隠しても無駄
「あれは君が『僕だよ』
私とクリスが戻ると大柄な男性が私に向けて開口一番に発するが、後ろにいたクリスが私の横に来て彼の言葉を遮る。
『あのくらい僕達なら造作もないよ』
クリスは自分とジルが何者であるかを暗にほのめかすと、彼らもその意味が分かったようでそれ以上は何も言えなかったようだ。
まぁ、私達の噂は知ってたみたいだし、クリスとジルが人語を話す時点でクリスとジルが何者であるかは、たぶん察したはずだ。
「…ああ、それとこいつの傷も先程のポーションで塞がった。感謝する」
「ありがとうございます。本当に助かりました」
大柄な男性と怪我をした男性からお礼を言われ、私も「気にしないでください」と言いつつ、私自身が気になっていたのは魔法銃のことで本当に見られていないかとか、何か感づかれていないかとかで少し挙動不審になりかけている。
そういう時はさっさとトンズラするに限る。
その為に証拠も隠滅いないとね。
「すみません。あの魔物なんですが、どうしましょうか?」
まずは証拠であるあの魔物を何とかしないといけないと思い彼らに問う。
「ん? あぁ、あれなら倒したのは君達だから最終的な権利は君達にある。持っていくといい」
「おい、持っていけと言ってもあんな大きな魔物…」
魔物の権利はやはり魔物を倒した者になるようで、私的には彼らに引き取ってもらってもよかったけど、私達の物なら兄達に気づかれないように自分のアイテムボックスに隠しておけば万事OKなので、そうさせてもらう。
そして怪我をした男性が私達があんな大きな魔物を持っていけないだろうと言いかけた、その時。
「おっと。どうやら俺達の迎えが来たらしいな」
遠くの方に数人の人影が見える。
そういえば、クリスとジルが少し前から人影の方角をずっと見ていた。
あまり人が増えてもややこしくなるだけだから、ここは本格的にトンズラしよう。
「あっ! 私達そろそろ帰らないといけないので、この辺で失礼します」
急いでクリスに跨がり魔物を回収するためクリスとジルが同時に走り出すと、クリスは最初に倒したギュスタークロックの元に、ジルは二匹目のギュスタークロックへと向かう。
後ろで男性達が何かを言っているが、構っている暇はないので少し振り向き頭を下げ、すぐに前を向いた。
その瞬間、大柄な男性のフードから揺れる紅色の髪が目の端に写り混んだような気もするが、証拠を前にそれを意識の隅に追いやった。
早くギュスタークロックを回収して証拠隠滅しないと兄達が探しに来てしまうかもしれない。
そんなことを考えたら背筋が寒くなったので、急いで最初に倒したギュスタークロックをアイテムボックスに放り込み、クリスが最後の白いギュスタークロックの元に到着するとジルが二匹目のギュスタークロックを咥えて持って来たので、それをアイテムボックスに入れる。
そして最後の白いギュスタークロックをアイテムボックスに入れて回収を終えるとルナティオースの町に向かい走った。
◇◇◇◇◇◇
暫く走るとルナティオースの町を囲む壁が見えてくる。
そして、町からこちらへ向かってくる大きな影が二つ。
その上には人影も見える。
―――間違いなく兄達だ。
兎に角、平静を装い普通にしなければ。
(普通に、普通に…)
「麗、薬草はちゃんと取れたか?」
「うん。ちょっとした群生地を見つけたけど指定の数しか取らなかったよ」
蒼兄さんが薬草のことを聞いてくる。
(よしっ バレてないバレてない)
「なるほど。……で、他には?」
「えっ!? ほ、他!? えー…ほ、かは…」
「「………」」
「ナイデスョ…」
結果、兄達にはバレバレだった。
なぜ分かったのか、と聞けば大量の経験値とレベルも上がっていたとのことだった。
こうして私は薬草採取の後、何があったのか全て白状する羽目になった。
チッチャ『読んでくれてありがとにゃ』
チャッチャ『出番がなくて暇だから、ここを乗っ取ってやるぜ』




