ギルドマスターの傷
洞窟を出てから少しの休憩を挟んで、我々一同は町へと急いだ。
もうそろそろ日が傾き暗くなってくる。
今はクリス達がいるおかげで魔物は出て来てはいないが、日が落ちればそうもいかないだろう。
そして急いだ甲斐もあり道中での目立った魔物との遭遇もなく、無事に町へと着くことが出来た。
目立った魔物の遭遇がなかったのは、ジルと剛兄さんの乗るチッチャがちょくちょく私達から離れていたからだ。
それでも、いくら急いだとはいえ町に着いた頃には、あと少しで日が沈むところだった。
マクシミリアンさん達【深紅の薔薇】はルーク君達を孤児院まで送り、私達とギルドマスターとグレンさんは冒険者ギルドへと戻った。
「本当ならルーク達から色々と聞き出さなくてはいけませんが、今日はもう遅いので後日ということになりました」
「我々はこれから先程の通路に関して話し合いがあるが、君達も色々あって疲れただろう。特にレイはもう休むといい」
それから、話し合いの為に蒼兄さんが残り、剛兄さんと私やクリス達はテントで先に休ませてもらうことになった。
テントへ戻ると私はお風呂へと直行する。
洞窟で目が覚めた時点で服も髪も殆ど乾いてはいて濡れてはおらず、スキル【戦乙女の加護】のお陰で風邪も引かないけれど、今はお風呂にゆっくり浸かって温まりたい気分だった。
シオン達と一時間半ほど長湯をして、お風呂から出て暫くしてから蒼兄さんが帰って来た。
あの後、私達がテントに戻り程なくしてマクシミリアンさん達がギルドに着き、直ぐに隠し通路とオーク討伐の話し合いが始まったらしい。
話し合いの結果、オーク討伐は四日後に、その間に偵察隊が徹底的に情報を集めてオーク討伐に備えることになるという。
マクシミリアンさん達と私達、そしてあと一組のパーティーが討伐となり、偵察隊は四人での構成で、詳しいことは明日ギルドマスターが説明してくれるということだった。
「麗、今日は早く寝た方がいい。明日も色々と忙がしくなるからな」
「うぅ~…分かった」
蒼兄さんの言う色々とは確実にお説教のことも含まれているよね…。
(あ~やだなぁ…)
明日のお説教を思うと鬱々とするが、気を取り直して先ずは晩ご飯を食べようとするが、あまり食欲がないのに気づいたので、母のおにぎりを選ぶ。
クリス達もシオン達もおにぎりがいいというので一緒におにぎりを食べた。
因みにカスミはお味噌汁付き。
その後は休む為にクリスとジルがいるベッドに倒れ込むが、自分でも意外と気づかなかったけど結構疲れていたのか、直ぐに瞼が重くなる。
クリスとジルのもふもふに今日はチャッチャとチッチャも猫サイズになり、私のベッドへ上がってきた。
その上、アジサイとカスミまで一緒に寝たいようで、シオンと何処に寝るか三匹で場所取りに一生懸命だ。
クリスとジルに挟まれ、両脇にはチャッチャとチッチャが、シオン達はまだ場所が決まらずぷにぷにと動き回るが、それを心地好く感じながら、今日の出来事を思い返す。
(本当に今日は色々と目まぐるしい一日だった)
だけど…。
眠気で朦朧する意識の中で思い浮かぶのは…。
(――ギルドマスターの…あの胸の傷…)
私はあの時、ギルドマスターの胸の傷を見て、何かに突き動かされるように…。
思わず、鑑定を使ってしまったのだ。
…ギルドマスター…マティアスさんの…胸……その心臓には……。
――魔石が食い込み…その殆どが魔石に多い尽くされていた――。
【呪詛】……だった。
(私の鑑定ではそこまでしか見えなかった…まるで巨大な力に阻まれているかのようで……)
あの彼の〝魔獣の瞳〟を思いながら、私の意識は底深く沈んでいった。
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