みんなのお待ちかね
明けましておめでとうございます。
今年も【漆黒のヴァルキュリア】を、どうぞよろしくお願い致します。
私の隣でマシューが美味しそうに卵粥を頬張っている。
他の子達は気になるけど、やはりまだ卵粥には手が出ない様子。
そんな中、ロイ君とルーク君が卵粥を覗き込みながら小声で話す。
「フォレストグリーンサーペントって、お貴族様どころか王族ですら、なかなか食べられないやつだよな?」
「ああ。確か今回は領主様が陛下に献上したって噂だぜ」
二人の会話を聞くや否や、子供達が卵粥に飛び付いた。
だって、貴族や王族すら滅多に食べられない貴重なお肉と聞けば誰でもそうなっちゃうよね。
卵粥を食べる子供達から、うまい美味しいと声が上がり、思わずニコニコしてしまう。
例え目当てが、フォレストグリーンサーペントや卵であっても、お米を食べてくれたことに意味があるのだ。
(これを期にお米の美味しさを広められたらいいな)
その後は子供達がシチューや卵粥のおかわりを数回したところで、みんなのお待ちかねの登場である。
「「「「「わぁー!!」」」」」
剛兄さんと蒼兄さんがテーブルに、次々とおやつのお皿をアイテムボックスから取り出し子供達から歓声が上がると、私はそのお皿をみんなへと配っていく。
「おいしそう!」
「いいにおい…」
「これ、なに?」
「これはパンケーキだな」
子供達の質問に答えたのはマクシミリアンさんだった。
「「「「ぱ、パンケーキ」」」」
―――ゴクリッ…
マクシミリアンさんの一言で子供達が一斉にパンケーキに釘付けになった。
パンケーキの材料は小麦粉と卵と牛乳だけで、希少な砂糖は使わない代わりにパンケーキの上には、木苺に似た実の甘いジャムと横には桃が添えられている。
最初、パンケーキは蜂蜜を使う予定だったのだけど、孤児院には二歳半の男の子がいたので蜂蜜ではなく市場で見かけたジャムになった。
このジャムの実は、そのまま食べると酸っぱいが熱を加えると、とても甘くなるということと比較的どこでも良く取れることもあり、一般の家庭でも作られているとか。
そして、一番高価な物になってしまったのは桃で、これは完全に私の我が儘だった。
(だって風邪を引いた時はいつも桃の缶詰だったんだもん)
だからシスターの桃は皆より少し大きく切ってほしいと兄達に頼んである。
「パンケーキなんてお貴族様しか食べられないと思ってた…」
「最近は平民のお店でもパンケーキは食べられるみたいよ。王都の話らしいけど」
そんな子供達の話を横で聞きながら、壁際で大人しくシチューと卵粥を食べ終えたクリス、ジル、チャッチャ、チッチャの前に最後のパンケーキを置いた。
シオン、アジサイ、カスミは先に調理場で出来立てのシチューと卵粥、パンケーキを兄達に食べさせてもらっているので、今は私達それぞれのフードの中に隠れて寝ている。
「よし! みんなに行き渡ったから、それじゃあ食べよう…「「「「はーい!!」」」」
パクッ!
「「「「!? っ~~~」」」」
私が言い終わる前に元気な返事をして、直ぐ様パンケーキを頬張る子供達。
どうやら美味しすぎて、みんな言葉が出ないようで、夢中で食べている。
「こら、お前達。滅多に食べられないんだから、ちゃんと味わって食えよ」
グロウ君に忠告され、こくこくと頷き、それでも幸せそうに笑顔でパンケーキを食べる子供達を見て、私もつい笑みがこぼれてしまう。
一方、子供達に忠告したグロウ君も子供達に負けないくらいパンケーキを頬張っているが、意外とマナー良く頬張っている。
冒険者ってワイルドなイメージだったから、ちょっと意外だけど、ヨアヒムさんにウォルターさんも綺麗な所作で、見た目が豪快なギルドマスターも綺麗な所作だった。
そして、その中でも一際目立つのはマクシミリアンさんで、完璧な所作を知らない私でさえ完璧だと言い切れる美しい所作で、パンケーキに夢中だった女の子達も、今はマクシミリアンさんの方に夢中である。
かく言う私もマクシミリアンさんに見とれていた。
その私に気付いたのか、マクシミリアンさんと目が合い微笑まれるも、あまりの王子様スマイルにいたたまれなくなり目を伏せたのだった。
お読み頂きありがとうございました。




