ギルドマスター
よろしくお願いいたします。
「マクシミリアン、うちの職員が押しつけた様で、すまなかったな」
「いや、先に手を挙げたのは俺達だ。それに…これは俺達じゃなきゃ出来ないだろ?」
ギルドマスターと呼ばれた男性は、剛兄さんと同じ…いや、もっと大きく2mは超える、これまたイケメン、恐ろしく美形な人だ。
暫く、リーダーっぽい…マクシミリアンさん?、と話していたギルドマスターがこちらに振り返る。
「申し遅れた。私はルナティオースの冒険者ギルドでギルドマスターをしているマティアスという者だ。大体の話はマクシミリアンから聞いたが、まだ少し話を聞きたい事があるので、町に入ってすぐの場所にあるギルドで聞かせてもらえるとありがたい」
断る訳にはいかなかったので大人しく付いて行くことにする。
まぁ、当初の予定に冒険者ギルドで冒険者登録するってこともあったし、丁度いいよね。
「立派な従魔だな」
「えっ……は、はいっ、あ、ありがと…うございますっ」
真横からいきなり声をかけられ、ビックリし声が裏返りながら急いで返事を返す。
恐る恐る声の方に顔を向けると深い森の様な濃いエメラルドグリーンの瞳とかち合った。
ギルドマスターだ。
彼は私を見上げ、私はクリスに乗り見下ろす形となっているため私の顔がよく見えてしまう。
あまりにも綺麗な瞳に見つめられ、恥ずかしくなり慌てて前を向く。
「…ふっ、そんなに固くならないでくれ。なに、取って食ったりはしないさ。この私が人に見下ろされることなんて、そうないのでね」
「それもこんな可愛らしいお嬢さんに…ね」
「つい、声をかけてしまった」と言われ、私は今、顔から火が出そうだ。顔だけ火だるまである。
でも全く気づかなかった…ぼーとしていた訳じゃないのにギルドマスターが近づいたことが分からなかった。
でもクリスが気づかないわけがないし危険が無いから近づかせたんだよね?
そうこうしているうちに私達は多くの人が並ぶ大きな門とは別の少し小さい、でも大型トラックが通れそうな門に案内される。
「ギルマス、この門勝手に使って大丈夫なのか?」
「緊急時の権限の一任と使用許可は持っている。領主もこの事態なら分かってくれるだろう」
マクシミリアンさんの問いにギルドマスターが答えている。
この門は所謂お貴族様達専用の門らしく普段は開くことはなく厳重に警備されている。
私達が向こうに並んだらパニックになるので、この門を使うこととなった。
身分証明が無いので、一人銀貨五枚を払う。
今まで騎獣クラスの従魔の通行が無く規定も無かったので、クリス達を一纏めで馬車の大銀貨一枚にしてもらった。
一番小さな馬車の値段にギルドマスターがしてくれたので感謝。
門をくぐり抜け町に入る。
ギルドマスターを先頭にマクシミリアンさん達に囲まれ、その外側を兵士さんに囲まれる。
なんだろう、守られるというより犯罪者の気分になってしまう。
あちこちから町の人達のざわめき、ひそひそ声やらが聞こえる。
剛兄さんと蒼兄さんはフードを脱いでいるので兄達の黒髪に驚いている人、クリス達を怖がる人、目がキラキラしてる人…これはかなりの猫好きと見た!
