冒険者と魔物
ジルを追いかけて暫くすると私の索敵と気配感知に漸く反応があった。
「人が二人に、……魔物が三匹」
索敵で調べると魔物の様子がいつもと違いおかしいことに気づく。
「なんだか魔物の様子が変なんだけど…」
『うん。よく分からないけど魔物が興奮と言うより狂暴化してるようだよ』
クリスはそう言うと、少し間を開け続ける。
『…どうやら一人は怪我をしているみたい』
「怪我の状態が分かるの?!」
『少しだけなら。命に関わる程の傷ではないけど、ちょっと酷いかな』
「………」
『麗ねぇちゃ大丈夫。本当に死ぬような怪我じゃないよ』
クリスの〝酷い傷〟の言葉に私は知らず知らずのうちに身体が強張っていて、その緊張がクリスにも伝わっていたようだ。
「ありがとう、クリス。……もう平気だから急ごう」
クリスは私の声色から本当に平気だと分かると、緩めていた速度を上げた。
暫く走ると遠くに、一際大きな影と人影、魔物と思わしき影が目に飛び込んできた。
ジルはまだ現場には着いていなかったらしく、今まさに魔物に襲われそうな二人の人影の前に出ると魔物にねこパンチをおもいっきり振り下ろしているところだった。
叩きつけるようなジルのねこパンチに魔物は地に伏せていたが、ヨロヨロと立ち上がると後退し仲間の元と戻っている。
「クリス、速度を上げて!」
『分かった』
魔物は一旦下がったけど問題はもう一つ。
それはあの冒険者達が他所から来た人達だった場合。
ルナティオースの人達ならジルが私の従魔だと知れ渡っているけど、他所の人達は噂は知っていてもジル達を見てはいないので、そもそもジルが従魔なのか魔物なのか判断がつかないはずだ。
下手をすればジルが攻撃されかねない。
クリスもそれが分かっているので、さらに速度を上げている。
「すみません! その子私の従魔なんですっ!!」
今、私の目の前ではジルを警戒する大柄なフードの男性とその斜め後ろに蹲っている、こちらもフードの男性。
ジルは警戒する二人を気にせず少し離れた場所の魔物を見据えいる。
「…やっぱりか……」
そう呟いた大柄な男性はジルと私の乗るクリスを見て従魔だと分かりジルへの警戒を解いた。
「本当に噂通りだな……いや、悪いな。助かった」
「いえ、無事で何よりです。それで、そちらの方にこれを…」
私はクリスの上から大柄な男性にポーションを渡す。
勿論ポーションは父のポーションではなく町で購入した物で、先日のギルドマスターの一件のような事にならないために蒼兄さんから持たされたポーションだ。
「これは中級ポーションか。見ての通りこちらはポーションを使いきったので非常に有難いが…いいのか?」
蹲る男性の周りには多量の血痕と、空のポーションの瓶が数本転がっている。
「はい、勿論です。早く使ってあげてください」
「それでは遠慮無く使わせてもらう。だがこの借りは必ず返すと約束しよう」
大柄な男性が言い切った直後、痺れを切らしたのか魔物が威嚇するように鳴いた。
魔物は全身くまなくキラキラと輝く鱗で覆われていて、姿形はワニと似ているが背中や尻尾の先には刺のようなもの、そして一番は身体の大きさ。
三匹の内、二匹は人よりも遥かに大きく、最後の一匹はその一回り以上の大きさで色も二匹の緑色ではなく白いので光加減で銀にも見える。
「あれはギュスタークロック。本来ならこの辺にはいない魔物だ」
大柄な男性が仲間の手当てをしながら教えてくれる。
「あいつらはクロック系の中でも、此処よりもっと南の一部の川辺にしか生息しないはずなんだ。……いや、確か〝深淵の森〟の南側の奥の川にいると言う大昔の話があったか…」
深淵の森にもいるのかと思いながら魔物を見ると、いまだに興奮しきっていて怪我人もいる彼らを連れて逃げられそうにはなかった。
「ギュスタークロックに土魔法以外の魔法は効かないぞ。物理攻撃も生半可なものは無理だ。土魔法ならあっという間に倒せるんだが…」
私の考えていることが分かったのか、大柄な男性が忠告してくれる。
「クリスとジルならいける?」
『魔法は効かないけど、スキルを使って力でゴリ押ししたらいけるかな。でも彼らがいるからね…』
「じゃあ、やっぱりあの人達を連れて逃げるしかないのかな」
『逃げ切れたとしても魔物のあの様子じゃ、人間を襲いに村や町に現れるかもしれないよ』
確かに私達は逃げれても近くの村や町、外にいる人達は真っ先に襲われてしまうかもしれない。
それでは元も子もない。
「ねぇクリス、私の後ろであの人達に見えないように壁になってくれる?」
クリスから降りてクリスの前へ出る。
『なんとなく分かったけど、もしかしてアレ使うの?』
「うん。そのもしかして」
私はそう言いながらこの間、剛兄さんから手に入れた新しい武器〝魔法銃〟を取り出した。
お読み頂きありがとうございました。
チッチャ『次も投稿できるように作者をバシバシしとくにゃ』




