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しーにゃんについて

 突然ですが、作者です。


 前部分の感想で『可愛いと言われてしーにゃんも天国で喜んでいるでしょう』と書いてしまったので、

 気になる方もいらっしゃるかもしれないので、説明をします。



 しーにゃんは実在しました。

 名前は違いますが、以前私が一緒に暮らしていたチンチラ猫がモデルです。

 生後2ヶ月で私に迎えられ、わずか生後半年でバイクに轢かれて天国へ行きました。



 それはもう、むちゃむちゃ可愛くて、自分の娘のような子でした。

 猫と人間でありながら、会話が出来ました。

 迎えてすぐぐらいから一緒にお外へ散歩に出掛けるようになり、リードもつけずにピッタリ私の隣を歩き、私がベンチに座って「遊んでいいよ」と言うとようやく私の隣を離れ、好きなところへ冒険に行きました。でもそんなに遠くへ離れることは決してなく、名前を呼ぶと「にゃーん!」と鳴いて、すぐに私のところへ戻って来ました。


 それでも茂みの中に入り過ぎて、私がどこにいるのかわからなくなったりすると、すぐそこにいるのに泣きわめくような声で、「なんでなんだよ〜う、なんでなんだよ〜う」と助けを求めました。意地悪に笑いながら私がしばらくそのままにし、ようやく名前を呼んでやると「なんでなんだよ〜う」がピタリと止まり、全身の長毛をバッサリ逆立てて茂みの中から走り出て来ました。


 人見知りをする子でした。

 私が1人で帰って来ると、いつも玄関の中から「みゃっ! みゃあーあ!」と喜びの声が聞こえていて、ドアを開けると転がり出て来ました。

 でも誰かと一緒だと、ドアを開ける前からわかっているみたいで、部屋の奥のカーテンの陰に隠れていました。

 部屋に連れて来た誰からも「可愛くない」と言われてましたっけ。私の身体にしがみついて、訪問者を恐ろしいものでも見るような目でいましたから(笑)


 4ヶ月ぐらいからは1人で外出するようになりました。


 私が洗濯とかしていると、玄関のドアを前足でコンコンと叩き、振り返って「ニャー(お外行きたい)」と言うのです。

 ドアを開けてやるとピョンと飛んで外へ出ますが、出てすぐのところで立ち止まり、また振り返って私の顔を見上げながら「ニャーん(一緒に行こう)」と言いました。

「ごめんね。することあるから、1人で行っておいで」と私が言うと、

「んにゃ〜う〜……(一緒に行きたいにゃー……)」とひとしきりそのへんにスリスリしてから、ようやく諦めたようにピョコンと駆け出しました。


 隣の家のおばさんが猫大好きで、いつも仲良くしようと接近していました。でもしーにゃんはやっぱり人見知り猫で、決しておばさんに捕まろうとしません。

 私が出て行って、笑いながら舌を鳴らすと、「うあーん」と泣くような声を出しながら、私の胸に飛び込んで来ました。

 私が抱いている時は他の人から撫でられるのを許すので、仕方なさそうな顔をしておばさんに頭を撫でられていました。


 暑い夏のある日でした。

 玄関のドアにストッパーをつけて、少し開けっ放しにしていました。もう生後半年になったしーにゃんは立派に大きく、外出フリーにしてあげていました。

 周りは住宅地で行き止まりになっていることもあり、車通りがほぼなかったので安心していたのです。

 それでもやっぱりお外へ行く前には私の顔を見上げて「ニャーん(一緒に行こう)」と言いました。


 そのたびに私は「1人で行っておいで」と言い、彼女は残念そうに、しばらくしてから出て行きました。


 彼女はあの日、暑い外から一旦家の中に帰って来ました。わんこみたいにベロを出して、ハァハァいっていました。ひとしきり水を飲むと、またすぐに外へ遊びに出て行きました。2階の窓から見下ろすと、裏庭の背の高い草を飛び越えて、楽しそうに走って行くしーにゃんが見えました。


 そんなに遠くへ行くことはないだろうと、私は決めつけていました。


 隣の家のおばさんが慌てて駆け込んで来ました。


「ちょっと◯◯ちゃん! しーにゃんが! しーにゃんが……!」


 150mほど行ったところにスーパーがあり、その前は広い道でした。おばさんがちょうどスーパーから出て来た時だったそうです。今までで一番の冒険だったことでしょう、スーパーの前でしーにゃんが風に舞うチラシを楽しそうに追いかけていたそうです。そこへ男の人が乗るバイクがやって来たそうです。しーにゃんは気づいて一瞬固まり、すぐに逃げたそうです。それでもバイクは進路を変えてまでしーにゃんを追い……


 あ。だめだ。


 結構昔のことなのに……


 いまだに泣いてしまいます。


 バイクの人のことも恨んではいます。

 でも、一番責めたいのは、彼女の冒険心をわかってなかった自分。


 彼女が「ニャーん(一緒に行こう)」と言うのに、どうして応えてあげなかったのか。


 あれ以来、一度も猫を飼っていません。



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― 新着の感想 ―
[一言] ごめんなさい 泣いてしまって これ以上 かけません<m(__)m>
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