この可愛さに大きさなんて関係ないよね。
冒険者ギルドは本当に近くにあり、私はギルドの中に入るためクリスから降りようとしていると、ギルドマスターが手を差し伸べてきた。
私は一瞬固まる。
でもこういうのって断ると失礼だよね、私はギルドマスターの手を取りクリスから降りた。
ただそれだけなのにかなり恥ずかしい。
これは日本人にはキツい。
なにかのゲージがゴリゴリ削られ半分以下なった。
ギルドマスターの後に続きギルドの中に入る。
兵士さん達とはここでお別れらしくギルドの中まで入って来なかった。
ギルドの中に入ると正面奥にカウンター、すぐ左手側の壁に依頼書が貼り出されている。
依頼書壁の裏は酒場兼食堂になっていた。
右手側は壁だが、造りからして向こうは部屋だろう。
カウンターに行く半分程で依頼書壁が終わり酒場見えてくる。
そのとたん、酒場からの喧騒が鎮まり、物凄い視線に晒され足が震え立ち止まってしまった。
それに気づいた蒼兄さんが私と酒場の間に入り盾となってくれた。
お陰で、何とか歩き出せた私の歩幅に合わせて蒼兄さんが隣で歩いてくれる。
そのままカウンターの奥の階段に案内され私達とクリス達は二階に、そしてここでマクシミリアンさん達とは一旦別れ、「またね」と言われ皆から手を振られ、私も振り返す。
少ししか一緒にいなかったし喋らなかったけど、なんか寂しい。
二階に上がり切ったところで私はまた立ち止まり、バクバクとうるさい胸に手を置きため息を漏らしてしまう。
「…大丈夫か?…」
「んっ…大丈夫、ちょっとビックリしただけだから」
剛兄さんの声を聞き、だいぶ
落ち着く。
「冒険者達が悪いことをしたな。すまなかった」
ギルドマスターが頭を下げてしまった。
「!? いえっ頭を上げてください! 私はもう大丈夫ですからっ」
もう一度「すまなかった」と言われ、二階の一番奥にあるギルドマスターの部屋に通された。
ギルドマスターの部屋は奥に机と椅子、本棚と右側に隣部屋に続く扉、そして真ん中にテーブルとそれを挟むように置かれたソファーがあり、私達はソファーに座るよう促された。
クリス達は私達の後ろでお座りしたり横になってたり自由にしている。
「この部屋が広くて良かったと思える日が来るとはね」
「なんか、すみません、大きくて…」
私は入って右側のソファーに兄達に挟まれ座っている。
三人座っても余裕なふかふかソファーだ。
ギルドマスターはテーブルを挟んだ向こうのソファーの私の前に腰かける。
目の前に座るマティアスというギルドマスターの男は、2mを超える身長でありながら均整の取れた肉体と美しく整った顔立ち、藍色の髪に艶やかで濃いエメラルドグリーンの瞳の鋭さは獰猛な獣を思わせる。
私のギルドマスターのイメージは冒険者を引退した厳ついおじさまだったんだけど、マティアスさんはどう見ても二十代後半から三十代前半なんだよね。
冒険者の引退って意外と早いのかな?
そこへいきなりの扉をノックする音でビクッと飛び上がってしまった。
ギルドマスターの「入れ」で来たのは綺麗なお姉さんでクリス達に一瞬たじろぐも直ぐに皆にお茶を出すと一礼し退室していった。
「先ずはあなた方の名を伺ってもいいか?」
「…ゴウ」
「俺は、ソウ」
「私は…」
そこまで言いかけ自分がまだフードを被っていることに気がつき、慌てて脱ぎ自己紹介をし直す。
「わたっ…私はレイです」
「ふっ」
「ちょっと蒼兄さんっ」
壮大に噛んだ私を蒼兄さんが笑うので文句言う。
「仲がいいな」
ギルドマスターの声に姿勢正しながらも噛んだことが恥ずかしく下を向いてしまう。
「ではレイ、君に質問をさせてもらう」
「っはい」
「君の従魔ついて我々や上級冒険者内でもアビスマーダーキャットと結論が出たんだが……」
「はい、この子達はアビスマーダーキャットで…「本当は」
「違うんじゃないのか?」
銅貨=十円
銀貨=百円
大銀貨=千円
金貨=一万円
大金貨=十万円
白金貨=百万円
この世界の通貨は大体こんな感じです。