表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハゲストーリー  作者: くらいいんぐ
2/9

第2話 ハゲの恋

つっぱり高校生でも、やはり男。

つるんでる女ヤンキーの中で、シャキシャキものを言うS子に、ハゲ男は恋をした。


S子は、ただのヤンキーではなかった。

姉御肌で、面倒見のいい、勉強もできる女の子でもあった。


ある時、ハゲ男は、S子を誘ってみた。

S子は快くついてきてくれた。


ご飯を一緒に食べ、ふたりきりで夜の街を歩いていた。

ふと、ハゲ男が言う。


「S子、おまえ好きな人いるのか?」


「いや、今はいない。」


「そうか、じゃあ付き合ってみないか?」


「・・・それはできないな。」


「え?なんで?」


S子は黙っていた。少し沈黙が続いた。


そしてS子は立ち止まった。こちらを向き、真剣な眼差しで見て言った。


「わたし、ハゲは嫌いなの。」


「・・・?」


「正確に言うと、ハゲを隠す人が嫌いなの。」


「俺はハゲをかくしてなんていないよ。見てくれよ、この剃りこみ。丸出しじゃん。」


「そこなのよ、その剃りこみって言ってるのって、剃りこみじゃなくて、ハゲでしょ?」


「・・・・」


「剃りこみ風に見せてる、その姿勢が中途半端に見えるのよ。」


「じゃあ、スキンヘッドにするよ。髪の毛なんて関係ないじゃん。」


「それも同じ。スキンヘッドにして、『俺はハゲじゃない』って見せるのも、それは隠してるのと同じなのよ。」


ハゲ男は黙っていた。

ハゲてることをどう思われてもいいと思ってるハゲ男は、そんな理由で断られる理由がわからなかった。

むしろ、自分は、ハゲてるを強調してやってきたつもりだった。


しかし、それは違っていた。

ハゲを隠してる、そんなことを言われた事によって・・・いや、振られたことに対して、猛烈な怒りを感じていた。

S子に対してではない。やり場のない怒りがこみ上げていた。


S子は言う。


「ごめん、言い過ぎたかもしれない。でも、はっきり言わないとそれこそひどいと思ったから。」


そう言うと、S子は走り去って行ってしまった。


次の日、ハゲ男は新しい髪型で登場していた。そう、スキンヘッド。

しかし、それは、ハゲを気にしてのことではなかった。一つのけじめだった。

ハゲ男流のけじめだった。


しかも、眉毛も一緒に剃っていた。それは、毛に対する怒りだと象徴するようでもあった。


もう、その見た目に、誰もハゲ男に歯向かうものはいなかった。


ただ、ハゲ男の心境は変わりつつあった。

もう、不良はやめよう。スキンヘッドの眉毛なしで、そんなことを思うのであった。


第三話 チャレンジコンテスト


高校も卒業間近となったある日、ハゲ男はある広告を見た。


それは、育毛にチャレンジコンテストだった。髪の薄い人が、その会社の育毛剤を使い、数ヶ月でどこまでフサフサになれるか競うというものだった。優勝賞金1000万円だった。


ハゲ男は、髪もお金も興味なかったが、暇だったので応募してみた。

自分の顔と頭の写真を撮り、応募用紙を送った。


もちろんすぐに返答がきた。


育毛剤・・・最初の2か月は無料提供。しかし、3か月目からは有料になる。

ただし、コンテストに参加するには、最低半年はチャレンジしなくていけない。


1か月数万円かかるが、とりあえず2か月がんばろうと思った。


しかし、この男、ハゲを気にしないくらいのでかい男。

マメに育毛剤をつけることはしない。


朝起きて、顔を洗った後に、一日分(通常3回にわける)の育毛剤を頭から、ドシャっとかける。


顔の方にしたたり落ちるが気にしない。そのまま学校へ登校する。

拭き取らないのだ。


そんな日が2か月続いた。


そして、もう飽きてしまっていたのとお金がないのを理由に、その育毛剤(コンテストも含めて)辞退しようと決めた。


ただ、2か月前とどれだけ変わったか、写真を見て比べてみた。


頭部・・・かわらない。いやむしろ、薄くなってる?

剃りこみ・・・やはりかわらない

その他の部分・・・よくわからない


はぁ、とため息をついて、写真を鏡の横に置いて、ボーっと鏡を見つめていた。

すると、何かが変わっている。


ん?と思い、よくよく見てみる。


あ!眉毛だ!


そう、あのしたたり落ちてた育毛剤は、眉毛を育毛していたのだ。

しかも、剛毛になっただけでなく、繋がりそうな勢いだった。


それから、ハゲ男は、育毛剤の会社に契約解除を申し出た。

電話の向こうで、「どうでしたか?効果はありませんでしたか?」と聞かれたが、男は、


「ハゲは治りませんでしたが、よく効く薬だと思います。」と答えた。


次の日、男は眉毛を全部剃って学校へ登校した。

しかし、もう彼の外見を気にする同級生はいなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