みずきと抗体
鳥を媒介して罹患する病気が流行った。
鳥インフルエンザが流行った時には、鳥を大量に生き埋めにして、消毒する方法が取られたが、それがヒトに感染する病気となったら話は別だった。
ニワトリの若鳥を10羽カゴに入れて世話をしながら、その半数に病原体の注射をして様子をみる。
何羽か死んだ。
生きているものを経過観察して、抗体ができたか採血して顕微鏡で検査。
みずきは、死んだ若鳥を可哀想に思った。
病原体の注射をしなかった半数からも死体が出た。
「空気感染の疑いが強いな」
先輩が鳥の死骸を特殊な方法で処理しながら言った。
そうこうするうち、みずきは熱発して倒れ込んだ。
「bー3の血液から採取した抗体だ。注射するぞ」
「はい」
心音が緩やかになって、痛みがひいていった。熱も平熱になり、常態になった。
「bー3の抗体を、他の鳥にもあげてください」
「オッケー、みずきちゃん」
死にかけていた何羽かが元気になった。
その回復した鳥たちからも抗体が採取できた。
「よっしゃ。ヒト用の抗体を大量生産するぞ」
「他の製薬会社にもサンプル持ってけ!」
みんな生き生きと働いた。
「そう言えば、みずきちゃんからも抗体が取れるんだが」
「えっウソ」
「ほんと。でも非常時にお願いするね」
「はい〜」
鳥インフルエンザも生き埋めとかじゃなくて、抗体投与で助けてあげたい、とみずきは思った。