黒パンのサンドイッチ
私達が選んだのは〝サンドイッチ〟だ。
この世界で一般的なパンは大体が丸型の〝黒パン〟と呼ばれるもので元の世界と同じライ麦で作られいる。
白いパンや食パンもあるのだけど、それは王公貴族や豪商、ほんの一握りしか居ない高所得の平民しか手にできないと言うことだ。
なのでマシュー君達に渡したサンドイッチは、黒パンのサンドイッチで中身はこちらの世界にもあるハムとレタスとトマトで、元の世界のサンドイッチでも問題はない筈だ。
若干、こちらの世界の黒パンより柔らかいが、出来立ての黒パンは少しは柔らかいということで大丈夫だろう。
きっと驚いているのは固い黒パンだと思ったら、サンドイッチが出てきたからだよね。
◆◆◆
――時間は少し遡り…。
ギルドマスターからの許可を得て、今は兄達と密談中。
だけど時間は30分と短めなので、すでに考えていたことを兄達に伝える。
少年達に出す食べ物は町で購入した肉の串焼きにしようと思ったが、寝起きのマシュー君には少し辛いかと思い直し黒パンのサンドイッチを兄達に提案。
最初は蒼兄さんもサンドイッチに難色を示していたけど、黒パンということと中身の具材も比較的安価で誰でも手にできる物なので、なんとか拝み倒し兄達の許可も取った。
ここまでで7分が経ち後、23分しかない。
そこで私は急いで黒パンサンドイッチを用意するも、ある難題に突き当たる。
サンドイッチを包む外装フィルムである。
簡易テーブルの上に一つサンドイッチを出すも、触るとガサッと異世界には無いあの音が響く。
私の周りにはクリス達が壁になるように隠してくれてはいるが、余計に音が気になってしまう。
そんな戸惑う私を救ったのは意外にもシオンだった。
シオンはサンドイッチの前まで来ると、大きな口を開けパクリと食べてしまった。
あまりの出来事に焦っている間にシオンがモゾモゾしだしたと思うと、ペッとサンドイッチが現れた。
外装フィルムなしで、それも木のお皿に乗って…。
それからは、あっという間に事が進んだ。
シオンに大量のサンドイッチを渡すとフィルムが全て外されお皿の上に綺麗に並べて出してくれる。
ここまで4分も掛からず、大きな木皿二つが出来上がったので一つはマシュー君達に、そしてもう一つはギルドマスター達に出したのだった。
◆◆◆
少年達には敷物を敷き、そこに座ってもらい、ギルドマスター達には簡易テーブルを用意している。
彼らは目の前のサンドイッチに躊躇しているので皆に声をかけた。
「大した物でもないので、遠慮なく召し上がってください。マシュー君も大丈夫だからいっぱい食べてね」
すると、やはり一番最初にサンドイッチに手を伸ばしたのはマシュー君だった。
マシュー君はパクッと一口サンドイッチを口にした途端、「おいしいっ!!」大きな瞳を輝かせ、更にサンドイッチを口に頬張る。
そして、次に続いたのがルーク君にミゲル君で二人は「う、うまいっ」「すごく美味しいっ」と物凄い勢いで食べ進めるが、何故かロイ君だけがルーク君達の言葉に反応するも泣きそうな顔で手を出そうとしない。
(ははーん、あれは苦手な物でもあるのかな。ハムは好きそうだからレタスかトマトと見た)
「ロイ君、何か苦手な物でもあった?」
「えっ…えっと、その…」
「こいつ、トマトが苦手なんだ。こんなうまいのに勿体無い」
そう言うとルーク君は、本当に美味しそうにサンドイッチかぶり付く。
それを目の当たりにしてロイ君はゴクリと喉を鳴らし、意を決するようにサンドイッチを手に取るとかぶり付いた。
「――っ美味しい…」
その後、ロイ君は何も言うことはなく、瞬く間に一つ目を食べ終わると二個目に手を付けている。
少年達は皆、「うまいうまい」と奪い合うようにサンドイッチを取り合い、マシュー君なんて両手に持ちながら食べていた。
それとは反対に未だにサンドイッチに手を付けず観察する大人達の耳に、少年達の「この黄色味がかったトロッとしたソースなんだろう?」「見たことないけどうまいよなっ、トマトに合う!」「それにこの胡椒もピリッとしていいな」と感想が聞こえると彼らは顔を見合せサンドイッチを手に取った。
「なにこれ、うっま!」
「ああ。このソースは俺も食べたことがない」
「うわっ、マクシミリアンでも食べたことないって相当……ウォルターは?」
「…ない」
「このソースは確かに見たこともありませんが、こちらのこれは…」
「――これは…本物の胡椒だな」
ギルドマスター達の言葉に蒼兄さんは眉間に皺を寄せた。
お読み頂きありがとうございました。
ブクマ、評価、いいね、ありがとうございます!
とても励みになります!!
頑張ります!




