘カトリーヌはリチャード殿下との婚約は解消しました。
でも、平民のカトリーヌは冒険者のリチャードの真心を受けプロポーズをお受けします。」
と優しい笑顔で受け入れてくれた。
「カトリーヌ!カトリーヌ、カトリーヌ」胸が締め付けられるほど熱くなった俺はそれ以上何も言えなくなり嬉し涙でぐちゃぐちゃになりながらカトリーヌを抱きしめた。
私の旦那様は泣き虫ね、と言いながらカトリーヌも優しく抱き返してくれた。
本当に本当にすまなかった。これからは一生大切にするよ。
その後二人は両親への報告のため王国に一度帰ることにした。平民として2人で生きて行こうと思っていたのだが、
驚いた事に俺は廃嫡扱いでは無く王太子では無いものの臣下として新しい公爵名ウッドを授かる事となっていた。
そのためカトリーヌも公爵家へ戻り翌年の春のある晴れた日結婚式を迎えた。
リチャード.ウッド貴方はカトリーヌ.メルバルトを妻に迎えいかなる時も愛し合う事を誓いますか?
「はい」
カトリーヌ.メルバルト貴方はリチャード.ウッドを夫としいかなる時も愛し合う事を誓うますか?
「はい」
私は大きな間違いを犯し大切な人を傷つけて失いかけた大馬鹿者だが再び手に入れる事ができた
この愛しい人を幸せにしたい そう誓った。
初めて執筆してみました
拙い文章で思いついたまま
でも面白かったです。
後から読み返して恥ずかしくなるんだろうな




