ルナティオースの町
よろしくお願いいたします。
新たな家族ファミリアスライムのシオン達も連れ町に急ぐ。
草原から一時間かからずに森を抜けられ、今は街道から離れた平野を走っている。
平野にも魔物がいるが相変わらず遭遇しない。
さっきは逃げ遅れた角ウサギをチッチャがネコパンチで倒してジルが回収をする。
これを走りながらするから凄い。
森から町まで人の足で五時間弱、私達なら二時間半で行けそうだ。
町まで行くにあたり色々と家族会議を開き話し合ったんだけど、今向かっているルナティオースの町はこの国で三番目に大きな町で、町の周りは高い壁で囲まれているそうな。
難関は多々あれど一番はお金の問題、この世界のお金は持っていなかったんだけど…父の万物創造スキルがね……。
これは余りにもという事で封印し無かった事になりました。
町に入るのに必要なお金はエクレアが出してくれることになり一件落着。
何でエクレアがお金を持っているのか聞いたら、ダンジョンの宝箱から手に入れたりしたらしい。
無限大じゃないけどアイテムボックス持ちだったので、そこからお金を貸してくれた。
返さなくでも良いと言っていたけど、そうはいかないのでアイテムボックスを私達と同じ無限大、時間停止を提供した。
ダンジョン行ってみたいなぁと、ぼけーとしてたら、遠くに高い壁が見えてきた。
『そろそろルナティオースの町なのです。この辺りは冒険者達が多くいるので気をつけてください。誰かに何か聞かれたら私が教えた通りに答えれば大丈夫なはずなのです。私は予定通り鞄の中に隠れるので、後はよろしくなのです』
エクレアはそう言うと蒼兄さんの鞄に潜り込んでいった。
一応気配感知で冒険者を避けてはいるのだけど、遠目から見られた感覚が何度かあり、もしかしたら町に連絡がいっているかもしれない。
町に近付きクリス達にはスピードを落として歩いてもらう。
「四人こちらに近づいてくるな」
「兵士ではなさそうだけど…冒険者かな?」
明らかに警戒しながら近づいてくるが表情からは何も窺い知ることができない。
雰囲気からして手練れの冒険者かな。
私達はクリス達から降り彼らが近づくのを待つ。
うわー四人ともめちゃくちゃ美形だよ! 背が大きいし! 外国の俳優より美形かもしれない。
遠くからでもイケメンなのは分かったけど近くだと破壊力が凄い。
彼らは一定の距離を保ち立ち止まる。
これ以上怪しまれないように兄達はマントのフードを脱ぎ対応する。
彼は明らかに驚きの表情を見せるが次には落ち着きを取り戻し、先頭の男性が話しかけてきた。
「やぁ、俺達はそこの町を拠点にしている冒険者でね。ちょっと聞いても良いかな…君達ここら辺じゃ見かけないけど…旅人かい?」
「ああ、田舎から出てきたばかりでね。兄妹で旅している」
「見た感じこの国出身じゃないよね?」
きた! 難関その一、〝私達の出身問題〟この世界では黒髪黒目の人は珍しいどころか、今は存在しない。
大昔、極東の島国に黒髪黒目の一族がいたらしいけど絶滅し、今は東の山脈の奥深くに生き残りがいるとか、いないとかいう伝説。
「田舎は東の方でね」
「…そうか…東か……それともう一つ聞きたいんだが…」
彼らの視線がクリス達の方に向く。
難関その二〝ケットシー問題〟この世界でケットシーは存在しているけど姿は現さない。
たまに子供や老人の前にチラリと現れ、いる事はいるよと主張はしてるらしい。
だからクリス達は深淵の森深部にいて姿が似ている[アビスマーダーキャット]なる物騒な魔物だと言い張ることになった。
みんなごめんね。
それを従魔にした私が一番物騒なことは横に置いておく。
「…あー、その魔物なんだが…」
私はというと兄達の合図があるまでフードは脱ぐなと言われていた。
兄達が私に合図をおくる。
緊張するけど、頑張れ私!
私は平然を装いながらフードを脱ぎながら話し出す。
「この子達は私の従魔で、決して人に危害を加えないので大丈夫です」
よしっ 上手く言えた!
と思ったのもつかの間、彼らの息を呑む音、そして沈黙と共に、刺さるような視線が私に浴びせられる。
私は思わず隣にいた剛兄さんの後ろに隠れてしまった。
すかさず蒼兄さんも私の壁になってくれた。
剛兄さん193cm。
蒼兄さん181cm。
私163cm。
クリス達も横と後ろに来てくれた。
これなら私は彼らからは見えないはず。
怖かったぁ、私ちょっと涙目。
「あ…あぁ、すまなかった。驚かせたね、兄弟と言っていたからてっきり男の子だとばかり…まさか少女だったとは…」
少女?! 私が? 少女って10歳位まででしょ? 私が少女でいいの?…いや、大きさ…身長なのかな…
そりゃあ、みんなより小さいけど…
「…麗…フードを被れ…」
今まで黙っていた剛兄さんが彼らに聞こえないように私に話しかけ、私は急いでフードを被り直した。
「さっき従魔って言ったよね…君は魔物使いなのかな?」
「っ………」
とっさの事と先程の事で私は言葉に詰まってしまった。
「…ああ、そうだ」
蒼兄さんが代わりに答えてくれた。
でも、なんかイラついてる?
ダメだ、これだと相手にも伝わっちゃう。
私は蒼兄さんの服の袖をちょいちょいと引っ張る。
蒼兄さんはチラリとこちらを見るが無視された。
「先程はホントに悪かったよ。
…それでお詫びといっては何だが、町まで案内しよう。」
蒼兄さんは黙ったままだ。
「いやなに、他意は無いよ。それにその方が君達も楽に町に行ける。こう見えて俺達A級パーティーでね、俺達がいれば他の人もそんなに騒がない筈だ」
蒼兄さんが剛兄さんを見やり剛兄さんが頷く。
彼らの提案を了承し、共に町に向かうこととなった。
私達が街道沿いに出ると悲鳴をあげ逃げる人、泣き出す子供、武器を構える冒険者、でも冒険者達はA級パーティーの彼らを見つけると武器を収めている。
今は、話しかけてきたリーダーっぽい人を先頭に、後ろに剛兄さん、その後にクリスに乗る私、横にジル。
後ろにチャッチャ、チッチャ、蒼兄さん、両側を槍の人と魔法使いっぽい人、最後尾に斥候っぽい人で進んでいる。
私も歩くと言ったけど、蒼兄さんに有無を言わさずクリスに乗せられ、今に至る。
物凄く目立ってしょうがない。
街道の道から少し離れて町に進んでいると、町の門に並ぶ人の列とは別の人達が見えてきた。
遠目で見ても一番手前の人が大きいのがわかる。
進むにつれ、はっきり見えてきたけど大きい人の後ろの人達は兵士だろうか、結構な人数がいる。
兵士がいるからか、捕まってしまうかもと少しドキドキする。
町の門の前に行き着くと二十人ほどの兵士と腕組みをした大きな男性が待ち構えていた。
パーティーのリーダーっぽい人が大きな男性に向かって話しかける。
「まさか、ギルドマスター直々にお出迎えとはね」