少年とお腹の音
私達は隠し通路の遺跡からグロウ君とルーク君達の所へと戻って来ていた。
戻って来るなり神妙な面持ちの私達の様子からグロウ君は何かを察したようで、マクシミリアンさんが事の経緯を説明している。
あの後、隠し通路の入口がどうなったかというと、凹んだ所をもう一度押したら凹みが戻り入口が閉じたのだ。
はい、また犯人は私です。
――蒼兄さんの視線が痛かった。
「…ううーん」
「やっと起きたな。マシュー、もう大丈夫か?」
「…うん…」
マクシミリアンさんの説明が丁度終わる頃、グロウ君は目を覚ましたマシュー君がちゃんと起きたか確認してそっと下ろすと、やっと解放されたとばかりに伸びをする。
「…――で、本当に見張りを置かなくても大丈夫なのか? そういうの僕の得意分野だけど…」
「皆、一旦引き上げだ。やはり何が起こるか分からないからな。その代わりに早急に調査及び討伐隊を編成する。…勿論、【深紅の薔薇】は強制だ」
「承知している」
「望むところだ」
「俺は調査の方で……はいはい、討伐ね。分かってるよ」
「…………」
「――君達は…」
ギルドマスターが言葉を切り私達に目を向けると、期待の眼差しの私と不機嫌な蒼兄さん、いつもと変わらない剛兄さんを見て苦笑する。
「この討伐は緊急依頼になる。よって君達も強制参加だ。……済まないな」
ギルドマスターが気を使ってくれていることに、こちらが申し訳ないんだけど私としては嬉しくて堪らないのだ。
だって、あの入口は私が見つけたんだし、最初に入る権利があるよね。
それに緊急依頼なら蒼兄さんだって文句は言えまいと、心の中でほくそ笑んでいたら蒼兄さんに睨まれ思わず姿勢を正したのだった。
◇◇◇◇◇◇
マシュー君も起きたので、直ぐにでもここを離れ町に戻るため準備を始めた時だった。
ぐぅぅー……
なんとも可愛らしい音に振り向くと、マシュー君が慌ててお腹を隠しているではないか。
「気づかなくてごめんね。マシュー君、お腹空いたよね」
マシュー君はお腹を両手で隠してしゃがみ込み、ぶんぶんと顔を横に振っている。
ふっとルーク君達の方を見ると無意識なのか三人とも同じタイミングでお腹に手を置いた。
その息ぴったりの行動につい微笑めば、三人とも顔を真っ赤にし下を向いてしまった。
私はそのままギルドマスターに向き直り、お願いしてみることにした。
「あの、ギルドマスター。早く町に戻らないといけないのは分かっているんですけど、少し時間を取らせてもらってもいいでしょうか?」
ギルドマスターは私が言いたいことが分かっているらしく頷いた。
「まぁ、30分程度なら構わんだろう」
「マティアス、ですが…」
『魔物の心配なら大丈夫だよ』
『私達がいれば、相当なアホじゃない限り寄って来ないわよ』
『退屈だから来てもいいんだけどな』
『にゃ。豚さんが来てもすぐやっつけるにゃ』
私の提案にクリス、ジル、チャッチャ、チッチャが応戦してくれたことで渋るグレンさんも納得してくれたようだ。
兄達にも半ばお願いのような相談をして、なんとかマシュー君達にも食べさせられる物を選ぶ。
「お待たせしました」
〝それ〟を出すと少年達もギルドマスター達もあからさまに固まるのだった。
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