孤児院でお料理
市場を離れ孤児院についた私達は、まず神父様に事情を話し料理を作らせてもらう許しを得た。
神父様に調理場に案内されて、神父様は中の説明をして子供達のところへ戻っていった。
さて、それではお料理を―――とはならなかった。
肩を落としながら孤児院の廊下を歩く。
あれから調理場で何があったかというと……。
◆◆◆
私がやる気満々で腕捲りをしていると、後ろから呆れ気味の兄達に止められる。
「…麗は子供達の相手を…」
「えっなんで?!」
「俺達で料理した方が早い」
じゃあ、せめて野菜の皮むきをしたいと蒼兄さんに訴えてるその横でシオン、アジサイ、カスミがじゃがいもや人参、玉ねぎを身体に取り込んだかと思うと、次には皮の無い野菜達が山のように積み上がっていて、それならば野菜を切るだけでもと追い縋っていると、急に蒼兄さんが皮を剥いたじゃがいもを切ってシオン達に見せ始めた。
すると皮を剥いたじゃがいもを、またも取り込むと切り方や大きさも寸分の狂いもなく同じに切ったものを、呆然とする私の目の前で次々に大量生産していくシオン達。
そこへ何故かドヤ顔の蒼兄さんに「子供達を頼む」と調理場から追い出され、今に至る。
◆◆◆
「あーあ。…シチュー作りたかったな…」
私の独り言が静かな廊下に響き、目の前のチャッチャとチッチャが私に憐れみの目を向けてくる。
既にクリスとジルは子供達の相手をしている。
『あーでも、あれだな。麗ねぇちゃが作ったのは…ちょっとな』
『だにゃ』
「ひどい! シチューぐらい作れるもん!!」
『昔作ったっていうシチューはかなりヤバかったって話だし』
「うっ……って、私が中学生になったばかりの時の話を、どうしてチャッチャ達が知ってるの?」
『おたま婆ちゃから聞いたにゃ』
それは、私がまだ中学生の頃、お父さんの誕生日に作ったシチューの話だ。
兄達が止める中、一人で作ると頑として譲らず作ったシチュー。
頑張って出来たそれは、とても残念なモノだった…。
蒼兄さんからは「一から作る訳でもなく、市販のルーを使うのになんで失敗するんだよ」と呆れていた。
失敗に落ち込む私に、初めて一人で作ったんだからとお母さんには励まされた。
勿論、お父さんは自分の為にと私が作った微妙なシチューを、涙を流しながら大喜びで食べてくれた。
どっちの涙なんだろうか?
まぁ、その後は呆れていた蒼兄さんも黙って見ていた剛兄さんも、シチューを数回おかわりしていたんだけど。
そんな事を思い出して歩いていたが、やはり子供達への料理は心残りで。
それに子供達だけじゃなく、実はシスターには卵粥を作ることになっている。
お米と卵も先程市場で手に入れた物だけど、この世界に炊飯器はないので剛兄さんが普通の鍋でお米を炊き、卵粥を作ることになっていて、私も炊飯器でならお米を炊けるけど、それ以外だと流石に無理なので、ここは大人しく言うことを聞いた。
なので、せめてシチューは作りたかったなと思い、歩いていたら子供達のいる部屋へと着いてしまったのだった。
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